刑法事例演習教材07「男の恨みは夜の闇より深く」
受験生時代に作成した、刑法事例演習教材(初版)設問の回答例。
【※判例の見解に沿って起案】
第1 甲の罪責
1 Aへの暴行について
(1) 甲は乙と共にAに暴行を加え打撲傷を負わせているから、Aに対する傷害罪の共同正犯(刑法(以下省略)204条、60条)が成立しないか。
(2) 「傷害」の有無
「傷害」したとは、不法な有形力の行使により人の生理的機能に障害を生じさせることをいう。
甲は乙と共同してAに対し、乙が後から押さえつけ、甲が顔面を強打するという不法な有形力の行使をしている。これによりAは側頭部に加療4週間程度を要する頭部打撲傷という生理的機能の障害を生じさせているから「傷害」したといえる。
(3) 共同正犯の成否
共犯の処罰根拠は、他人の行為を介して結果に対し因果性を有する点にある。
甲と乙は一緒にAを殴打することを共謀し、傷害の実行行為を分担しているから、Aの傷害結果に対し心理的・物理的因果性を有している。
よって、傷害罪の共同正犯が成立する。
2 ハンドバッグを持ち去った行為について
(1) 強盗罪の成否
甲は乙と共に行った暴行によりAが気を失っている状況で、Aのハンドバッグを持ち去っていることから、強盗罪(236条)が成立しないか。
強盗罪は暴行脅迫を手段として財物を奪取するという犯罪類型であり、暴行を「用いて」と定めていることから、同罪の「暴行」は財物奪取の手段としての暴行と解する。
甲はAに対する暴行が終了した後にハンドバッグを持ち去る意思を生じていることから、手段としての暴行といえない。
よって、強盗罪は成立しない。
(2) 窃盗罪の成否
では、窃盗罪(235条)が成立するか。以下要件を検討する。
ア 実行行為
「窃取」とは占有者の意思に反し財物の占有を移転する行為をいう。そして、本罪の占有とは、財物に対する事実上の支配関係をいう。
甲が乙と共にAのハンドバッグを持ち去った時点で、Aは気絶している。しかし、意識を失ったからと言って物に対する支配力を失うのは不合理であるから、Aのハンドバッグについても、なおAの占有が及ぶと解する。これを無断で持ち去ることはAの意思に反する行為であるから、「窃取」といえる。
以上より、Aという「他人の」ハンドバッグという「財物」を「窃取」したといえ、窃盗罪の実行行為に当たる。
イ 故意
故意とは、犯罪事実の認識・予見のことをいう。甲はAが死んでいると誤信していることから、甲には占有侵害の認識がなく、故意が認められないのではないか。死者の占有が認められるかが問題となる。
死者には財物の支配が観念できないことから、占有は認められないのが原則である。しかし、被害者が生前有した占有は、死に至らしめた犯人に対する関係では、死亡直後においてなお継続して保護するのが法の目的に適うと解する。
甲の認識は、Aを殺害し、直後にAのハンドバッグを持ち去るというものであるから、甲との関係でAの占有は保護される。そして占有を侵害するという認識がある以上、窃盗罪の故意が認められる。
ウ 不法領得の意思
窃盗罪と器物損壊罪等との区別の必要性から、故意以外の主観的要件として不法領得の意思が必要と解する。その内容は、一時拝借のような軽微な法益侵害は可罰的違法性が認められないことから、ある程度終局的に本権者を排除する意思と、器物損壊罪との区別のため財物の経済的用法に従い利用処分する意思と解する。
甲は、ハンドバッグを焼却処分しようとしている。これは財物の経済的用法に従った処分ではない。よって、不法領得の意思は認められない。
エ よって、窃盗罪は成立しない。
(3) 器物損壊罪の成否
ア では、器物損壊罪(261条)が成立するか。
イ ハンドバッグは、258条ないし260条の客体ではない「物」にあたる。そしてAという「他人の」物である。
ウ 「損壊」とは、物の効用を侵害する一切の行為をいう。ハンドバッグを持ち去る行為は、所有者の使用収益を排し、その効用を侵害する行為であるから、「損壊」といえる。
