日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

事務職員能力認定試験 第12回解説(問46~53)

46

グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利を超え、旧出資法の上限金利を超えない範囲の金利のこと。旧貸金業法では、一定の要件を満たせばグレーゾーン金利の弁済も有効な弁済とされていたため、事実上利息制限法の上限を超える金利での貸付が横行していた。

2006年にグレーゾーン金利部分を無効とする最高裁判決が出たため、過払金バブルが到来し、法律上も上限金利を利息制限法に合わせる改正がなされた。

  1. 正)2010年までに法改正とその施行が完了し、グレーゾーン金利は撤廃された。
  2. 正)貸金業法12条の8第1項で利息制限法の上限金利を超える契約は禁止され、超えた部分は民事上無効であり、行政処分の対象となる。
  3. 正)出資法5条2項。
  4. 誤)いわゆる総量規制だが、年収の2分の1ではなく、3分の1(貸金業法13条の2第2項)。

47

  1. 正)破産法248条4項。
  2. 誤)申立ては「債権者又は債務者」がすることができる(破産法18条1項)。
  3. 誤)個人であれば債務者の住所地となることが多い(破産法5条1項、民訴法4条2項)が、営業者であれば主たる営業所(破産法5条1項)、営業所や住所がなければ居所となる。その他、法人や夫婦同時申立などについて特則がある(破産法5条2項以下)。
  4. 誤)申立て自体を制限されることはない。というか、申し立てないと免責不許可事由の有無も判断しようがない。更に、免責不許可事由があっても、裁判所が相当と認めれば免責される(裁量免責、破産法252条2項)。

48

  1. 居住地から離れるには裁判所の許可が必要(破産法37条1項)。
  2. 管財事件では、管財人が破産者宛ての郵便物を受領し(破産法81条1項)、中身を見ることができる(同82条1項)。
  3. 「自由財産」は、制限を受けずに自由に処分できる財産。具体的には、破産開始後に得た財産(新得財産、破産法34条1項)、差押禁止財産(同条2項2号)、99万円以下の現金(同条2項1号)などの本来的自由財産のほか、自由財産の拡張が認められた範囲(同条4項)など。
  4. 公正さが求められる一定の職業については、その職業に関する各法律で破産者の資格を制限している。個人で問題となりやすいのは、士業、警備員(警備業法14条1項)、生命保険の外交員(保険業法279条1項1号)など。

49

  1. 正)破産手続は、管財事件が原則であり、破産手続の費用すら支出できないことが明らかな場合に同時廃止(管財人を付けずに破産手続を終了する)となる。法人の場合は、個人よりも権利義務関係が複雑多様であり、利害関係人も多いため、原則として管財人の精査なく終了することはない。
  2. 正)法人は破産によって消滅し(会社法471条5号など)、権利義務の主体でなくなるから、免責の必要性がない。なお、実体上は破産開始時に消滅するが、破産手続の終了までは破産のためという限定付きで存続するものとみなされる(破産法35条)。
  3. 正)上記のとおり法人は破産により消滅するので、財産が残ってもその帰属先は存在しないことになる。よって、何も残らないように原則としてすべての財産が処分される。
  4. 誤)法人破産の場合は、「支払不能又は債務超過」が破産の開始要件となる(破産法16条1項)。

50

  1. 誤)いわゆる非免責債権については、弁済義務は消えない(破産法253条1項各号)。税金(1号)や婚費・養育費(4号ロ・ハ)などについて問題となることが多い。
  2. 正)免責許可決定の確定による復権(破産法255条1項1号)。
  3. 正)免責許可決定の効力は、「確定したとき」に生じる(破産法253条1項)。
  4. 正)破産法253条2項。むしろ主債務者が破産したときのための保証人。

51

管財人は、「破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利」を有する(破産法78条1項)ので、会社の財産や権利義務に関する処分・保全は管財人の仕事となる。

  1. 雇用契約が維持されているのであれば、会社に代わって管財人が行う。
  2. 法人破産の場合は、書記官が職権で破産開始・終結等の登記を行う(破産法257条1項、7項)。管財人の仕事ではない。
  3. 租税は財団債権又は優先的破産債権となり、その支払いは破産財団を管理する管財人の仕事である。
  4. 法令上の各種書類保管義務は、破産手続が開始しても消滅しない。

52

  1. 誤)個人再生については、5000万円を超える場合は利用できない(民事再生法221条1項、239条1項)。ただし、「住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く」ため、住宅ローンなどは差し引いた額となる。したがって、「全ての債務の合計額」の点が誤り。
  2. 正)設問のとおり。
  3. 正)個人再生とは、小規模個人再生(民事再生法221条1項)と給与所得者等再生(同239条1項)を指し、いずれも「個人である債務者」を対象としているため、法人は利用できない。
  4. 正)住宅資金特別条項(民事再生法196条4号)を定めた弁済計画が認められた場合は、自宅を維持する(住宅ローンを契約どおり返済する)ことができる。個人再生のメリットは、ただこの一点にあると言っても過言ではない。

53

  1. 正)民事再生法239条1項。
  2. 誤)住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)は、給与所得者等再生に限定していない。
  3. 正)民事再生法241条2項7号。可処分所得の2年分以上を弁済しなければならない。
  4. 正)小規模個人再生の場合、債権者によって再生計画が可決されなければならず(民事再生法231条1項)、債権額の過半数が反対すると不認可となる(民事再生法230条6項)。これに対し、給与所得者等再生では債権者の決議を要件としていないため、裁判所の判断で認可できる(民事再生法241条)。安定収入等の要件を厳しくする代わりに、債権者が反対しても再生を認める趣旨である。ただ、一般個人の再生計画について債権者が異議を出すこと自体が少ないので、現状では給与所得者等再生を利用するメリットはほぼないと言っていい。