司法試験の勉強:民事訴訟法
民事訴訟法は、ひたすら判例百選の暗記でした。手続法は静的安全が命であり、それは試験でも実務でも同じです。
私は、時間のあるうちは、とにかく判例百選を読み込み、簡単なまとめを作って復習していました。出題範囲的にも、民訴で百選の外の論点が出てくるということは考えにくいので、それだけで基本的には必要十分といえるはずです。
以下、私が百選をまとめたメモです。見出しの番号は百選内の番号と一致し、文中で「A**」と書いてあるのは、巻末のAppendixの数字です。私が受験した時から、改版があったようなので、現在の百選とは数字が異なっていると思いますが、参考にはなると思います。
1 法律上の争訟
- 「他に具体的な権利又は法律関係をめぐる紛争があり、その当否を判定する前提問題として…必要がある場合には、その判断の内容が宗教上の教義の解釈にわたるものであるような場合…でない限り、…裁判所が審判権を有する」
- 法律上の争訟:「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるもの」
2 訴訟と非訟(夫婦同居の審判)
- 同居義務も「法律上の実体的権利義務」
→確定には「公開の法廷における対審及び判決によってなすべき」 - 夫婦同居の審判は「実体的権利の存することを前提として…具体的内容を定める処分」
→「本質的に非訟事件の裁判であって、公開の法廷における対審及び判決によってなすことを要しない」
3 移送(裁量移送の要件)
4 忌避事由
- 裁判長が被告側訴訟代理人の娘婿
→ただちに24条の「公正を妨げるべき事情」にあたるとはいえない - 看過した場合
- 明文なし
- 忌避決定前は適法→終局判決後の忌避申立ては棄却
5 氏名冒用訴訟
- 実質的表示説:訴状の記載や準備書面から合理的に解釈(∵明確性)
→当事者は被冒用者 - 原告側の冒用
- 判決前:不適法却下or追認
- 判決後:被冒用者に判決効及ぶ→上訴・再審
- 被告側の冒用
- 判決前:冒用者の訴訟行為は無効、追認可
- 判決後:被冒用者に判決効及ぶ→上訴・再審
6 死者名義訴訟
- 訴訟係属時期
- 原則:訴状送達時
- 訴状提出時に潜在的訴訟係属あり
- 訴訟係属前の死亡
- 訴訟係属後の死亡
- 当然承継(124条1項1号)
- 受継まで中断
- 中断中の訴訟行為は無効、追認可
- 看過判決→上訴・再審
- 判決確定後の死亡:既判力の拡張(115条1項3号)
7 法人格の非同一性
- 事案
- 判旨
- 「旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であるというべきであるから、…信義則上、Yが旧会社と別異の法人格であることを主張しえない筋合いにあ」る。
- 任意的当事者変更とする見解(百選解説)
- 当事者はA→Y
- 新訴提起+旧訴取下げ(複合行為説)
- 原則:旧訴資料の援用は相手方の同意必要
- 本件:信義則により同意拒絶不可
- 当事者変更はないとする見解
- 実質が同じ・信義則→別人格の主張不可(当事者A=Y)
- 自白の撤回の問題として扱う
8 法人格なき社団の当事者能力
- 法人格なき社団の要件
- 団体としての組織を備え、
- 多数決の原理が行われ、
- 構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、
- 代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している
- 当事者能力欠缺を看過した判決
- 確定前:上訴
- 確定後:実体を全く欠く場合は無効(再審事由には該当しない)
9 当事者能力と登記請求権
10 民法上の組合の当事者能力
- 29条で認める
- 法人格なき社団との区別困難(相手方の負担)
- 取引実態に沿うため訴訟の効率化に資する
11 入会団体の当事者適格
- 総有権確認の訴えにつき原告適格肯定
- 権利の団体的色彩
→入会団体の訴訟追行が紛争の複雑化・長期化の回避に資する
- 権利の団体的色彩
- 代表者による訴訟追行
- 構成:一般的授権による任意的訴訟担当
- 処分に必要な総会決議等の内部規約に基づく授権が必要
∵代表権の範囲は団体により多様
- 代表者への授権が得られない場合
=当事者適格はあるが訴訟追行できない- 原則どおり権利者全員を原告として提訴
- 非同調者は被告とする(cf.98)
12 法定訴訟担当(遺言執行者)
13 任意的訴訟担当(業務執行組合員)
- 弁護士法54条、信託法10条→任意的訴訟担当の原則禁止
- 例外の基準
- 制限の趣旨(当事者の不利益回避)を潜脱するおそれがなく
- これを認める合理的必要がある場合
- 業務執行組合員
- 自身が組合員であるから利害が共通し、業務の知識も十分
- 訴訟の複雑化を回避する合理的必要あり
- 労働組合:個別労働者の利益とは異なるので不可
14 法人の内部紛争(原告適格)
- 確認の訴え→確認の利益のあるものが原告適格を有する
- 代表者の地位の存否確認
- 組織上、その代表役員の任免に関与するなど代表役員の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、又は自らが代表役員によって任免される立場にあるなど代表役員の地位について法律上の利害関係を有していることを要する
