事務職員能力認定試験 第11回解説(問41~44)
41
- 誤)相続放棄の管轄は,被相続人の最終住所地(家手201条1項,民883条)。
- 正)放棄できる期間が,相続があったことを知ってから原則3か月(熟慮期間,民915条)である点は正しい。ただ,相続財産の調査が困難で,相続財産が全くないと信じていた場合などの特別事情がある場合は,期間経過後も放棄が認められる(昭和59年4月27日最高裁判決)。実務上は,債務の存在を知り得なかった場合なども受理してもらえる。
- 正)代襲相続するのは,相続人が,①相続開始前に死亡したとき,②欠格・廃除で相続権を失ったときのみ(民887条2項)。相続放棄は含まれない。
- 正)法定単純承認(民921条)。相続財産の処分・隠匿,熟慮期間の経過により単純承認したとみなされる。
42
43
事務職員能力認定試験 第11回解説(問37~40)
37
- 誤)人事訴訟も原則は公開。尋問に限り,裁判所は非公開とする決定ができる(人訴22条1項)。その場合は,あらかじめ当事者等の意見を聴かなければならない(同条2項)。
- 正)裁判所は,必要と認めるときは参与員や検察官を立ち会わせて意見を聴くことができる(人訴9条1項,23条1項)。
- 正)訴訟記録の事実調査部分について,未成年子の利益や私生活の平穏を害するなどの理由がある場合は,相当と認めるときに限り閲覧・謄写を許可する(人訴35条2項)。そのようなおそれがない場合は,当事者には原則許可。
- 正)職権探知主義(人訴20条)。ただし,「その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない」。
38
2 両親の協議により決められるなら調停等は不要。
1,3,4 いずれも設問のとおり。
39
相続人の優先順位は以下のとおり。妻は常に相続人になる(民890条)。
- 子(民887条1項)
- 一番近い直系尊属(民889条1項1号)
- 兄弟姉妹(民889条1項2号)
父の再婚相手Eは相続人にならないから,1,2は選択肢から消える。
養子縁組をすると,養親の血族との関係でも親族関係が生じる(727条)ので,Fも兄弟姉妹に当たる。
40
父母の一方のみが同じ(半血)兄弟姉妹は,父母の両方が同じ(全血)兄弟姉妹の2分の1の相続分になる(民900条4号)。半血同士,全血同士は等分。
G,Hは父親のみ同じ。FもAとしか養子縁組していないので,父親のみ同じ。
F,G,HはそれぞれDの2分の1なので,D:F:G:H=2/5:1/5:1/5:1/5となる。
事務職員能力認定試験 第11回解説(問33~36)
33
手続代理人の基本権限は以下のとおり(家手24条1項)。
以下の事項は,特別の委任が必要(同条2項)。
- 申立て・取下げ
- 調停成立・合意に相当する審判の合意,調停条項案の書面による受諾,調停に代わる審判に服する旨の共同の申出
- 審判に対する即時抗告・特別抗告・許可抗告の申立て,合意に相当する審判・調停に代わる審判に対する異議申立て
- 抗告・異議の取下げ
- (復)代理人の選任
- 正)上記のとおり。
- 正)設問のとおり。特に法律の根拠はない。
- 誤)取下げは特別委任事項。
- 正)裁判所から呼び出しを受けた関係人は,やむを得ない場合を除いて本人の出頭が必要(家手258条1項,51条2項)。
34
記録の閲覧等(家手47条1項,家手254条1項)
許可基準
審判(家手47条)
- 当事者:原則許可(3項)→不許可なら即時抗告できる(8項)
- 利害関係者:相当と認めるときに許可(5項)
※当事者が正本等の交付を請求する場合は,許可不要(6項)
調停(家手254条)
- 当事者:相当と認めるときに許可(3項),ただし特殊調停事件は原則許可(6項)→不許可なら即時抗告できる
- 利害関係者:相当と認めるときに許可(3項)
※当事者が審判書・調停調書の正本等,証明書の交付を請求する場合は,許可不要(4項)
35
離婚訴訟の管轄は,「当事者」の普通裁判籍(人訴4条1項)=原告又は被告の住所地。※調停は相手方住所地のみなので注意(家手245条1項)。
合意管轄,応訴管轄は認められていない。
特に必要があると認めるときは,申立て又は職権で,調停裁判所が審理できる(人訴6条)。
したがって,1も微妙ではあるが,2が明確に不可。
36
- 正)強制執行できるのは,原則として期限到来後のみ(民執30条1項)。
- 正)婚費・養育費等の定期金債権については,将来分も差押えできる(民執151条の2第1項2,3号)
- 誤)給料を差し押さえる場合は,原則4分の1まで(民執152条1項2号)。婚費・養育費など扶養債権に類する債権の場合は2分の1まで可能(同条3項)だが,慰謝料はこれに含まれない。
- 正)慰謝料は4分の1まで。退職金や賞与も給与と同じに扱う(同条1項2号)。
事務職員能力認定試験 第11回解説(問29~32)
29
30
- 供託時の必要書類(供規14条)
- ①供託用紙
- ②資格証明書(原則提示,未登記法人,非法人は添付)
- ③代理権限証書(提示)
- ④封筒・切手
