日々起案

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事務職員能力認定試験 第11回解説(問53~56)

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  1. ×)住宅に住宅ローン債権以外の担保権が付いている場合,又は共同担保不動産に後順位担保権が付いている場合は,住宅資金特別条項を定めることができない(再生198条1項但書)。すなわち,①住宅には住宅ローンのためにしか抵当権を付けてはいけない,②敷地など他の不動産も住宅ローンの担保に入れたら,その後に別の抵当権を付けてはいけない,ということ。他の抵当権者が実行してしまったら,住宅を残す趣旨が図れないから。
  2. 〇)保証会社が代位弁済してから6か月以内に申立てをすれば,住宅資金特別条項を定めることができる。設問は3か月なのでセーフ。
  3. 〇)住宅=自己の居住の用に供する建物(再生196条1号)。住居を維持するための制度なので,遠くないうちに居住予定であれば,現時点で居住していなくても良い。
  4. 〇)住宅=床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されることが必要(再生196条1号)。設問は3分の2なのでセーフ。

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公訴提起前の弁護人選任は,弁護人と連署した書面を検察官又は司法警察員(警察官)に差し出さないと効力がない(刑訴規17条)。公判段階では,裁判所に提出する。

検察官送致前なら警察官,送致後は検察官に差し出す。なお,国選は被疑者ではなく裁判所から選任されているので,弁護人選任届自体不要。

勾留状は裁判所が発するものなので,その謄本の請求も裁判所に対して行う。請求根拠は,刑訴規則74条,302条。

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  1. 正)保釈請求は起訴後の定め(刑訴88条1項)しかない。執行猶予判決でない限り判決宣告後も勾留は継続し,確定までは保釈請求できる。
  2. 正)公判に出頭しないと保釈が取り消され(刑訴96条1項1号),同時に保証金が没取される(刑訴96条2項)。
  3. 正)本人だけで心配ないならそもそも勾留されないので,一般的には身元引受書が必要。ただし,法律上の必要というわけではない。
  4. 誤)第1回公判前は裁判官に対する準抗告(刑訴439条1項2号),第1回公判後は裁判所に対する抗告(刑訴420条2項,419条)。

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  1. 誤)第1回公判期日前に,検察側・弁護側の意見を聴いたうえで決定することができる(刑訴316条の2第1項,2項)。いつでもできるわけではない。
  2. 正)公判前整理手続終了後は,やむを得ない事情がない限り証拠調べ請求できない。(刑訴316条の32第1項)。
  3. 正)特に限定はない。非裁判員裁判でも,否認なら公判前整理手続を実施することがある。
  4. 正)類型証拠開示(刑訴316条の15)では,捜査上類型的に作成される証拠を請求する。主張関連証拠開示(刑訴316条の20)では,弁護側の予定主張に関連した証拠を請求する。