日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

事務職員能力認定試験 第12回解説(問54~60)

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  1. 正)民事訴訟は「訴状を裁判所に提出してしなければならない」(民訴法133条1項)、刑事訴訟は「起訴状を提出してこれをしなければならない」(刑訴法256条1項)。
  2. 誤)民事訴訟でも、裁判所が不要と判断すれば証拠採用されない(民訴法181条1項)。刑事訴訟では、裁判所の許可というよりも、検察側又は弁護側の同意(刑訴法326条1項)や異議の有無が問題となる。
  3. 正)「訴訟代理人の権限は、書面で証明しなければならない」(民訴規則23条1項)ため、民事訴訟では委任状を提出する。刑事訴訟では、「弁護人の選任は、弁護人と連署した書面」=弁護人選任届を差し出さなければならない(刑訴規則17条、18条)。
  4. 正)民訴法54条、刑訴法30条等。正確には、刑事訴訟では「被告」ではなく「被告人」だが、単なる誤字脱字だろう。

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  1. 正)公判前には、起訴状以外の資料を裁判所に提出してはいけない(起訴状一本主義、刑訴法256条)。裁判所の予断を排除するためである。したがって、第1回公判前の記録は検察庁にある。検察官は、証拠等について閲覧する機会を与えなければならない(刑訴法299条1項)が、弁護側と異なり「提示」までする必要はないので(刑訴規則178条の6第1項1号)、検察庁に行って閲覧・謄写しなければならない。
  2. 正)公判で弁護人が同意した記録は、証拠として提出され裁判所にあるので、裁判所で閲覧・謄写できる(刑訴法40条1項)。
  3. 正)弁護人が同意しなかった場合は、伝聞例外(刑訴法321条以下)などで証拠採用されない限り、裁判所には提出されないから、検察庁にある。したがって、公判前と同様に検察庁で閲覧・謄写できる。
  4. 誤)判決確定後は、検察官が記録を保管し(刑事確定訴訟記録法2条1項)、検察官に対して閲覧の請求をする(同法4条1項)。

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  1. 正)設問のとおり。
  2. 正)設問のとおり。
  3. 誤)2018年(平成30年)の刑事訴訟法改正により、被疑者段階でも全件国選対象事件となった(刑訴法37条の2第1項)。
  4. 正)法テラスが候補者リストの管理と打診を担う制度になっており、法テラスと契約しなければ国選弁護人には指名・選任されない。

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  1. 正)「裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする」(裁判員法2条2項)。ただし、一定の簡易な事件では裁判官1名・裁判員4名の合議体を構成することもある(裁判員法3項、2項但書)ので、迷いやすい。
  2. 誤)「地方裁判所は」(裁判員法2条1項等)と限定しているので、簡易裁判所の事件にはならない。地方裁判所に限定されていることから、一審のみである点は正しい。
  3. 正)裁判員になれない者は、裁判員法15条1項各号に列挙されている。弁護士及び元弁護士は第6号に挙がっているが、事務職員は制限対象に挙がっていない。
  4. 正)裁判員法56条(証人)、58条(被害者)、59条(被告人)。

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  1. 正)刑事では、民事と異なり(民訴法252条)、判決の言渡しを判決書に基づいて行うべきとする規定がない。したがって、判決書がなくても言渡しができる。
  2. 正)刑事の判決書は、交付請求をしないと手に入らない。ちなみに、民事では自動的に送達される(民訴法255条1項)。
  3. 正)刑訴法373条。文言としては14日。
  4. 誤)申立書を第一審裁判所である簡易裁判所に提出する点は正しい(刑訴法374条)。しかし、刑事については、一審が簡易裁判所でも控訴審高等裁判所となる(裁判所法16条1号)。

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  1. 正)家庭裁判所の許可があれば、保護者も付添人になれる(少年法10条2項)。
  2. 正)「付添人を選任するには、付添人と連署した書面を差し出すものとする」(少年審判規則14条2項)とされ、捜査段階で弁護人選任届を提出している場合も特に例外とはなっていない。
  3. 誤)「少年及び保護者は…選任することができる」(少年法10条1項)とされ、少年自身も選任できる。
  4. 正)少年審判規則7条2項。ただし、閲覧のみであり、謄写は許可が必要。

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  1. 誤)受任中の事件の相手方からは、別件であっても受任できない(弁護士職務基本規程27条3号、弁護士法25条3号)が、既に終了した事件の相手方からであれば、禁止されていない。
  2. 正)誤解しやすい表現や、品位を損なう広告・宣伝は禁止される(弁護士職務基本規程9条1項、2項)。
  3. 正)「名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない」(弁護士職務基本規程49条1項)。
  4. 正)弁護士職務基本規程57条。「職務の公正を保ち得る事由があるとき」は例外となるが、一切情報交換されないことを物理的・客観的に担保された状態を確保しなければならず、実質的にはほぼあり得ない。