日々起案

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事務職員能力認定試験 第12回解説(問31~38)

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  1. 正)家事事件手続法244条。家事事件のうち、別表第二の事件は、当事者同士の紛争性が高いことから、話し合いによる解決が期待され、調停の対象事件にもなっている。
  2. 誤)家事審判に当然に移行するのは、家事事件手続法別表第二の事件のみ(家事事件手続法272条4項)。
  3. 正)民事訴訟費用等に関する法律別表第一第15項、第15項の2。
  4. 正)即時抗告できる審判は個別に定められており(家事事件手続法85条1項)、即時抗告できない審判もあるので厳密に正しいと言えるかは微妙だが、「不満がある当事者」を想定できる審判は通常即時抗告の定めがあるので、一応正しい。家庭裁判所上級審高等裁判所になるので、管轄は高等裁判所である。ただし、抗告状の提出先は原裁判所たる家庭裁判所となる。

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  1. 誤)「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所」(家事事件手続法245条1項)。
  2. 正)有責配偶者であっても特に制限はない。離婚訴訟で事実上不利に働くだけである。
  3. 正)民事訴訟費用等に関する法律3条1項、別表1第15項の2。離婚等請求調停事件は、養育費・財産分与等の申立ても1個の調停事件の中で扱うため、手数料も1件分。婚姻費用分担請求調停を同時に申し立てる場合は、別個の調停事件になるので、2件分で2400円必要になる。
  4. 正)明文はないが、家庭裁判所は手続きの円滑な進行のため「身分関係についての資料」の提出を求めることができる(家事事件手続規則37条3項、127条)としており、戸籍謄本がこれに該当すると解されている。

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家事事件手続法の別表は、1が公益的な事項、2が当事者紛争的な事項が定められている。

要するに、関係者間に対立があり、裁判所が判断するより、まずは対立当事者同士で話し合った方が良さそうなものは別表2と思っておけばよい。肢3はまさにこれに該当する。

肢1,2,4は、関係者ではなく裁判所が判断すべき事項。

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  1. 正)家事事件手続法24条。
  2. 誤)「手続代理委任状」を提出する。家事調停・審判と訴訟は別個の手続。
  3. 正)(根拠調査中)
  4. 正)家事事件手続法24条2項1号。特別委任が必要な事項は、その権限を与えることを個別に明示しなければ、自動的には権限が与えられない。したがって、委任状には同条各号の事項を個別に記載しておく必要がある。

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「裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるとき」は、調停前置が不要となる(家事事件手続法257条2項但書)。

調停前置主義の趣旨は、できるだけ当事者同士の話し合いで解決することが望ましいという点にあるので、そのような解決が望めない場合は調停前置は不要と解される。

肢1,2,4は、いずれも当事者同士での話し合いの見込みがない。

肢3は、被告がおり、かつ争う姿勢を見せているのであるから、話し合いによる解決の見込みがないとは言えない。

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  1. 誤)離婚の財産分与は、「離婚の時から二年を経過したときは」請求できない(民法768条2項但書)。逆に言うと2年以内なら離婚後でも可能であり、訴えと同時である必要はない。
  2. 正)民法819条2項。親権は子にとって極めて重要なので、請求がなくても離婚する際には定めなければならない。
  3. 正)離婚原因は民法770条1項各号に定められている。これらの事由は離婚の要件なので、請求原因事実としていずれかに該当する旨の主張がなければ、請求が成り立たない。
  4. 正)人事訴訟の管轄は家庭裁判所に専属する(人訴法4条)ため、慰謝料請求を併合していても家庭裁判所に提起しなければならない。

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離婚自体については非財産権上の請求として訴額が160万円とみなされる(民訴費用法4条2項)。そして、離婚とともに求める財産分与、養育費請求、親権者指定は,附帯処分(人訴法32条)となり,分与額は訴額計算に含めない。よって訴額は160万円。

離婚訴訟で附帯処分を申し立てる場合は、申立件数×1200円の手数料を要する(民訴費用法別表第一の15の2)。ただし、親権者の指定は裁判所が職権で行わなければならない(民法819条2項)ので、手数料不要。他方、養育費については、子の人数分手数料が必要。本問では、財産分与と子1人分の養育費請求で2件分2400円を加算する。

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  1. 誤)裁判上の和解は、調書作成により確定判決と同一の効力を有する(民訴法267条)。そして、離婚の裁判が確定した場合、「訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない」(戸籍法77条1項、63条1項)となっているため、原告による届出が必要。なお、10日以内に原告が届出をしない場合は、被告の方でも手続可能(戸籍法77条1項、63条2項)。
  2. 正)戸籍法77条1項、63条1項。
  3. 正)上記のとおり、「謄本」を添附することとされている。細かい離婚条件を提出しなくて済むように、「原告と被告は離婚する」の部分だけの省略謄本を作成してもらうのが通常。
  4. 正)協議離婚の場合は、「離婚をしようとする者は…その旨を届け出なければならない」(戸籍法76条)とされており、どちらが届出をしても良い。届出義務については設問の趣旨が不明確だが、協議離婚は届出時に離婚の意思を有することが必要と解されているため、翻意したのであれば届出をする必要はない。