- 氏子総代はOK
- 単なる氏子はNG
15 法人の内部紛争(被告適格)
- 当該役員への訴え:紛争の根本的解決に資さないから不可
- 法人への訴え:組織法上の強制力=対世的効力により根本的に解決できる
19 訴訟代理人の代理権の範囲
- 和解権限は特別の授権が必要(55条2項2号)
- 和解条項として許される範囲
- 互譲の一方法として和解に必要・有用であり、
- 本人に予測可能な範囲の財産処分
- 選定当事者の場合
- 特別の委任なく和解を含む一切の行為が可能(A5)
- 選定は無条件でなければならない
→選定行為において権限を制限することも不可
- 業務停止命令違反
- 判例:周知されていなければ有効(A9)
- 一般の信頼
- 手続安定
- 訴訟経済
- 学説:絶対的無効説、追認説が多数
- 判例:周知されていなければ有効(A9)
20 弁護士による代理(双方代理)
- 弁護士法25条1号違反
- 相手方は異議を述べ、その行為の排除を求めることができる
- 違反行為を知り、又は知り得たのに異議を述べず事実審を終えた場合は、訴訟行為は有効であり相手方は無効を主張できない(異議説)
∵弁護士法25条1号=相手方の信頼利益保護
- 双方代理の場合→民法108条の解釈が妥当
- 双方の追認がなければ無効
- 単なる合意の実現のためなら有効
21 給付の訴え(登記請求訴訟)
- 登記手続請求=意思表示請求
→判決確定により意思表示が擬制され、執行も完了
22 将来給付の訴え(大阪国際空港事件)
- 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、
- その継続が予測されるとともに、
- 債務者に有利な事情変動があらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、
- 請求異議の訴えでその発生を証明する負担を債務者に課しても不当とはいえない
23 遺言無効確認の訴え
- 原則
- 遺言は過去の法律行為
- 事情変動により現在の紛争解決に資さないから、確認の利益なし
- 認められる要件
- 遺言が有効であれば生ずる現在の特定の法律関係の不存在を確認する趣旨
- その確認を求めるに付き法律上の利益が認められる
- 理由
- 審判対象が明確
- 紛争の一回的解決に資する
24 遺産確認の訴え
- 原則
- 過去の法律関係の確認とも考えられる
- 現在の法律関係なら共有持分権確認の訴えで十分
- 本件
- 当該財産が遺産分割前の共有関係にあることを確認する趣旨
- 遺産帰属性を確定することで派生的紛争を予防できる
- 共同訴訟関係
- 遺言無効確認=共有持分権の確認
→通常共同訴訟 - 遺産確認=共有関係の確認
→固有必要的共同訴訟
- 遺言無効確認=共有持分権の確認
25 具体的相続分確認の訴え
- 具体的相続分=算定の割合
→実体法上の権利ではない
→確認の利益(対象選択の適切性)なし
26 遺言者生存中の遺言無効確認の訴え
- 遺言者の生存中は遺言によって何の法律関係も生じない
→受遺者となるべき地位は事実上の期待的地位にすぎない - 遺言変更の可能性が事実上なくても地位の性質は変わらない
27 条件付法律関係の確認(敷金返還請求権の確認)
- 敷金返還請求権=明渡しまでに生じた一切の被担保債権を控除し残額があることを条件として発生する権利
- 条件付権利=現在の権利→対象選択の適切性あり
28 将来の法律関係の確認(雇用者たる地位の確認)
- 原則
- 未発生の法律関係→現在の紛争解決に資さない
- 例外
- 侵害の発生する危険が確実視できる程度に現実化している
→現在の法律関係の延長 - 侵害の具体的発生を待っていては回復困難な不利益をもたらす
→紛争の抜本的解決に必要かつ適切
- 侵害の発生する危険が確実視できる程度に現実化している
29 債務不存在確認訴訟の訴えの利益
- 同一債権について給付訴訟
→債務不存在確認訴訟は確認の利益消滅
→不適法却下
30 株主総会決議取消の訴え
- 取締役が任期満了で退任→特別の事情がない限り訴えの利益消滅
31 訴権の濫用
- 経営不振のため対価を得て持分譲渡
→3年後に突然社員総会の不存在確認の訴え
→正当な理由なく支配権を回復する意図であり、訴権の濫用として不適法
32 請求の特定(東海道新幹線騒音事件)
- 一般の契約でも結果の実現のみを目的としうる
→手段を特定しない抽象的不作為請求も可能
33 訴えの交換的変更
- 訴えの交換的変更=新訴提起+旧訴取下げ(又は請求放棄)
- 弁論開始後は取下げに相手方の同意必要(新訴への応訴は同意推定)
- 控訴審で変更した場合
→明確性のため、原審を破棄して新請求についての判断を示す
34 占有の訴えと本権の訴え
- 占有の訴えに対し本件に基づく反訴は可能
35 境界確定の訴え
- 境界確定の訴え=形式的形成訴訟
- 所有権の範囲確認ではない→取得時効の成否は境界を変動させない
36 訴え提起と不法行為
- 原則:提訴は正当な行為であり違法性なし
- 例外
- 主張が事実的・法律的根拠を欠くものであり、
- 提訴者がそれに対し悪意・重過失であった場合など、
- 裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる場合