エ よって、甲にAに対する器物損壊罪が成立する。
(4) 共犯関係
後述のとおり、乙に窃盗罪が成立する。共同正犯は特定の犯罪を複数人が共同して実行するものであるから、異なる罪名について共同正犯は成立しないと解する。もっとも、構成要件が異なっていても、両者の保護法益と行為態様が同質的で重なり合う限度で共同正犯が成立すると解する。器物損壊罪の保護法益は所有権であり、窃盗罪保護法益である平穏な占有と異なっている。しかし、窃盗罪が占有を保護しているのは、究極的には所有権を保護することを目的とすると解する。とすれば、保護法益は所有権の範囲で重なり合うといえる。そして、所有権者の使用収益を物理的に侵害するという点で行為態様も重なりあうため、器物損壊罪の限度で共同正犯が成立する。
3 Bへの暴行について
乙が甲と「共同」してBに対し顔面や腹部を殴打するなどの不法な有形力を行使し、加療3週間程度の打撲傷という生理的機能を障害するという「傷害」をしている。よって、傷害罪の共同正犯が成立する。
同行為は甲乙が逃走するために行われたものである。しかし、甲に窃盗罪が成立していない以上「窃盗」にあたらないので、事後強盗(238条)は成立しない。
第2 乙の罪責
1 Aへの暴行について
乙は甲と「共同」して、Aを「傷害」したといえる。よって傷害罪の共同正犯が成立する。
2 ハンドバッグを持ち去った行為について
(1) 乙が甲と共にAのハンドバッグを持ち去った行為につき、甲と同様に強盗罪は成立しない。では、窃盗罪が成立するか。
(2) 実行行為と故意
乙には甲と同様に窃盗罪の実行行為をしたといえる。
また、乙の認識は甲と同様にAを殺害し、直後にAのハンドバッグを持ち去るというというものであり、窃盗罪の故意が認められる。
(3) 不法領得の意思
乙は甲と異なりAのハンドバッグを質屋で換金しようと考えている。これは、本権者であるAを排除し財物の経済的用法に従い利用処分する意思といえる。よって、不法領得の意思が認められる。
(4) よって、窃盗罪が成立し、器物損壊罪の限度で甲との共同正犯となる。
3 Bへの暴行について
(1) 甲乙が共同してBを「傷害」した行為につき、傷害罪の共同正犯が成立する。
(2) 事後強盗の成否
では、事後強盗が成立するか。
乙にはAに対する窃盗罪が成立することから、「窃盗」といえる。
事後強盗も強盗であるから、「暴行」は強盗罪の場合と同様に相手の犯行を抑圧するに足りる暴行であることが必要と解する。甲は乙と共にBの顔面や胸部を殴打し、地面に倒れ込む程の暴行を加えていることから、反抗を抑圧するに足りる「暴行」といえる。
この暴行は甲乙が逃走し「逮捕を免れる」ために行われている。暴行は、逮捕を免れるためであれば、窃盗の被害者に対するものに限られない。
よって、事後強盗が成立する。Aへの窃盗罪および傷害罪の共同正犯は事後強盗に吸収される。
第3 結論
1 甲の罪責
Aに対する傷害罪の共同正犯および器物損壊罪の共同正犯、Bに対する傷害罪の共同正犯が成立し、併合罪(45条前段)となる。
2 乙の罪責
Aに対する傷害罪の共同正犯およびBに対する事後強盗罪が成立し器物損壊罪の限度で共同正犯となる。併合罪となる。
事務職員能力認定試験 第11回解説(問1~4)
問1
訴状には,当事者の記載が必要(民訴法133条2項1号)。
当事者の記載とは,その人物を特定するために必要な情報。通常は氏名と住所を記載し,住所不明なら居所,居所も不明なら住居所不明とする。
- 住所=「生活の本拠」(民法22条)
- 居所=生活の本拠ではない,一時的あるいは仮の居住場所
設問では係争建物を「生活の本拠」としているので,「住所」は原則として係争建物であり,3,4は誤り。
被告の特定という観点からは,証拠により氏名等との一致を確認できる住民票上の住所もあった方が望ましい。よって1が適切。2も誤りとまでは言えないが,契約書と住民票という証拠で被告を特定しようとしている設問の場合には,1の方が適切。
