事務職員能力認定試験 第12回解説(問23~30)
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戸籍の届出には、以下の2種類がある。
- ①創設的届出
- その届出により一定の身分関係や法律効果を発生させる届出
- ②報告的届出
- 既に生じている身分関係や法律効果について、戸籍に反映するために行う届出
法律上の婚姻は、戸籍法上の届出によってその効力を生じる(民法739条1項)。
出生・死亡は、その事実のみで親子関係や相続といった身分関係・法律効果を生じ、届出は戸籍に反映する行為に過ぎない。
調停や判決(裁判)による離婚も、調停の成立や判決の確定により離婚の効力が生じるため、届出は報告的届出となる。ただし、協議離婚は離婚届の提出によりその効力を生じる(民法764条、739条1項)ため、創設的届出となるので注意。
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①「裁判手続又は裁判外手続における民事上若しくは行政上の紛争処理手続についての代理業務である場合」と②「刑事弁護人等として請求する場合」は、依頼者の氏名を記載する必要がなく、代わりに代理する手続及び利用目的を明らかにする必要がある(戸籍法10条の2第4項、第5項)。
ア、イ、ウはいずれも①の業務に該当するため、依頼者の氏名は記載不要。
他方、依頼された業務が紛争処理に関わらない場合は、依頼者の氏名を記載しなければならない。具体例としては、相続登記の申請や公正証書遺言の作成等である。
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- 戸籍法13条7号
- 同上(婚姻前の戸籍の筆頭者と同じ氏)
- 以前の婚姻の有無も記載事項ではある(戸籍法施行規則35条4号)。しかし、除籍された者に関する事項は、転籍する際に移記する必要のない事項に含まれている(同規則37条3号、4号)。したがって、離婚後に転籍している場合は、以前の婚姻の有無は現在戸籍には記載されない。
- 戸籍法13条2号
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- 正)権利部は、甲区と乙区に区分され、甲区には所有権に関する登記、乙区にはそれ以外の権利に関する登記が記載される(不動産登記規則4条4項)。したがって、権利に関する登記はすべて権利部に記載されることになる。
- 正)同上。
- 正)仮登記は、いずれ本登記する前提で順位を確保しておくためのもので、本登記すべき場所に記載される。所有権移転登記は甲区に記載されるので、その仮登記も甲区に記載される。
- 誤)登記名義人の氏名・住所の変更の登記は付記登記によってなされ(不動産登記規則3条1号)、関連する登記の直後に記載される。登記名義人(=所有権者)は甲区に記載されるので、その住所変更登記も甲区に記載される。
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- 誤)登記識別情報または登記済証(登記識別情報制度の前に発行されていた書類)を添付する必要がある点は正しいが、それが添付できない場合は、①事前通知制度(不動産登記法23条1項)、②司法書士等による本人確認情報(同条4項1項)、③公証人による認証(同条4項2号)のいずれかによって本人確認をする。何かを添付するとすれば、②の本人確認情報になる。
- 正)登記識別情報等の添付が必要なのは、登記権利者と登記義務者の共同申請が必要な場合(不動産登記法22条)。相続登記は相続人単独で申請できる(不動産登記法63条2項)ので、登記識別情報は不要となる。
- 正)申請人は、申請書面に押印して印鑑証明書を添付しなければならない(不動産登記令16条1項、2項)。共同申請なので登記義務者の印鑑証明書も必要。
- 正)不動産施行令別表30項添付情報ロ。
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- 正)代表取締役は何名いても各自が単独で会社を代表するため、誰か1人を記載すれば足りる。
- 正)取締役は清算人となり(会社法478条1項1号)、この場合代表取締役だった者は代表清算人となる(同法483条4項)。
- 正)代表執行役には代表取締役に関する定めが準用され、「株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の好意をする権限を有する」(会社法420条3項、同法349条4項、5項)。したがって、代表執行役を代表者として記載する。なお、執行役を設置する指名委員会等設置会社では、そもそも代表取締役は存在しない。
- 誤)支配人は、訴訟代理権も有している(会社法11条1項)が、代表者ではない。本人である会社に選任された任意代理人の立場に当たる。