37 重複起訴(債務不存在確認請求と手形訴訟)
- 手形訴訟
- 簡易迅速の趣旨
→簡易な手続きを利用する利益保護のため、重複起訴禁止に反しない
- 簡易迅速の趣旨
- 債権者代位(A34)
- 原則:法定訴訟担当→代位債務者による訴えは重複起訴
- 例外:代位債務者の独立当事者参加
- 必要性:債務者の利益保護(代位原因を欠く)
- 許容性:弊害の回避(併合審理による合一確定)
38 重複起訴(相殺の抗弁)
- 別訴先行型
- 114条2項による既判力→142条類推適用
- 取下げの困難性+担保的機能の重視から142条に反しないとする学説も
- 抗弁先行型
- 判例なし
- 抗弁の取下げに不利益なし+別訴となったのは自己責任→142条に反する
- 反訴提起後の相殺主張
- 反訴:矛盾はないが相殺の既判力と重複する
- 異なる意思表示をしない限り、予備的反訴に変更する趣旨と解する(A12)
- 明示の一部請求と残部
- 残部を供する相殺の抗弁は特段の事情がない限り許される
- 訴訟物は明示部分のみ=既判力の抵触なし
- 相殺の担保的機能
- 別訴棄却=残部も存在しないという実質的な判断
→信義則違反となり「特段の事情」発生
- 残部を供する相殺の抗弁は特段の事情がない限り許される
39 付郵便送達
40 補充送達の効力
- 補充送達=「相当のわきまえのあるもの」への交付
- 事実上の利害対立者への交付は有効(∵外形的に判断できず不明確)
- 現実の了知がなければ再審事由肯定
41 口頭弁論の再開
- 原則
- 弁論の再開は裁判所の専権事項
- 例外
- 弁論再開が明らかに手続的正義の要求するところであるといえる特段の事情
→再開しないことは違法
- 弁論再開が明らかに手続的正義の要求するところであるといえる特段の事情
42 攻撃防御方法の提出と信義則
- 被告の主張にそって原告が取消・解除を撤回、契約履行請求
- 被告は一転して取消・解除を主張して契約の効力否定
→信義則に反し許されない
43 和解による訴訟の終了と建物買取請求権の帰趨
- 建物買取請求権の効力
- 形成権→意思表示により実体的効果発生
- 実体的判断を受けずに訴訟が終了した場合は、実体的効果は遡求消滅
- 相手方の承諾があれば撤回も可能
- 和解成立→実体的効果が遡求消滅
- 建物買取請求権行使に利益を有する共同訴訟人
→その者との関係では同意がない限り効果を否定できない
44 相殺に対する反対相殺
- 訴訟上の反対相殺:不可
- 仮定の上に仮定→法律関係の不安定化
(裁判所の判断が及ぶことを条件に効果発生する特殊性) - 別訴で訴求可=不利益なし
- 114条2項の例外が無限定に拡大するおそれ
- 仮定の上に仮定→法律関係の不安定化
- 訴訟外の相殺の主張:可
- 既に確定的に効果発生している
- もはや訴求不可能
- 114条2項は適用されない
45 時機に後れた攻撃防御方法の提出
- 却下要件(157条)
- 故意又は重過失により
- 時期に後れて提出した攻撃防御方法であり
- 訴訟の完結を遅延させることになる場合
46 当事者からの主張の要否(所有権喪失事由)
- 弁論主義=判決の基礎となる訴訟資料の収集・提出を当事者の権能かつ責任とする原則
- 主張責任の原則
- 自白の拘束力
- 職権証拠調べの原則禁止
- 事案
- X:B→A
- Y:B→C
- 原審:B→A→C
- 弁論主義(主張責任の原則)違反
- A→Cを基礎づける「生の事実」は弁論に現れていたとして弁論主義に反さないとする見解もある
48 当事者からの主張の要否(公序良俗)
49 当事者からの主張の要否(所有を推認させる事実)
- 固定資産税の支払い→所有権帰属の推認
- 推認を覆す事実は当事者の主張による
- 「重要な間接事実」に弁論主義を適用している
50 相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述
- 先行自白
- 「自己に不利益な事実」=相手方が立証責任を負う事実(∵明確性)
- 援用あれば自白成立
- 援用なくても判決の基礎としうる(主張共通原則)
- 釈明義務
- 単独所有権の主張は共有持分権の主張を含む
→一部認容可能
→全部棄却の場合は後訴で共有持分権争えない(A28) - 共有に関する先行自白を争っている場合でも、釈明により援用を促した上で一部認容すべき
- 法的観点指摘義務違反を理由に既判力を縮減する見解も(A28少数意見)
- 単独所有権の主張は共有持分権の主張を含む
- 過失の自認:過失構成事実の自白に引き直し、拘束力認める(A19)
51 権利抗弁(留置権)
- 権利抗弁:権利行使の意思表示がない限り斟酌しない
52 裁判所の釈明権
- 釈明権=弁論主義の補完
- 消極的釈明:特に制限なし
- 積極的釈明:限界がある(∵処分権主義、公平、遅延)
- 訴えの変更を促す釈明が許される要件
- 紛争の抜本的解決が期待できる
- 明らかに誤解・不注意により主張がない
- 訴えの変更を促す釈明が許される要件
53 裁判所の釈明義務
- 釈明義務違反=手続の違法
→破棄事由(305条)、上告受理申立事由(318条1項) - 中野公式
- 勝敗逆転の蓋然性
- 当事者の主張の当否
- 期待可能性
- 当事者の公平
- 遅延、抜本的解決等の利益衡量
54 間接事実の自白
- 弁論主義の対象は主要事実