問2
請求の趣旨は,判決の主文で述べてほしい内容を記載する。執行の邪魔にならないよう,余計なことは一切書かず,結論のみ記載する。
離婚の場合は,判決で離婚が成立し,被告に何かをさせるわけではないので,命令文にならない。
- 「被告は原告に対し金~円及びこれに対する~から支払い済みまで年~の割合による金員を支払え」
- 「被告は原告に対し~を明渡せ」
- 「原告と被告とを離婚する」
登記請求は,「被告の登記手続意思を擬制する」ことを求める請求で,執行(強制的に何かをさせる)の余地はないとされる。よって4は正しい。
仮執行宣言とは,判決後,確定までに財産が散逸するのを防止するため,仮に強制執行をかけられるようにすること。
なお,離婚の慰謝料・財産分与についても,仮執行宣言は付けられない。その理由は,性質上,離婚が確定して初めて具体化する(実際に発生する)権利だから。
問3
- 正)第一審は,書面で合意していればどこでもOK(民訴法11条1,2項)。
- 誤)人事訴訟以外は,原則として被告の住所地に管轄がある(民訴法4条2項)。
- 正)訴訟物の価額が140万円以下の場合は簡易裁判所,それを超えるなら地方裁判所が管轄する。ただし,不動産に関する訴訟については,140万円以下でも地方裁判所に管轄がある。設問は建物明渡請求訴訟であり,不動産に関する訴訟。
- 正)不動産に関する訴訟は,係争不動産の所在地にも管轄がある。
訴額
- 140万円以下:簡裁
- 140万円超:地裁
- 不動産に関する訴訟:どっちでも
問4
- 訴訟物=原告が請求する権利・法律関係
- 訴額=訴訟物を金銭評価した時の価額
- 原則:複数の請求がある場合は,原則として訴額を合算する(民訴法9条1項)。
- 吸収関係:利益が共通している場合は,多い方を訴額とする(同上)。
- 附帯請求:同一請求の中で,主たる請求を発生原因として生じた部分(果実,損害金,違約金等)は算入しない(民訴法9条2項)。
※「果実」は,物から産み出される利益。文字通りの果実(天然果実)も含むが,家賃や利息といった「法定果実」を意味することが多い。
以上を前提にすると,以下のとおりとなる。
- 正)賃料は,建物という物から発生する使用利益(果実)であるから,その請求は,物自体の返還を求める建物明渡請求に対する附帯請求となる。
- 誤)離婚とともに求める財産分与は,附帯処分(人訴法32条)となり,分与額は訴額計算に含めない。なお,慰謝料請求は附帯処分に該当せず,吸収関係になる。
- 正)貸金返還請求における利息・遅延損害金は,附帯請求なので算入しない。
- 正)価額の算定ができない(非財産権上の請求)か,「極めて困難」な場合は,「140万円を超えるものとみなす」(民訴法8条2項)。具体的には,「160万円とみなす」(民訴費用法4条2項)。
2020年の手帳と卓上カレンダー購入
今年も前年と同じ、高橋のフェルテ6とE154を購入しました。
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フェルテ6は、装丁が今までの黒から、くすんだネイビーに変更されてしまい、非常に残念です。
しかし、手帳という手帳を探しましたが、週間バーチカルタイプでこれより自分の希望に合致している商品はなかったので、やむなく継続購入しました。
今年は、購入者アンケートのハガキに装丁の不満を書いて送ることにします。
性犯罪の暴行脅迫要件の話
論点は2つ
暴行脅迫の要件を問題視する場合、以下の2つの論点があります。
- 暴行脅迫を要件とすること自体の問題
- 暴行脅迫の程度の問題
分かりにくいかもしれませんが、これらは全く異なる問題であり、どちらの話をしているのか明確にしないと、およそ議論になりません。Twitterでは、140文字という制限でぶつ切りにされてしまうため、しばしば論点が交錯しているように思われます。
暴行脅迫要件の存在自体について
なぜこんな要件があるのか?
