日々起案

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事務職員能力認定試験 第12回解説(問39~45)

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相続人の順序は、①子、②直系尊属、③兄弟姉妹であり、配偶者はこれらと並んで常に相続人となる(民法887条1項、889条1項)。本問では、配偶者と①がなく、唯一の②が相続放棄したため、③の範囲に含まれる者が法定相続人となる。

Dは単純な兄弟姉妹であるから当然に含まれる。

Eは異母妹であり、いわゆる半血兄弟姉妹であるが、兄弟姉妹であることに変わりはない。

Fの父親CはAの兄弟姉妹として相続人となるが、Cが既に死亡しているため、Fが代襲相続人となる(民法889条2項、887条2項)。

GはAの両親の養子である。Aとは血縁関係はないが、養子は養親の嫡出子となる(民法809条)から、法律上はAと兄弟姉妹となる。

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「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」(民法900条4号但書)。前者を半血兄弟姉妹、後者を全血兄弟姉妹という。

Dはもちろん、夫婦ともに養子縁組しているGも法律上は全血兄弟姉妹である。Cの代襲相続人であるFも、CがAの全血兄弟姉妹であることから、法定相続分はCと同様となる。

すなわち、DEFGのなかでEのみが半血兄弟姉妹として、相続分が半分になる。

したがって、D:E:F:G=1:0.5:1:1=2:1:2:2という関係になるので、Dの法定相続分は7分の2である。

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  1. 誤)特別養子縁組が成立すると、「養子と実方の父母及びその血族との親族関係は…終了する」(民法817条の9)。したがって、Xは法律上実親の子ではなく、相続人にもならない。
  2. 正)現行民法法律婚主義を採用しているため、内縁の妻は「配偶者」に当たらず、相続人にならない。
  3. 正)民法886条1項、2項。
  4. 正)子の代襲相続は、代襲者が既に死亡している場合等にも準用されるので、無限に直系卑属を辿っていく(民法887条2項、3項)。なお、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹の場合は、民法887条2項しか準用されていないため、1回(甥姪まで)で止まる。

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特別受益(婚姻のためや生計の資本として受けた贈与等)は、その価額を一旦相続財産に戻して計算する。つまり、本問では丙の受けた特別受益800万円を現存する相続財産7200万円に加え、8000万円が相続財産であるとして計算することになる(民法903条1項)。

次に、遺留分(遺言等でも削れない取り分)は、子または配偶者がいる場合、2分の1×各法定相続分となる。したがって、丙と丁の遺留分は、8000万円×2分の1×4分の1=1000万円となる。

丁はこれがそのまま遺留分となるが、丙は既に特別受益800万円を受けているから、これを差し引き(民法1046条2項1号)、残額200万円が遺留分の額となる。

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2020年7月1日施行の現行法で、遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求に制度が改正された。特に経過措置はないので、同日付以降の相続は遺留分侵害額請求、それより前の相続は遺留分減殺請求をする。

基準となるのは相続の発生日(被相続人の死亡日)なので、遺言の時期は関係ない。

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  1. 正)法定相続情報制度について定める不動産登記規則(247条以下)には、交付の申出について手数料の定めはなく、費用はかからない。
  2. 誤)申出人の住所地を管轄する登記所でも可(不登規則247条1項)。
  3. 正)「相続人又は当該相続人の地位を相続により承継した者」なら誰でも良い(不登規則247条1項)。
  4. △)【法改正により正答が変わった設問】令和3年4月1日施行の改正により、押印は不要となっており、現在ならこれも誤りとなる。改正前不登規則247条3項では、「申出人又はその代理人が記名押印する」となっていた。

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  1. 正)民法15条2項。なお、後見や保佐は不要。
  2. 正)民法7条。ちなみに検察官も申し立てることができる。
  3. 誤)一旦申立てがなされれば、家庭裁判所が要否を判断する。後見等の申立ては、判断能力を欠く者を保護するための公益的制度であるから、申立人の自由な処分権に委ねるべきではないという趣旨である。
  4. 正)家事事件手続法117条1項。本人保護のための制度であるから、本人の住所地を基準とする。