- 証拠と同様の機能を果たす間接事実に拘束力認めると自由心証主義を害する
- 間接事実の自白
- 審判排除効:なし(弁論主義に基づく効果)
- 不可撤回効:なし(審判排除効がないため禁反言にあたる期待もない)
- 証明不要効:あり(179条、拘束はないため自由心証を害さない)
- 債権喪失の抗弁
55 権利自白
- 自白=相手方の主張する自己に不利益な事実を認める旨の弁論における陳述
- 「いくらの消費貸借が成立したか」は法的効果の主張であって主要事実ではない
→自白にあたらない
56 自白の撤回の要件
- 相手方の同意(∵自白の根拠=当事者の意思)
- 刑事上罰すべき行為による強制
- 反真実かつ錯誤
- 錯誤=自白の根拠が崩れる
- 反真実なら錯誤の推認
57 訴訟上の証明(ルンバール事件)
- 因果関係の立証は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる高度の蓋然性の証明で必要十分
58 損害賠償額の算定
- 損害の性質上、損害額の立証困難(ex.談合)
→248条を適用し相当な損害額を認定すべき
59 過失の概括的認定
- 医師の診療行為の特殊性
→具体的にいずれの消毒が不完全であったかを確定しなくても、過失を認定できる
60 過失の一応の推定
- 仮処分の申請・執行
→本案訴訟で敗訴したら、特段の事情がない限り申請人の過失推定(一応の推定) - 「相当な事由」により推定覆す
61 証明妨害
- 明文がなくても一般的に証明妨害の法理を認める
- 故意・重過失により記載不完全な弁済受領書を交付=証明妨害
- 証明妨害の効果:事案に応じて考える
- 事実上推定
- 真実擬制
- 証明度軽減
- 立証責任転換
62 相手方の主張立証の必要(伊方原発事件)
- 原則:行政判断の不合理は原告に立証責任
- 例外:被告に主張立証責任(∵資料を全て行政側が保持)
- 被告は不合理がないことを主張・立証
- 立証不十分なら判断の不合理を事実上推定
63 証明責任の分配(虚偽表示における第三者の善意)
- 民法94条2項:第三者が自己の善意を主張立証
65 反対尋問の保障
- 通説(多数意見):証拠能力肯定
- やむを得ない事由による場合は、反対尋問がなくても認定資料としうる
- 理由
- 裁判の実効性
- 民事訴訟では伝聞証拠の証拠能力を排除していない
- 反対説
- 反対尋問がなければ原則として資料とできない
- ただし、積極的な責問権の放棄があれば問題ない
- 異議を述べないことは責問権の放棄とはいえない
- 理由
- 反対尋問権の重要性
- 反対尋問がなければ原則として資料とできない
- 異議を述べなければ責問権放棄として手続の瑕疵は治癒される(A14)
66 窃取された文書の証拠能力
- 原則:文書は証拠能力あり(∵証拠適格に関する明文規定なし)
- 例外
- 信義則上許容できない特段の事情
- 当事者が関与して相手方から窃取した場合(関与なければ排除されない)
- 公序良俗
- 著しく反社会的なで人格侵害を伴う方法によって採集されたもの
- 信義則上許容できない特段の事情
67 証言拒絶事由(公務秘密)
- 220条4号ロ
- 実質秘に限る
- 職務遂行上知り得た私人の秘密であって、公開により私人との信頼関係を害し、公務の公正かつ円滑な運営に支障をきたすものを含む
68 証言拒絶事由(報道記者の取材源)
- 220条4号ハ・197条1項2号・3号
- 「職業の秘密」
- 保護に値する秘密であって、
- 公開されると当該職業に深刻な影響を与え、以後その遂行が困難になるもの
- 保護に値する秘密
- 公表による不利益と証言拒絶により犠牲となる真実発見・裁判の公正との比較衡量により判断
- 秘匿利益の帰属主体に正当な秘匿利益がない
→守秘義務の対象にならない
→「保護に値する秘密」にあたらない(A23)
- 「職業の秘密」
69 文書提出命令(自己専利用文書)
- 220条4号ニ
- 専ら内部の者の利用に供する目的で作成
- 開示されるとプライバシーが侵害されたり自由な意志形成が阻害されるなど、看過しがたい不利益が生ずるおそれがある
- 特段の事情がない
70 文書提出命令(刑事訴訟関係文書)
- 220条4号ホ
- 刑事関係書類を開示するかは保管者の合理的裁量に委ねられる
- 保管者の提出許否が裁量濫用にあたるときは提出命令可
- 必要性の有無・程度
- 開示による弊害発生のおそれ(名誉・プライバシー等)
71 文書成立の真正の推定
- 二段の推定
- 文書中の印影が本人の印象と一致
→本人の意思に基づく押印であるという経験則に基づく事実上の推定 - 本人の意思に基づく押印
→文書が真正であるという法律上の推定(228条4項)
- 文書中の印影が本人の印象と一致
72 「証明すべき事実」の特定性(模索的証明)
- 221条1項4号
- 2号とあいまって証拠の必要性を判断可能にする
- 命令不服従時に真実と認める主張(224条1項)を判断可能にする
- 真実と認める主張=文書の性質・内容についての主張(≠要証事実)
→「証明すべき事実」が概略的でも不適法とはいえない
- 真実と認める主張=文書の性質・内容についての主張(≠要証事実)
73 診療録の証拠保全の要件
- 事由の疎明は当該事案に即して具体的に主張され、かつ疎明されることを要する