強制性交等罪を含む性犯罪の保護法益(刑罰によって保護しようとしている利益)は、「人の性的自由」と考えられています。つまり、「意思に反する性的行為を罰する」という趣旨で刑罰が定められています。
しかし、それならば、同意のない場合は全て処罰の対象となるはずであり、「暴行又は脅迫を用いて」という手段の限定は不要ではないか、という疑問が生じます。
その答えは、端的に言うと、「同意の有無は第三者には判断しにくいから」ということになります。処罰対象を明確にするためには、客観的な事情を要件とすべきであるという考え方です。13歳未満の者への性的行為は暴行脅迫を用いなくても犯罪となりますが、これも、本人の意思に反するかどうかではなく、年齢という客観的事情で処罰範囲を明確化している例です。
日本の刑法を含むドイツ語法圏では、このような考え方が一般的である一方、英米法では、意思に反する性的行為をそれ自体処罰の対象とする立場もあります。
処罰を妨げているか?
暴行脅迫要件があると、「意思に反した性的行為なのに処罰されない」ということが起こり得るのではないか、というのが、よく見られる議論です。
この点については、以下のような評価がなされており、実際非常に緩く解されているので、一般的な類型においては、この要件によって処罰が妨げられるおそれは少ないと思われます。
「暴行・脅迫それ自体の手段としての限定性は大きく失われており、被害者が抵抗することが著しく困難な状況にあるか否か、あるいは、被害者が性的行為に応じざるを得ない状況にあるか否かが実質的な判断枠組みになっている。」(法学教室427号38頁)
ただし、暴行脅迫があるとは到底言えない場合でも、特殊な環境や関係性から自己決定権を奪われる場合もあります。これを手当てするために監護者性交等罪が新設されましたが、それ以外に処罰すべき場合がないかどうかは、常に検討が必要でしょう。
暴行脅迫要件を廃止してはいけないのか?
暴行脅迫要件の廃止については両論あり、制度的にはいずれもあり得ます。しかし、日本で暴行脅迫要件を廃止しようと思えば問題も生じるため、拙速に廃止すべきではありません。
問題1:要件の明確性
第1に、処罰範囲の明確性が問題となります。不同意認定の判断基準を暴行脅迫に限る必然性はないと思いますが、「諸事情から判断する」というだけでは、条文上は「性的行為は処罰する」となっているのと同じになってしまいます。
たとえば、「疲れていてセックスしたくないのに妻から求められてやむを得ず応じた」という場合に、妻に強制性交等罪が成立するのかしないのか。成立しないとしたら何故か。その区別基準を明確にしないと、夫婦は毎夜セックス同意書を相互に作成・保管し合うことになります。
既に不同意のみを要件としている国・地域でも、証拠と推定の規定など、訴訟法的な要素も含めてかなり詳細な規定を置いていたり(イギリス法)、「被害者の態度を表す文言は用いられず、徹底して行為の客観的要素に注目した類型化が行われ」ている(ミシガン州法)ようです*1。日本でも、何らかの形での要件の明確化を行う必要があるでしょう。
なお、明確な客観基準を廃止すれば、不同意の判断は難しくなります。となれば、裁判では、より微妙な事実認定となるので、おそらく無罪率は高くなるでしょう。無罪率が高まること自体は何ら悪いことではありませんが、暴行脅迫要件廃止論者の一部にとっては、不愉快な結果かもしれません。
暴行脅迫の程度について
なぜ「反抗を著しく困難にする程度」が必要なのか?
性犯罪における暴行脅迫は、「相手の反抗を著しく困難にする程度」の強度が必要と解釈されています。元々、性犯罪の暴行脅迫の程度については、以下のように見解が分かれていました*2。
昭和24年5月10日の最高裁判決は、1説を前提とした弁護人の主張に対して、2説を採用することを明らかにしました。厳しい要件を課したというよりは、より緩やかに解釈して良いと示したことになります。
では、そもそも何故こうした「程度論」が出てくるのかと言えば、「不同意であることを客観的に判断するため」と考えられます。
人の内心が目に見えない以上、同意があるかどうかは、客観的事情から判断せざるを得ません。その「事情」が暴行脅迫要件であることは既に述べました。しかし、人によって意思決定の強さは様々なので、「普通の人は意思決定の自由が奪われる」と言えるような「程度」の暴行脅迫に限る必要があるのです。
実際の判断方法
この「程度論」は、実際の判断では以下のように解されています。
「その暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度には達しないと認められるような者であっても、その相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何とあいまって相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りる」(最判昭和33年6月6日・刑集23巻8号1068頁)
こうした解釈から、「手をつなぐ」「覆いかぶさる」という、性行為に通常伴うような行為についても、強姦罪(当時)の暴行を肯定したものもあるようです*3。
そうなってくると、要は「相手方が抵抗困難だったか」の総合判断でしかなく、暴行脅迫自体の程度や、被害者の実際の抵抗の有無等は、判断要素の一つに過ぎないということになります。
立場や状況的に、「抵抗したら何をされるか分からない」と考えることが合理的だと認定できれば、全く無抵抗でも暴行脅迫要件は充足できるので、監護者の影響力などの非典型事例を除けば、さほど処罰の妨げにはならないのではないかと思われます。
「著しく」は必要か?