- ⑤供託物
- 払渡請求時の必要書類
- ①払渡請求書
- ②印鑑証明書(添付,供規26条1項)
- ③資格証明書(原則提示)
- ④代理権限証書(添付,実印)
- ⑤払渡しを受ける権利の証書(添付,供規24条1項1号,25条1項)
- ⑥供託書正本/供託通知書(原則添付,供規24条1項,25条1項)
登記で確認できない法人・団体等は「添付」になる。
委任状で扱いが違うのは,払渡しとなると厳格さが求められるから。預かるだけなら,最悪間違いがあっても返せばいいが,間違いで払い渡したら取り返しがつかない。
31
- 正)家手256条1項。「手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるとき」は例外的に通知のみ行う。
- 誤)家事審判に対する不服申立ては,即時抗告による(家手85条1項,2週間以内)。控訴は一審判決に対する不服申立て。決定・命令・家事審判に対しては抗告。高裁に移る点は正しい。
- 正)家事審判事件には別表第1と別表第2がある(家手39条)。別表第1は,紛争というより公益事項で裁判所の関与が不可欠な事件。別表第2は紛争性が高く,当事者同士の話し合いが可能な事件。別表第1事件に調停はない(話し合いの余地がないから)。
- 正)
家事調停の種類
①別表2調停
別表第2事件。話し合いによる解決が望ましいが,未解決放置は望ましくない事件。そのため,調停不成立により審判に自動移行する(家手272条4項)。
具体的には,後見関係や財産管理,親権停止等。
②特殊調停
本来人事訴訟で解決すべき事件のうち,離婚・離縁を除いた事件。話し合いによる解決が望ましいため,調停前置主義がとられる(家手257条1項,244条)。調停不成立の場合は訴訟提起をする必要があり,合意成立時は合意に相当する審判がなされる(家手277条1項)。
具体的には,嫡出否認,認知,親子関係不存在等(人訴2条)。
③一般調停
上記以外の事件。基本的には訴訟事項だが,単なる感情的な話し合いも可。
具体的には,離婚,夫婦関係の円満調整等。
32
- 別表第1事件の審判:800円(民訴費用3条1項,別表第1の15号)
- 別表第2事件の審判・調停全般:1200円(同項,別表第1の15号の2)
- 審判に移行した場合:調停申立時の納付額分を収めたものとみなす(同法5条1項)
離婚調停の場合,親権,面会交流,養育費,財産分与,慰謝料,年金分割の6項目は付随申立となり,手数料不要。
事務職員能力認定試験 第11回解説(問25~28)
25
- 正)戸籍は夫婦+子の2代まで。娘とその子の戸籍は別に作る必要がある。なお,旧戸籍は戸主+親族で何世代も含まれていた。
- 正)戸籍法の改正等で戸籍の形式が変更になる場合,それまでの戸籍を新しい形式に移し,古いものは閉鎖する。この古い形式の戸籍を改製原戸籍という。主に,旧戸籍法から現戸籍法に改正された時と,コンピュータ化された時の2つがある。なお,原戸籍は「げんこせき」だが,現戸籍と間違わないよう,「はらこせき」と読む。
- 正)夫婦の氏は,婚姻の際に「夫又は妻の氏を称する」(民750条)のでどちらでも良いが,戸籍は「筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する」(同法9条)。
- 誤)婚姻の際に他方の戸籍に入った側が,元の戸籍に戻るか新たな戸籍を作る(民767条1項)。
26
- 正)単位はどれも㎡だが,宅地・鉱泉地・10㎡以下の土地は小数点2位まで,それ以外は小数点以下切捨て(不登34条,不登規100条)。
- 誤)建物の場合は区別がない。
- 誤)表題部は,一番上の大枠。所有者の記載がある。実物を見ておくと良い。
- 誤)建物の番地は,土地の地番に合わせて付けられるが,建築後に敷地が分筆・合筆されて地番が変更されると,建物の番地とずれることがある。
27
- 正)「何人も」交付を請求できる(不登119条1項)。権利関係を公示して取引の安全・円滑を図る制度だから。
- 正)地図等以外は「利害関係を有する部分」のみ閲覧可(不登121条2項)。
- 正)「何人も」交付を請求できる(不登120条1項)。
- 誤)コンピュータ化による閉鎖登記簿は,言わなくても分かっているので閉鎖年月日不要。合筆・滅失による場合は,こちらで特定しないと分からないので必要。【根拠確認未了】
28
- 正)同一所在地・同一商号は不可(商登27条)。会社法改正で本店所在地以外なら同一商号の登記可になった。
- 正)「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の施行日から当然に株式会社(特例有限会社)となる(整備法2条1項)。商号は定款変更&登記しない限り「有限会社」を用いなければならず,通常の「株式会社」などは使用できない(同条2項)。
- 正)会社は,設立登記によって成立する(会社法49条)。よって,登記日=設立日。
- 誤)履歴事項証明書は,請求日の3年前の1月1日までしか遡らない(商登規30条1項2号)。それより前の事項は閉鎖登記に移され(商登規44条1項),閉鎖事項証明書を取得しないといけない。