→具体的な改竄のおそれを一応推認させるに足る事実を疎明することを要する
75 損害賠償請求訴訟の訴訟物
- 同一事故・同一傷害による財産上の損害と精神上の損害→訴訟物は一個
76 引換給付判決
- 処分権主義=訴訟の開始・終了、審判対象の特定を当事者の意思に委ねる原則
- 立退料の増額=格段の相違のない一定の範囲内なら可
- 全部棄却よりは増額しても明渡しを受けるのが原告の合理的意思に合致
→質的一部認容として処分権主義に反しない - 立退料を支払う主張が全くない場合
→処分権主義には反しないが、弁論主義に反する
- 全部棄却よりは増額しても明渡しを受けるのが原告の合理的意思に合致
- 立退料の減額=申立て範囲をこえ処分権主義違反
- 一時金賠償請求に対する定期金賠償の判決
- 定期金賠償が明らかに不相当といえる事情がなければ、合理的
→質的一部認容として許される(A25)
- 定期金賠償が明らかに不相当といえる事情がなければ、合理的
77 消極的確認の訴えにおける申立事項
- 自認額を超えて存在する場合
- 残存額を超えては存在しない旨の判決をすべき(一部認容)
∵原告の合理的意思 - 単なる棄却は審理不尽の違法
- 残存額を超えては存在しない旨の判決をすべき(一部認容)
- 既判力
- 自認額を超える部分についてのみ及ぶ
→原則として自認額も争える - 信義則による主張制限
- 自認したことの自己責任
- 紛争解決に対する相手方の信頼
- 自認額を超える部分についてのみ及ぶ
78・79 既判力の時的限界
請求権 | 可否 | 理由 |
---|---|---|
取消 | × | 権利に付着する瑕疵 |
解除 | △ | 解除原因が被告により隠匿されていた場合は自己責任といえない |
相殺 | ○ | 別債権を犠牲にする=主張は実質敗訴 |
建物買取請求 | ○ | 内在的瑕疵ではなく別個の制度目的(建物・賃借人保護) 主張は実質敗訴 |
白地補充 | × | いつでも補充できた(A26) |
80 信義則による後訴の遮断
- 買戻し契約に基づく移転登記請求
→買収処分無効に基づく抹消登記請求に代わる移転登記請求 - 訴訟物が異なるため既判力に抵触しないが、信義則で遮断
- 実質的には前訴の蒸し返し
- 20年も経過してからの訴え
81 一部請求後の残部請求
- 明示の一部請求:訴訟物は明示部分のみ
→残部請求は既判力により遮断されない - 前訴で全部又は一部棄却
→残部請求は特段の事情がない限り信義則に反し不適法却下- 一部棄却=残部不存在との判断
→残部請求は実質的な紛争の蒸し返し - 被告にも紛争解決の合理的期待
- 一部棄却=残部不存在との判断
- 「特段の事情」
- 後遺症による損害拡大
- 費目限定型の損害賠償請求
→残部不存在との判断がなされたと言えない
82 標準時後の事情変更(後遺症)
- 既判力の根拠=手続保障を前提とした自己責任
- 基準時までに生じていた損害の賠償請求であることが明らか
→明示の一部請求論の援用
→後遺症損害の賠償請求は訴訟物を異にする- 明示の一部請求論の根拠
- 処分権主義
- 相手方の応訴負担配慮
- 後遺症損害の特性
- 事前に想定困難な一方、早急な損害填補の要請
- 明示の一部請求論の根拠
83 標準時後の事情変更(将来の損害)
- 通常損害と特別損害は同一訴訟物
- 明示の一部請求と同視しうる特段の事情がなければ後訴遮断
- バブルによる地価高騰
→前訴で立証不可能
→「特段の事情」認める
- バブルによる地価高騰
- 批判
- 算定基準が異なるだけで、「損害」の範囲は同じ
→一部請求と同視できない - 117条の類推適用で対処すべき
- 算定基準が異なるだけで、「損害」の範囲は同じ
84 争点効
- 争点効
- 意義
「前訴で当事者が主要な争点として争い、かつ、裁判所がこれを審理して下したその争点についての判断に生じる通用力で、同一の争点を主要な先決問題とした異別の後訴請求の審理において、その判断に反する主張立証を許さず、これと矛盾する判断を禁止する効力」 - 根拠
- 信義則
- 当事者の公平
- 要件
- 主要な争点となった事項についての判断
- その争点について主張立証を尽くした
- その争点について裁判所の実質的判断があった
- 前後両請求の係争利益がほぼ同等
- 当事者の援用
- 否定説
- 具体的に認められる場合が不明確
- 既判力の不文の拡張は訴訟の柔軟性を害する
- 信義則による主張制限で足りる
- 意義
- 事案
- 第一訴訟:Xの売買契約に基づく建物明渡請求認容(詐欺否定)
- 第二訴訟:Yの所有権に基づく抹消登記請求認容(詐欺認定)
- 判決
- 詐欺の成否・Yの所有権=理由中の判断→既判力なし
- 訴訟物も異なる→第二訴訟は第一訴訟の既判力に拘束されない
- 争点効は否定
85 限定承認の蒸し返し(既判力に準ずる効力)
- 原則:既判力=訴訟物の範囲
- 例外:留保付判決→既判力に準ずる効力
- 限定承認の存在・効力も審理判断される
- その結果が主文において明示される
- 引換給付判決との異同
- 審理がなされ、主文に明示される点は同じ
- 同時履行の抗弁:既判力なし
- 別個の訴訟物として訴求可
→密接関連性がなく既判力を及ぼす必要なし
- 別個の訴訟物として訴求可
- 建物買取請求
- 事後的な主張が許される
→同様に「既判力に準ずる効力」なし?