強盗罪と恐喝罪の違いは、暴行脅迫の程度の差と解されています。性犯罪についても、同様に「著しくではないが抵抗困難」な場合を処罰すべきとの考え方は、個人的には十分あり得ると考えます。
ただ、法定刑が「5年以上の懲役」という重罪である強制性交等罪について、単純に程度論の緩和をすることは、罪刑均衡を害し妥当ではありません。立法論としては、強盗罪に対する恐喝罪のような別罪を用意するか、強制性交等罪の法定刑の下限を引き下げることになるでしょう。
暴行脅迫要件の存否との関係
既に述べたように、反抗が著しく困難だったかどうかは、同意の有無を客観的に判断するための要素です。したがって、仮に暴行脅迫要件自体がなくなったとしても、同意の有無を実質的に判断しようと思えば、反抗困難性は判断要素としては残ると思われます。
既に述べたとおり程度の問題はありますが、「拒否できるけどしない」ことが同意を推認させることは、否定しようのない経験則だろうと思います。
まとめ
暴行脅迫要件を廃止することも、暴行脅迫の程度を緩和することも、立法論としては十分検討の余地があります。
しかし、そのためには慎重な調査・検討が不可欠です。現在、解釈で相当柔軟に対処しているので、それを敢えて変える必要まであるかは疑問です。
現行法で処罰から漏れてしまうケースについては、監護者性交等罪のように、それだけを個別に問題とすればよいのではないかと思います。
司法試験の勉強:国際私法の基礎3/3(財産法)
自然人
人の行為能力
失踪・後見
- 連結点でなく管轄権としての規定
- 住所or国籍が日本にあれば日本法で審判・宣告
- 効力:世界中に及ぶとして扱う
- 6条2項:適用範囲拡大→問題になる法律関係についてのみ効力
- 不在者の財産が日本にある
- 不在者に関する法律関係が日本法によるべきとき
- その他日本に関係のある法律関係
- 35条:本国法主義
- 2項2号:5条と整合→日本法
法人・代理
法人
契約
契約準拠法の指定及び分割指定
7条:当事者自治
- 根拠=契約の多様性(客観的連結点での最密接関係地探究は困難)
- 黙示の意思:仮定的意思でなく当事者の現実の意思のみ探究
- 当事者自治の修正
- 準拠法選択行為自体の有効性
- 国際私法自体から判断→具体的基準なし
- 選択した準拠法による→順序逆転、強迫等につき無意味となるおそれ
- 選択準拠法によりつつ、一定の場合は通則法8条による(道垣内)
- 実質法的指定:実質法を契約内容に取り込む
- 準拠法指定との区別は契約上の意思解釈
8条:当事者の意思不明の場合
- 1項:最密接関係地法
- 2項:特徴的給付の理論=特徴的給付を行う側の常居所地・営業所所在地を最密接関係地と推定する
- 3項:不動産については不動産所在地と推定
客観的連結
特徴的給付の理論
契約関係の重心が職業的行為を引き受ける者の側にある
→その者の事業所所在地を最密接関係地とする
- 特徴的給付
- 片務契約:唯一の義務を負う者の給付
- 双務契約:金銭給付の反対給付
- 特徴的給付が不明の場合
- 8条2項は推定規定→無理に認定する必要なし
労働契約・消費者契約
消費者契約
定義(11条1項)
- 一方当事者が個人(自然人)
- その個人は事業として又は事業のために契約の当事者となる場合でない
- 相手方が事業者
- 上記当事者間で締結される契約
- 労働契約でない
準拠法(成立・効力)
- 1項:選択法あり→消費者の常居所地法の強行規定を援用可(累積適用)
- 2項:選択法なし→消費者の常居所地法
- 6項:適用除外
- 能動的消費者(ただし勧誘されて赴いた場合除く)
- 事業者の事業所で債務全部履行(ただし勧誘されて赴いた場合除く)
- 事業者が消費者の常居所を知らず、知らないことに相当の理由あり
- 事業者が相手方を消費者でないと誤認し、そのことに相当の理由あり
法律行為の方式
- 連結政策:選択的連結
- 10条1項:成立及び効力の準拠法による
