日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

一番楽な案件

弁護士が受ける仕事の中で、一番楽な仕事は何かと言えば、やはり時効完成債務の処理だと思います。

時効債務処理のどこが楽か

時効債務の処理の何がそんなに良いかと言うと、労力が小さい、リスクが小さい、報酬もそこそこ高いの三拍子が揃っているところです。

労力が小さい

時効債務の処理は、以下の2ステップでほぼ終了です。どちらも、本来誰にでもできることです。

  1. 取引履歴を取得する
  2. 時効援用の内容証明郵便を送る

内容証明郵便の文面も、基本的な部分は全て使い回せるので、事案固有の要素を検討する必要がほぼありません。

リスクが小さい

時効債務の処理で問題になるのは、時効中断事由があるかないか、ただそれだけです。

時効中断事由がなければそのまま処理できますし、時効中断事由があったとしても、それは弁護士が関与する以前の問題なので、言ってしまえば依頼者自身の責任です。時効援用したら中断事由がありました、じゃあ任意整理に移行しましょうとなるだけで、時効援用の主張自体が不利益になることはありません。

弁護過誤のおそれがないということは、それだけで精神的に非常に楽です。

報酬もそこそこ高い

弁護士報酬も自由化されて久しいので、報酬体系は様々でしょうが、「債務整理」という枠で契約する場合、時効消滅した債務額に応じて成果報酬が定まる料金体系も多いと思います。時効が完成しているような債務は、遅延損害金で額面が膨れ上がっていたりするので、無事時効消滅となれば、成果報酬も大きくなります。

仮にそれほど高い報酬にならなくても、労力の小ささから考えれば、コスパは非常に高いと言えます。

時効債務の処理だけで食っていけるか

結論から言えば可能でしょう。この世からサラ金が消えることはないでしょうし、時効にかかる債務も次々と生まれていくはずなので、おそらく時効完成債務の処理という業務が消えることはないでしょう。

したがって、時効債務の処理を専門にしてやっていくことは可能だと思いますし、実際そうやって稼いでいる事務所はたくさんあるようです。ただ、そういう経営が楽かというと、そうでもないと思います。コスパが良いとは言え個々の案件は金額が小さかったりするので、しっかり稼ぐためには数を多く処理する必要があります。

時効債務の処理は、そういった大量処理も可能な類型ですが、そうは言っても、それだけの依頼者を確保するのは大変だと思います。

個々の案件が楽だからといって、それだけで食っていくのが楽とは限らないということです。