- 登記事項証明書の種類(商登規30条1項各号)
- ①現在事項証明書
- ②履歴事項証明書
- ③閉鎖事項証明書
- ④代表者事項証明書
事務職員能力認定試験 第11回解説(問21~24)
21
- 配当を受ける債権者
- ①差押債権者(民執89条1項1号)
- ②配当要求・交付要求をした債権者(同項2号)
- ③差押えの登記前に登記をした仮差押債権者(同項3号)
- ④差押えの登記前に登記をした担保権者(同項4号)
- 配当要求できる債権者(上記②)
- ア)執行力のある債務名義の正本を有する債権者
- イ)差押えの登記後に登記をした仮差押債権者
- ウ)一般の先取特権を有することを証明した債権者
- 正)②ウ
- 正)②ア
- 誤)③→差押えの登記前なら自動的に配当対象。
- 正)【根拠確認未了】
22
- 誤)原則1か月の引渡期間を定めて明渡しの催告をするまでは正しい(民執168条の2第1項,2項)。債務者不在でも,玄関などに催告書を貼られて催告が実行される。留守にしてれば回避できるなら強制執行の意味がない。
- 誤)現金も,標準世帯の2か月分の生活費(現在66万円)は差押禁止財産(民執131条3号)。
- 正)「債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り」執行できる(民執168条3項)。明渡しの執行は,債権者に占有を取得させる手続きであるため。
- 誤)土地と建物は別個の不動産であるため,土地の明渡しと建物の収去両方(建物収去土地明渡)の債務名義が必要。執行方法も,代替執行による。具体的には,裁判所の授権決定を得て,債権者が自分で建物を収去する。
23
- 創設的届出
- 届出をして初めて身分関係が形成される
- 報告的届出
- 法的な身分関係は形成されており,戸籍の反映などのためにする
どこで効力が発生しているかの問題
- 婚姻は届出により効力を生じる(民739条1項)。
- 協議離婚は,婚姻の規定を準用(民764条,民739条1項)。
- 認知は届出により効力を生じる(民781条1項)。
- 裁判上の離婚は,判決の確定により離婚が成立する。なお,調停離婚は調停成立時。
24
職務上請求は,職務遂行に必要な場合にのみすることができ,次の事項を記載する(戸籍法10条の2第3項)。
- ①自己(依頼者)の権利行使・義務履行に必要な場合
→権利義務の発生原因・内容・戸籍を確認する必要性(同条1項1号) - ②国・地方公共団体への提出に必要な場合
→提出先・提出の必要性(同条1項2号) - ③その他戸籍を利用する正当な理由がある場合
→戸籍利用の目的・方法・必要性(同条1項3号)
- 〇)①の場合。法定代理人である親権者探知のためには戸籍が必要。
- ×)戸籍を調べること自体が目的となる場合は使えない。利用の方法も不当。
- 〇)②の場合。判決文の記載と氏名が違うので,執行文の付与のための証拠資料として裁判所に提出する。
- 〇)③の場合。適切な相続処理を行うため,戸籍から相続人の範囲を確認することが必要。
事務職員能力認定試験 第11回解説(問17~20)
17
1は図の「非金銭執行>意思表示の擬制」に該当する。
18
- 執行文の種類(便宜上の分け方)
- ①単純執行文:単純な給付を求める内容で,証明が必要な条件・期限がない場合
- ②条件成就執行文:一定の条件・期限の到来が必要な場合
- ③承継執行文:債務名義(判決等)に記載のない相手に執行する場合
- ④意思表示擬制のための執行文:登記請求で,例外的に債務者の意思表示を必要とする場合
- ①の一種。設問のような条項(過怠約款)は,遅滞を停止条件として期限の利益を喪失させる(遅滞がない間は待ってやる)ものであり,債務者側に義務履行の立証責任がある。よって債権者は証明不要。
- 甲の死亡を条件とした②の一種。甲の死亡を証明する書類が必要。
- 原告の支払を条件とした②の一種。支払完了を証明する書類が必要。
- 相続人は債務名義の対象ではない。③の一種。被告の死亡と相続人との親子関係を証明する書類が必要。
19
- 正)金銭執行の場合,確定金額又は金額を確定できる計算式を特定しなければならない。債権執行の場合,具体的な執行完了がいつになるか分からないので,遅延損害金も申立日までで確定しなければならない。
- 正)議論のあるところだが,実務上は取扱支店を特定するのが通常。
- 正)民執155条1項
- 誤)転付命令は金銭債権に対してしかできず,差し押さえれば何でもできるわけではない。なお転付命令とは,債権そのものの帰属を移転すること。転付債権の券面額の範囲で弁済されたことになる(民執160条)。
20
- 誤)複数債権者から差押えを受けた場合,第三債務者は一人に弁済することはできず,供託をしなければ債務を免れることができない(義務供託,民執156条2項)。
- 正)供託した場合は,「その事情を執行裁判所に届け出なければならない」(同条3項)。
- 誤)支払義務はあるので,支払わないと債務不履行となる。
- 誤)支払っても債務を免れない。