事務職員能力認定試験 第11回解説(問9~12)
問9
- 正)「支払督促の申立ては,…簡易裁判所の書記官に対してする」(民訴383条1項)。そして,「裁判所書記官は,債権者の申立てにより,支払督促を発することができる」(民訴382条)。
- 正)「適法な督促異議の申立てがあったときは,…訴えの提起があったものとみなす」(民訴395条)。
- 正)民訴391条1項。仮執行宣言の申立てがなされると,宣言前に督促異議がなされない限り,裁判所は仮執行宣言をしなければならない。
- 誤)仮執行宣言は,送達時に効力を生じる(民訴391条5項,388条2項)。そして,仮執行宣言の効力は,その宣言又は本案判決を変更する判決によって失われる(391条5項,260条1項)。よって,通常訴訟に移行しただけでは効力は失われない(控訴の場合と同じ)。
問10
公示催告とは,官報に掲載して権利を争う者に申し出るよう促す手続。最低2か月,東京では4か月半の期間を取る。
手形・小切手等の盗取・紛失・滅失時は,公示催告の申立てをして,申し出がなければ除権決定(有価証券を無効にする決定)を得ることができる(非訟事件手続法114条1項)。
- 警察への紛失届は,公示催告の申立てのために必要だが,それだけでは無効化できない。
- 上記のとおり。
- 手形・小切手訴訟は,権利行使するための手続。普通の訴訟より簡易・迅速。
- 意思表示の公示送達とは,相手方が所在不明の場合に,解除や時効援用の意思表示を行うための手続。意思表示だけでは有価証券は無効にできない。
問11
民事保全は,訴訟や執行の手続をしている間に処分されるおそれがある場合に,処分できないように仮差押等の命令を出してもらう手続。
相手方に察知されないように,簡易迅速性・密行性が求められる。
- 〇)申立てには,保全すべき権利と保全の必要性を「疎明」しなければならない(民事保全法12条6項)。「疎明」とは,「一応根拠がある」程度の認識を持たせること。「証明」と違い,確信までさせる必要はない。口頭弁論や審尋をすることもあるが,基本的にはしない。
- 〇)「民事保全の手続に関する裁判は,口頭弁論を経ないですることができる」(同法3条)。つまり,口頭弁論を経てすることもできる。また,仮の地位を定める仮処分の場合は,原則として債務者審尋が必要となる(同法23条4項,2項)。
- ×)本案訴訟を前提とする仮の手続であることは正しい。しかし,「本案の訴えを提起することができるとき」(同法12条1項)であれば良く,本案訴訟提起後でも問題ない。むしろ,本案訴訟提起後の方が処分の危険は大きいので,保全の必要性が高い。
- 〇)同法14条1項。担保を立てさせるか,相当期間内に立てることを条件とするか,又は立てさせないで保全命令を発することができる。ほとんどの場合は担保を立てさせる。不当解雇や交通事故事案など,生活のために必要な場合は担保なしとなることがある。