日々起案

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事務職員能力認定試験 第11回解説(問5~8)

問5

  1. 〇)送達場所は,原則として当事者の「住所,居所,営業所又は事業所」(民訴法103条1項)。法人の場合は,代表者が送達を受けるべき者になり(民訴法37条,102条1項),営業所と代表者の住居所のいずれも送達場所となる。
  2. 〇)住居所等が不明か,送達に支障がある場合は,本人の就業場所が送達場所となる(民訴法103条2項前段)。
  3. 〇)転居先が判明しているので,住所不明に当たらない。改めて転居先に送達をしなければならない。
  4. ×)書留郵便に付する送達(付郵便送達)の要件

①不在による不送達(転居先不明やあて所尋ねあたらずは含まない∵そこに住んでないなら郵便送っても意味ない)

②就業場所が不存在,不明,又は就業場所への送達が不能

→設問では①②とも該当しない。

問6

  1. 正)文書の標目,作成者及び立証趣旨を記載した証拠説明書を提出しなければならない(民訴規則137条1項)。原告が甲号証,被告が乙号証とすることになっている。ただ甲乙の区別については法律上の定めが見当たらず,慣例と思われる(当職調べ)。当事者が多い訴訟では,甲乙丙丁…としたり,甲A,甲Bとしたりもする。
  2. 正)証拠一般について,「証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示してしなければなら」ず(民訴規則99条1項),証拠申出書を提出して行う。人証では,尋問事項書を提出しなければならない(同107条1項)。
  3. 誤)「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは,申立てにより,…証拠調べをすることができる」(民訴234条)。
  4. 正)準備書面は,「直送をしなければならない」(民訴規則83条1項)。書証・証拠説明書は,「直送することができる」(同137条2項)。

なお,準備書面の直送を受けた側は,受領書を直送しなければならない(同83条2項)。

問7

  1. 誤)死亡を含め,当事者が訴訟の資格を失ったときは,訴訟が中断し,法定の者が引き継がなければならない(民訴124条1項)。ただし,訴訟代理人がいる間は中断しない(同条2項)。
  2. 正)民訴143条1項。ただし,訴訟を遅滞させる場合は不可(同項ただし書き)。「請求の基礎」が同じかどうかは,①社会的に見て同じ事実に基づいた請求か,②それまでの訴訟資料を流用できるかなどから判断する。
  3. 正)民訴146条1項。ただし,訴訟を遅滞させる場合は不可(同項ただし書き)。反訴とは,被告の方から原告に訴えを起こすこと。元々の訴訟を本訴という。関連する請求を一緒に審理してもらえるが,基本的には別個の訴えなので,反訴であっても各種手続は普通の訴訟提起と同じ(民訴146条4項)。
  4. 正)民訴152条1項。口頭弁論の併合とは,主張立証の手続を一緒にすること。逆に分離することもある。

問8

  1. 正)仮執行宣言は,申立て又は職権(裁判官の裁量判断)で行う(民訴259条1項)。訴状に記載しなくても裁判官が必要と思えば仮執行宣言を付する。でも普通は原告が求めもしないのに付するようなことはしない。優しい裁判官なら要らないんですかって聞いてくれる。本人訴訟で「意味わからんやろなぁ」と思ったら職権で付するのかも?
  2. 誤)仮執行宣言は,「宣言することができる」のであり,宣言しないという裁判もあり得る。金銭請求でも同じ(手形・小切手の場合は別)。
  3. 正)「担保を立てて,又は立てないで」仮執行できることを宣言できる(民訴259条1項)。手形・小切手の場合は,原則担保は立てさせない。
  4. 正)仮執行宣言は,「その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより」効力を失う(民訴259条6項)。つまり控訴しても判決までは執行可能。

なお,手形・小切手による金銭請求の場合は,「職権で,担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない」(民訴259条2項)ので,必ず仮執行宣言が付く。