日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

司法試験

刑法事例演習教材07「男の恨みは夜の闇より深く」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 【※判例の見解に沿って起案】 第1 甲の罪責 1 Aへの暴行について (1) 甲は乙と共にAに暴行を加え打撲傷を負わせているから、Aに対する傷害罪の共同正犯(刑法(以下省略)204条、60条)が成立…

司法試験の勉強:国際私法の基礎3/3(財産法)

自然人 人の行為能力 4条1項:本国法主義(∵人の身分・能力は属人法) 2項:取引保護規定=当事者が全員同じ法域にいればその地の法 3項:取引保護規定の除外事項 家族法:そもそも4条の対象とならない 別地の不動産:不動産所在地は重要→注意義務 失踪・後…

司法試験の勉強:国際私法の基礎2/3(家族法)

婚姻 実質的成立要件(24条1項) 配分的連結:両当事者の対等+婚姻成立の困難回避(累積的連結の緩和) 一方的要件:当事者の一方についてのみ問題となる(例:婚姻適齢) 双方的要件:当事者の両方について問題となる(例:近親婚禁止) 批判:解釈の限界…

司法試験の勉強:国際私法の基礎1/3(総論・一般法理)

基本用語 準拠法 ある法律関係において適用すべきとされる法域の法 法域 ある私法体系が通用している一定の地域 抵触法(国際私法) 準拠法を指定するための法 実質法 ある法域において具体的な法律関係に適用されている法 単位法律関係 国際私法上1つの単位…

刑法事例演習教材30「暗転した同窓会」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 第1 第1暴行について 1 甲の罪責 (1) 甲はBの顔面を強く殴打し(第1暴行)、これによりBは後頭部をタイル張りの地面に打ち付けられて頭蓋骨骨折に伴うクモ膜下出血を生じて死亡しているから、…

刑法事例演習教材27「欲深い売主」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 第1 甲の罪責について 1 Aに売却した土地(以下「本件土地」という)をBに二重譲渡した行為について (1) Aに対する横領罪 ア 既にAに売却した本件土地を、移転登記未了を利用してBに売却した…

刑法事例演習教材23「即断3連発」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 【※罪名等は当時(刑法改正前)のもの】第1 Bの胸をまさぐり、首筋にキスをした行為について 1 甲はBを背後から羽交い絞めにしてその胸をまさぐり、首筋の数か所にキスをしている。Bは男性で…

刑法事例演習教材19「週刊だけど『毎朝』」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 第1 甲の罪責について 1 甲は、(1)ないし(3)の記事において、ACEを犯人として扱っているが、かかる行為につき名誉毀損罪(230条1項)が成立しないか。 2 記事(1)について (1) 構成要件該当性 …

刑法事例演習教材14「燃え移った炎」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 1 甲乙丙は、洞道から一時退出する際にトーチランプの消火を怠っており、これによりトーチランプから防護シートに火が燃え移ったのち、洞道壁面を焼損していることから、業務上失火罪(117条…

刑法事例演習教材10「偽装事故の悲劇」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 第1甲の罪責について 1 Aに対する罪 (1) 甲は、Aに軽い傷害を負わせる意図で自己の運転する自動車を後ろからAの自動車に追突させてAに頸椎捻挫の傷害を負わせ、結果としてAは死亡しているから…

刑法事例演習教材06「カネ・カネ・キンコ」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 第1 乙の罪責について 1 アダルトビデオの万引き行為について (1) 乙は、B店からアダルトビデオ3点を万引きしているから、窃盗罪(235条)が成立しないか。 (2) B店のアダルトビデオは「他人…

刑法事例演習教材05「ピカソ盗取計画」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 甲の罪責 第1 建造物侵入罪(刑法130条、以下同法名省略) 1 甲はA社敷地内に侵入しているから建造物侵入罪は成立しないか。以下検討する。 2 構成要件該当性 建造物侵入罪は、個人的法益を保…

司法試験の勉強:憲法の構成

対立軸の特定 憲法の論述は、簡単に言えば合憲論と違憲論を並べてから自分の意見を書くという形式です*1。この時の思考法として大切なのが、「対立軸を意識する」ということです。対立軸の特定とは、単に問題となる権利を特定することではなく、具体的にどう…

刑法事例演習教材04「黄色点滅信号」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。 1 甲は、自己の運転中の事故によりBを死亡させているから、自動車運転過失致死罪(刑法(以下同法名省略)211条2項)の罪責を負わないか。以下検討する。 2 構成要件該当性 (1) 甲は、自己の…