- 10条2項:行為地法に適合する方式有効
∵「場所は行為を支配する」
- 10条3項:意思表示→通知の発信地を行為地とする
- 10条4項:申込と承諾
- 申込発信地or承諾発信地
- 申込と承諾はセットで一方の地の法に適合する必要
- 10条5項:物権→適用除外(∵目的物所在地法の密接関連性)
法定債権
生産物責任、名誉・信用毀損
- 18条:生産物責任
- 被害者が生産物の引渡しを受けた地の法
- ただしその地での引渡しが通常予見できない場合は生産業者の主たる事業所所在地法
- 19条:名誉・信用毀損
- 被害者の常居所地法
- いずれも20~22条の適用あり
債権譲渡
債権譲渡:明文なし
- 譲渡対象債権の準拠法(通説・判例):準物権行為として原因行為と区別
- 三当事者間で統一的に判断可能
- 債務者保護に資する
- 比較法的に一般的ではない
- 準拠法が統一的でない
- 債権譲渡契約の準拠法:準物権行為としないor債権流通の円滑化
- 多数債権・将来債権について解決が容易
- 債務者保護に欠ける
- 23条等と統一的でなくなる
23条=債権譲渡の対第三者・債務者効
- 債権質、相殺、債権者代位でもこれと統一的に解釈する必要
債務引受
- 譲渡対象債権の準拠法:債権者保護の要請
相殺
- 譲渡対象債権と自働債権の準拠法を累積適用(通説):両方の運命
- 受働債権準拠法(有力説):反対債権による弁済、自働債権の価値の低さ
債権者代位
司法試験の勉強:国際私法の基礎2/3(家族法)
婚姻
実質的成立要件(24条1項)
- 配分的連結:両当事者の対等+婚姻成立の困難回避(累積的連結の緩和)
- 一方的要件:当事者の一方についてのみ問題となる(例:婚姻適齢)
- 双方的要件:当事者の両方について問題となる(例:近親婚禁止)
- 批判:解釈の限界を超えており、双方の累積的適用と解するべき(道垣内)
- 要件欠缺の場合:双方の本国法により、より成立に遠い方優先(無効>取消)
形式的成立要件(24条2項、3項)
- 選択的連結:婚姻の社会的公益性→地域によって多様かつ厳格な形式の要求が想定される
- 婚姻挙行地法主義(2項):「場所は行為を支配する」→双方に共通という利点
- 日本人条項(3項):成立の困難回避、34条との権衡、実質的要件との調和から、原則を緩和+戸籍への迅速な反映
- 領事婚(民741条):外国の日本人同士は領事への届出で婚姻成立
身分的効力(25条)
- 段階的連結:慎重に最密接関係地法を探究
財産的効力(26条2項、3項、4項)
- 2項:当事者自治
- 財産法的側面
- 段階的連結や変更主義で準拠法への予見性が低下
- 26条3項・4項:内国取引保護
- 善意:外国法適用による不測の損害を防止
- 善意の対象:外国法適用について(法の不知は救済しない)
- 夫婦財産契約に限定(法定財産制の登記は実質上無理)
- 善意:外国法適用による不測の損害を防止
離婚
離婚の方法(27条)
- 段階的連結(25条準用+日本人条項)
- 25条準用:最密接関係地については直近の婚姻生活地が重要(夫婦共通だから)
- 日本人条項:日本に常居所を置く日本人は日本の戸籍窓口に離婚届を提出する可能性大→円滑に受理できるように日本法を準拠法とする
- 実際問題上も、最密接関係地が日本になる場合が多い
- ただしそうでない場合もあるので常居所の認定は慎重に
日本民法上の離婚
- 協議離婚(763条)
- 764条→739条:届出離婚
- 裁判離婚(770条)
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続し難い重大な事由
手続問題:手続は法廷地法に従う→適応問題
- 準拠法が裁判離婚主義
- 判例:調停・審判離婚(家事審判法17条・24条)も可
- 学説:協議離婚の一種だから不可
- 手続の欠缺
- 例:カウンセリング
- 家裁の手続上可及的に準拠法手続に配慮するしかない
- 不出頭:当事者意思の調査?