- 事後的な主張が許される
86 確定判決と損害賠償請求
- 原則
- 既判力に反し許されない
- 再審事由があれば再審で取消さないと不可
- 例外
- 類型
- 相手方の権利を害する意図のもとに相手方の訴訟手続関与を妨害
- 裁判所の欺罔等の不正行為により本来あるまじき内容の判決を取得
- 根拠
- 既判力=手続保障に基づく自己責任
- 類型1:手続保障の妨害
- 類型2:自己責任で肯定し得ない不正義
- 既判力=手続保障に基づく自己責任
- 類型
- 「隠れた再審」
- 肯定説
- 迂遠さを回避
- 再審事由があれば潜脱とはならない
- 否定説
- 理論的根拠不明
- 手続の潜脱
- 矛盾判決のおそれ
- 肯定説
87 口頭弁論終結後の承継人
- 「承継人」(建物収去土地明渡請求認容後の建物賃借人を含むか)
- 適格承継説(通説)
- 当事者適格を伝来的に取得した者
- 「紛争の主体たる地位」の承継説(判例)
- 115条1項3号の趣旨
- 権利関係の安定
- 前主の手続保障
- 前訴の訴訟物から派生した関係にあれば「承継人」に該当
- 115条1項3号の趣旨
- 適格承継説(通説)
- 実質説(判例)
- 固有の抗弁を有する者は、実質的に見て「承継人」に該当しない
- 既判力と執行力の主観的範囲が一致
- 形式説
- 「承継人」かは「紛争の主体たる地位」の移転で形式的に判断するが、既判力の拡張は前訴当事者間で争えなくなった事項に限る
- 115条2項は空文になる
- 単に前訴当事者のために登記名義人となっているにすぎない者
→115条1項4号類推により既判力及ぶ(A29) - 基準時後の保証・債務引受
免責的債務引受 | 併存的債務引受 | 保証 | |
---|---|---|---|
通説 | ○ | ○ | ○ |
有力説 | × | × | × |
伊藤説 | ○ | × | × |
88 債権者代位
- 代位債権者=法定訴訟担当→判決効は代位債務者に及ぶ
- 代位債権不存在=当事者適格欠缺→判決効は代位債務者に及ばない
89 法人格否認の法理
- 既判力・執行力
- 適用否定
∵手続の明確性・安定性
- 適用否定
- 第三者異議の訴え
- 適用肯定
∵実体法上の主張をする場面
- 適用肯定
- 適用肯定説:紛争解決機能の重視
90・91 反射効
- 反射効
- 意義
「当事者間の判決が、その訴訟物となった権利関係について実体法上従属関係にある他の者の権利関係を訴訟物とする訴訟に及ぼす効力」 - 既判力との違い
- 当事者の援用による
- 信義則に反する場合は効果が否定されうる
- 執行力を伴わない
- 訴訟の勝敗に影響されうる
- 判決理由中の判断にも生じうる
- 意義
- 肯定説
- 実体法との整合性
- 求償の循環を回避
- 否定説
- 判決効の拡張は明文にない限り慎重にすべき
- 求償の循環は個別の訴訟の結果として容認すべき(信義則での対応も可)
- 既判力拡張説(51年判決の判旨は明確に否定)
- 115条の趣旨・根拠から捉えるべき
- 判例
- 不真正連帯債務:判決効の拡張否定(53年)
- 保証債務:否定?(51年)
- 保証人敗訴確定後に主債務者勝訴→請求異議の事例
- 保証人に手続保障がなされていた点に注意
- 保証の場合の確定順序
- 主債務→保証債務:依存関係あり=反射効の問題
- 保証債務→主債務:依存関係なし=争点効+主観的拡張の問題
92 刑事上罰すべき他人の行為による訴えの取下げ
- 取下げ=訴訟行為
→手続の安定・明確を重視
→意思の瑕疵が直ちに効力を左右するものではない - 再審事由の訴訟内考慮説(旧通説・判例)
- 刑事上罰すべき他人の行為による場合は、
- 388条1項5号の法意に照らし取下げ無効を主張しうる
- 2項要件は不要
- 反対説
- 錯誤に妥当しない
- 私法規定適用説
- 取下げは手続が進行せず安定を害しない
- 当事者意思に基づく終了である以上、意思の瑕疵はその根拠を害する
- 2項要件を不要とするのは実質的な明文要件排除であり理論破綻
- 再訴禁止効
- 趣旨:判決を無駄にしたことへの制裁+濫訴防止
- 「同一の訴え」:当事者・訴訟物に加え訴えの利益・必要性も同一(A30)
94 訴訟上の和解と錯誤
- 和解の効力
- 既判力否定説
- 「主文」がなく範囲不明確となる
- 裁判所の十分な関与や上訴可能性がなく、既判力になじまない
- 制限的既判力説(判例?)