刑法事例演習教材03「ヒモ生活の果てに」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問03の回答例。 甲の罪責 第1 傷害罪(204条) 1 甲はBを殴打し脳内出血等を負わせているため、傷害罪が成立しないか。 2 構成要件該当性 「傷害」とは、不法な有形力の行使等により人の生理的機能に不良な…

司法試験の勉強:行政法

行政法はとにかく法律解釈なのですが、判例によって確立されている規範は、そのまま表現しなければなりません。特に、処分性や原告適格の判例は、一字一句そのまま暗記し、書き出すことが必須です。その他、重要論点については、キーワードを問題に合わせて…

刑法事例演習教材02「D子は見ていた」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問02の回答例。 第1 Aの財布を持ち去った行為について 1 窃盗罪の成否 (1) 甲は、Aの財布を無断で持ち去っているから、Aに対する窃盗罪(刑法(以下法令名省略)235条)が成立しないか。 (2) Aに対する占有…

司法試験の勉強:刑法は暗記が7割

何を暗記するのか 答案の基本的な流れ(アウトライン)は、以下のとおりです。 罪名(条文)の特定 構成要件該当性(因果関係含む) 故意・過失 違法性・責任阻却事由 共犯論 罪数 罪名の特定と罪数以外は、基本的に全て「規範→あてはめ」の論証パターン吐き…

刑法事例演習教材01「ボンネット上の酔っぱらい」

受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問01の回答例。 Aに対する罪責 第1 Aの顔面を殴打した行為について 1 甲は、Aの顔面を手拳で軽く1回殴打しているから、暴行罪(刑法208条、以下条文のみ示す)の罪責を負わないか。 2 構成要件該当性 「暴…

司法試験の勉強:民事訴訟法

民事訴訟法は、ひたすら判例百選の暗記でした。手続法は静的安全が命であり、それは試験でも実務でも同じです。私は、時間のあるうちは、とにかく判例百選を読み込み、簡単なまとめを作って復習していました。出題範囲的にも、民訴で百選の外の論点が出てく…

司法試験の勉強:商法

商法と言っても、純粋な商法問題はほぼ出ないので、実質会社法。会社法は、論点が幅広い上、理論と判例の両方を踏まえつつ、事実の抽出・評価もしっかりする必要があるので、これといった対策ができない科目という印象があります。なので私の場合は、コテコ…

司法試験の勉強:刑事訴訟法

司法試験における刑事訴訟法は、「判例の規範→問題文の事実→当てはめ」の流れが全てと言っても過言ではありません。文中のどんな事実をどう評価すべきか、という点についても、元ネタの判例で拾われた事実さえ覚えていれば、簡単に判断できます。そのため、…

司法試験の勉強:国際私法

国際私法は、将来的に全く役に立たないので、正直あまり選択科目に選ぶのはおすすめできません。しかし、試験合格のことだけを考えるなら、かなり省力化できる科目ではあるので、リソースが不足気味の受験生には正解とも言えます。覚えるべき判例がほとんど…

司法試験の勉強:憲法

憲法は、最高裁判決があればその規範を示すことが絶対不可欠です。当てはめも規範あってこそ。参考として、受験生時代に私が暗記するためにまとめた規範集を晒しておきます。カギ括弧部分は判例抜き出しです。

司法試験の勉強:刑法

「暗記じゃない、事実と評価と当てはめだ!」とよく言われますが、筆記試験なんてものはどんな試験でも多かれ少なかれ暗記が前提です。特に刑法は、やたらと論点が多く、圧縮して書いていかないと書きたいことが書き切れません。定義や基本論証は暗記して吐…

予備試験ルートの合格率

9月12日に、平成29年司法試験結果が出ました。統計によると、予備試験ルートでの受験生は、合格率が72.5%と抜きん出て高く、これをどう見るかということが問題にされることもあります。しかし、これは若干数字のマジックなところがあります。確かに、予備試…

弁護士になるためのルート

流れ図 弁護士になるまでの過程を、ざっくり図にしてみました。なお、以下の図や説明は全て2017年現在の状況についての話です。 受験資格を得るまで 弁護士(又は裁判官、検察官)になるには、司法試験に合格しなければなりませんが、その司法試験を受験する…

法律家は「正しい日本語」を使う(べき)

日本語は、法律家にとって最も重要な商売道具です。裁判官や検察官は、漢字の使い方や送り仮名の使い方についても、公用文作成要領に従うよう努めています。司法修習の際には、その厳密さに驚きました。弁護士はそこまで厳格ではありませんが、それでもかな…