- 国会の関与を要件とする:家裁の手続上配慮するしかない
法性決定
外国離婚判決の承認(民訴118条)
- 旧通説
- 離婚については他の判決と区別(∵形成判決による実体法的効力)
- 準拠法要件(日本の国際私法で指定される準拠法によっていなければ承認しない)を求める
- 相互保証要件(4号)は不適用
- 現在
- 準拠法要件は別として、性質上可能な限り類推適用
- 相互保証要件も適用(櫻田:性質上適用の余地なし)
実親子関係
嫡出親子関係の成立(28条)
- 選択的連結:できるだけ嫡出子とする趣旨
- 嫡出否認の問題も包含
- 嫡出否認についても両方で否認される必要
- 不変更主義:「子の出生の当時」
- 生殖補助医療の問題
- 準拠法アプローチ
- 道垣内:適応問題として処理するが、公序発動の可能性
- 外国判決承認(民訴118条)アプローチ
- 養子縁組類似→承認には準拠法要件を加えるべき
- 準拠法アプローチ
非嫡出親子関係の成立(29条)
連結政策
- 1項:子の出生時における夫婦の各本国法
- 配分的連結
- 2項:認知時における認知者or子の本国法
- 選択的連結:できるだけ認知を認める趣旨
- 1項後段・2項後段=セーフガード条項
- 3項:出生時に父が死んでいれば死亡時の本国法
- 生殖医療問題で母が死んでいれば、3項類推適用
適用順
- 28条→29条の順に適用
- 嫡出親子関係が不成立の場合に非嫡出親子関係を判断
- 28条の準拠法が嫡出・非嫡出を区別しない→29条に持ち込む
認知の方式
34条による
準正(30条)
- 選択的連結:準正要件完成時における父or母or子の本国法
- 適用順:29条→30条
- 親子であり、かつ非嫡出親子関係であることが前提
養親子関係
連結政策
- 31条1項:養親の本国法
- 養親子の生活が養親を中心に営まれることが多い
- 養子縁組により子が養親の国籍を取得する場合が多い
- セーフガード条項:養子の本国法上の付加要件
- 31条2項:1項と同じ準拠法
- 断絶型の養子縁組が簡単に離縁されないように、縁組と離縁の準拠法を一致させる
公的機関の関与
- 分解理論
- 実質的成立要件:家裁の許可審判で代替
- 形式的成立要件:行為地法として届出で充足
- 特別養子縁組制度で家裁が代行
- 道垣内:家事審判法9条2項準用(手続は法廷地法→家裁手続しかありえない)
夫婦共同養子縁組
- 夫婦それぞれとの関係を別個に判断
- 一方が夫婦共同縁組のみ許す場合、双方で養子縁組要件を満たす必要
効力
- 養子縁組の効力:効力も31条
- 実方血族との親族関係終了:養子縁組の効力として31条
親子間の法律関係
連結政策
- 32条:子と父母いずれかの同一本国法→この常居所地法(段階的連結)
- 最密接関係地なし∵戸籍実務上の便宜
法律問題
- 親権・監護権の帰属、分配、内容、消滅
- 子の氏
- 親子間の扶養義務
相続・遺言
相続
実質法上の対立
抵触法上の対立
- 相続統一主義
- 一つの法が相続全体を規律
- 長所
- 相続人にとって相続の処理が予見しやすい
- 短所
- 国外財産を組み込めない場合がある(実効性に難)
- 財産所在地の利害関係人に不便
- 相続分割主義
- 動産=被相続人の住所地法、不動産=財産の所在地法
- 長所
- 財産の利害関係人にとって便利
- 短所
- 財産の分散により処理が複雑化する
- 住所の決定が国によって異なる可能性がある
遺言
- 37条1項
- 遺言の成立・効力
- 意思表示の瑕疵
- 遺言の効力発生時期・要件
- 検認→実質的成立要件の場合は37条1項
- 遺言の成立・効力
- 37条2項:遺言の取消
- 有効に成立した遺言の撤回の問題
扶養
扶養義務の準拠法に関する法律
単位法律関係