- 「判決と同一の効力」という文言
- 紛争解決機能の重視
- 無効・取消事由があれば既判力を否定しうる
- 訴訟終了効→手続安定を害しない
- 当事者の意思に基づく→意思の瑕疵はその根拠を害する
- いずれにしろ、実体法上の効力はある
- 既判力否定説
- 無効・取消しの主張方法
- 期日指定申立説:簡便だが審級の利益が薄い
- 新訴提起説:審級の利益はあるが応訴負担大きい
- 選択説:当事者の便宜からいずれも選択的にできるとすべき
96 通常共同訴訟人独立の原則(当然の補助参加)
- 共同訴訟人独立の原則(39条)
- 根拠:別個に提起可能な訴訟を便宜上同一手続で処理するものにすぎない
- 主張共通:否定
- 39条に正面から反する
- 証拠共通:肯定
- 自由心証主義→一つの事実に異なる認定をさせることは無理を強いる
- 反対証拠提出や分離申立により手続保障も十分
- 当然の補助参加:否定
- 補助参加を認める要件が不明確
- 訴訟の混乱・不意打ちになる
97 主観的追加的併合
- 否定説(判例)→新訴+併合申立で対応
- 明文がない
- かえって訴訟不経済となるおそれ
- 濫訴のおそれ
- 遅延のおそれ
- 肯定説
- 必要性+統一的判断から解釈で認める
- 訴訟不経済等は具体的な訴訟指揮で対応
- 主観的予備的併合:不適法(A31)
- 予備的被告の地位不安定
- 同時審判申出訴訟で対応
- 同時審判申出訴訟
- 趣旨:統一審理による両負けの防止
- 「法律上併存しえない」
- 一方における請求原因事実が他方における抗弁事実であるなど、主張レベルで請求が両立しない関係
- 事実上の非両立は不可
例)AかBが買主→事実上の択一関係にすぎず法律上はCもありうる
98 固有必要的共同訴訟の成否(入会権確認の訴え)
- 固有必要的共同訴訟の基準
- 実体法上の管理処分権(∵民事訴訟は実体上の権利関係を判断する制度)
- 紛争解決の実効性など訴訟法的観点(∵実効的な手続進行の要請)
- 入会権確認の訴え
- 入会権=構成員全員に総有的に帰属
→権利者全員が原告となるのが原則
→非同調者は被告に加えれば可- 提訴不能の回避(必要性)
- 合一確定は一応実現(許容性)
- 非同調者が訴訟物を争っていない場合
- 確認の利益なし?
- 必要性・許容性に差異なし→適法とすべき
- 入会権=構成員全員に総有的に帰属
99 固有必要的共同訴訟の成否(共同相続人の一人による訴え)
- 抹消登記請求
- 妨害排除のための抹消登記請求=保存行為
→単独で提訴可能 - 共有持分権に基づく構成も可
- 妨害排除のための抹消登記請求=保存行為
- 移転登記請求
- 原告の単独所有登記になるおそれ=処分行為
→固有必要的共同訴訟
- 原告の単独所有登記になるおそれ=処分行為
- 入会権(総有権)の場合:「保存行為」の理由は判例が否定
100 固有必要的共同訴訟の成否(共同相続人に対する訴え)
101 固有必要的共同訴訟の成否(遺産確認の訴え)
- 遺産確認=当該財産が現に遺産分割前の共有関係にあることの確認
→固有必要的共同訴訟 - 非同調者を被告に加えていいか?(百選98の射程内か)
- 百選98の要件としては射程に含みうる
- 確認の利益との関係でより考慮が必要
102 必要的共同訴訟と上訴
103 補助参加の利益
104 補助参加人に対する判決の効力
- 参加的効力
- ≠既判力(∵例外(46条各号)が多く画一的な既判力になじまない)
- 敗訴責任の公平な分担
- 敗訴時の参加人・被参加人間で生じる
- 理由中の判断も含めた判決の当否に関する主張制限
- 参加人の行為が45条で制限された場合は生じない
105 訴訟告知と参加的効力
- 訴訟告知の制度目的
- 被告知者に利益保護の機会を与える
- 参加的効力により告知者の利益を保護
- 訴訟告知の効力
- 53条4項→46条:文言上は参加的効力と同じ
- 主観的範囲
- 補助参加の利益があり
- 実体関係に基づき協同して訴訟追行することが期待できる者
∵手続保障
- 客観的範囲
- 「主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断」に限定
∵範囲の明確性 - 反対説:主要な間接事実(主要事実の判断と一体のもの)も含む
- 「主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断」に限定
- 共同訴訟的補助参加
- 元々判決効拡張の対象となっている者による補助参加
- 当事者適格がなく共同訴訟参加できない場合に利用
(例:遺言執行者の訴訟に相続人が参加する場合)
- 当事者適格がなく共同訴訟参加できない場合に利用
- 手続保障の強化→被参加人と抵触する行為も可能
- 元々判決効拡張の対象となっている者による補助参加
106 独立当事者参加の可否
- 参加要件
- 制度趣旨
- 三者間で争う権利関係を全員につき合一確定する
- 他人間の訴訟結果から生じる不利益を防止する
- 権利主張参加:請求が請求の趣旨レベルで非両立(∵既判力及ばなければ無駄)
- 二重譲渡事例での参加
- 否定説
- 請求両立(未登記ならいずれの譲受人にも登記移転請求権あり)
- 参加しても、判決後どちらが早く登記手続をするかの勝負になる
- 肯定説
- 請求の趣旨段階は非両立(登記移転で自己への登記移転不能となる)
- 審理の結果として両立し得たとしても、参加を認める必要あり
- 本件の特徴
- 参加人は仮登記済=先に登記移転されても優先される
→肯定説に立っても参加を認める必要がない場合
- 参加人は仮登記済=先に登記移転されても優先される
- 否定説
- 制度趣旨
- 要件不充足
- 参加人の便宜・合理的意思
→新訴提起として扱う
- 参加人の便宜・合理的意思
107 独立当事者参加における敗訴者の一人におる上訴
- 移審
- 合一確定の要請→全請求が移審
- 上訴しない敗訴当事者:「控訴審当事者」としておけば足りる
- 三面訴訟性→二面訴訟的地位に当てはめるのは不自然
- 合一確定の要請から不利益変更容認→どちらとしても差異は生じない
- 不利益変更禁止原則
- 合一確定に必要な限度で不利益変更禁止原則を緩和
108 独立当事者参加訴訟におけるに当事者間での和解
- 和解
- 判例:無効
- 三者間での合一確定の目的に反する
- 有力説:他の当事者に不利益でなければ有効
- 私法上の和解の効力として主張されれば否定できない
- 判例:無効
- 取下げ
- 原告の取下げ:参加人の同意も必要(261条2項)
- 訴求消滅効→参加人の合一確定による利益保護
- 参加人の取下げ:原被告双方の同意必要
- 結果:残った2請求の通常共同訴訟となる
- 原告の取下げ:参加人の同意も必要(261条2項)
- 訴訟脱退
- 参加人に判決効及ぶ(48条)→参加人の同意不要
- 効果:条件付放棄・認諾
109 引受承継人の範囲
- 手続
- 引受承継
- 50条3項・41条→同時審判申出訴訟の準用
- 50条1項→決定
- 参加承継
- 51条・47条・40条→独立当事者参加→必要的共同訴訟の準用
- 訴え提起と見る→判決
- 引受承継
- 「承継」
- 「紛争の主体たる地位」の移転で判断
- 実体的観点+訴訟法的観点
- 実体的義務の共通
- 訴訟資料の共通
- 承継させても手続保障を害しない(主張立証が尽くされている)
- 効果
- 通説:前主の訴訟上の地位を全て引き継ぐ(通説)
- 係争中の権利関係に自ら関与した以上前主の行為による不利益も甘受すべき
- 有力説:前主の攻撃防御が不十分なら拘束されない(∵手続保障)
- 通説:前主の訴訟上の地位を全て引き継ぐ(通説)
- その他の問題
- 社員権の相続(A37)
- 共益権:自益権と密接不可分→相続性あり
- 訴訟物に相続性があれば訴訟承継可
- 前主による引受申立て:否定(A38)
- 譲受人はいつでも自ら訴訟参加できる
- 訴訟を離れたければ原告は取下げ・放棄をすればいい
- 社員権の相続(A37)
110 上訴の利益
111 不服の限度(請求の予備的併合)
- 上訴不可分の原則→主位的請求も移審
- 審判対象
- 判例・通説:主位的請求は審判対象とならない
- 不利益変更禁止の原則
- 有力説:上訴なくとも主位的請求が審判対象となる
- 両請求の一体性
- 勝訴した原告に上訴を求めるのは酷
- 相手方にとってはいずれも敗訴であり不利益変更とならない
- 判例・通説:主位的請求は審判対象とならない
112・113 不利益変更の禁止(相殺の抗弁)
114 経験則違反と上告・上告受理申立て
- 事実認定は経験則を適切に行わねばならない(自由心証主義の内在的制約)
- 事実認定における経験則違反
→上告理由・上告受理申立理由・破棄理由となる
115 破棄判決の拘束力
- 破棄理由に限り差戻審を拘束
- 裁判官の独立→差戻審への指揮権なし
- 裁判空転のおそれ→拘束の必要性
116 再審事由と補充性
- 送達無効→338条1項3号に該当
- 不実の公示送達には射程及ばない(∵元々手続保障が弱い)
- 再審=例外的な不服申立て
→上訴可能であるのにしなかった者まで保護しない
→再審事由を現実に了知していなければ上訴可能とはいえない
117 再審の原告適格
- 再審=重大な瑕疵がある場合に、法的安定を害してでも判決を取消す制度
→判決効の不利益を免れさせることが目的
→既判力の及ぶ「承継人」(115条)は原告たりうる