- 親族扶養
- 1条:「夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務」
- 通則法は43条1項でこの範囲を適用除外とする
- 通則法39条だけは適用(「その常居所が知れないときは、その居所地法による」)
- 親族関係の存否は通則法24~33条で判断(先決問題)
- その他→それぞれの通則法上の準拠法による
連結政策
- 離婚した夫婦
- 4条1項→離婚について(実際に)適用された準拠法
- 法律上の別居・婚姻の無効or取消にも準用(2項)
- それ以外=段階的連結
- 扶養の権利義務の存否
- 扶養権利者の常居所地法(2条1項本文)
- 扶養が認められないときは当事者の共通本国法(同但書)
- それでもダメなら日本法(同条2項)
- 扶養義務者の異議(傍系親族間or姻族間)
→以下の法で義務が無い場合は異議で準拠法変更- 共通本国法(3条1項前段)
- 共通本国法が無ければ扶養義務者の常居所地法(同後段)
- 公的機関から扶養義務者への償還請求
- その機関が従う法(5条)←公法上の問題だが補完的に規定
- 扶養の権利義務の存否
扶養の程度
- 公序則(8条1項)
- 通則法の公序と同じ(「明らかに」は単なる明示化)
- 渉外実質法的規定(8条2項)
- 準拠法に別段の定めがあっても、扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮して定める
=公序則の具体的基準
- 準拠法に別段の定めがあっても、扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮して定める
司法試験の勉強:国際私法の基礎1/3(総論・一般法理)
基本用語
- 準拠法
- ある法律関係において適用すべきとされる法域の法
- 法域
- ある私法体系が通用している一定の地域
- 抵触法(国際私法)
- 準拠法を指定するための法
- 実質法
- ある法域において具体的な法律関係に適用されている法
- 単位法律関係
- 国際私法上1つの単位として取り扱われる法律関係
- 連結点
- 国籍など、準拠法を指定するために用いられる要素
法律関係の性質決定
定義
具体的に問題とされている法律関係がどの単位法律関係の性質を有するのか
=抵触規則の単位法律概念(指定概念)が何を指すのか
法性決定の方法
法廷地法説
- 法廷地の実質法によって決定
- 批判
- 実質法(実際に適用して紛争を解決する法)と抵触法(どの実質法を適用するかを定める法=国際私法)では目的・機能が異なり用語も別異に解釈すべき
- 国内法に存在しない法制度の性質決定ができない
準拠法説
- 国際私法により準拠法として指定された実質法によって決定
- 批判
- 循環論になってしまう(準拠法を決めるための法性決定で準拠法に依拠)
国際私法自体説
- 国際私法自体の解釈によって決定
解釈基準
比較法説
- 実質法を比べ共通概念を抽出
- 批判
- 比較法学の能力的に無理がある
- 実質法に依拠する点で実質法からの解放という観点が不徹底
抵触規則目的説
- 規定の趣旨・目的を基準とする
一般的な法解釈方法による
- 国内法として解釈(文理解釈→目的・趣旨→比較法)
適応問題
定義
ある法律関係を単位法律関係に分けて準拠法を決定した時に、各準拠法間で生じる内容的矛盾
- 重複:例)夫の親の居所指定権
- 欠缺:例)死亡した夫の遺産→夫婦財産とする準拠法と相続とする準拠法の間で穴ができる
- 質的矛盾:例)信託法と信託権のない準拠法
解決方法
- 放置
- 一方の排除:例)婚姻後は婚姻の効力優先
- 一方の拡張:例)相続として考え、夫婦財産として定められていても適用
- 第三の法秩序による置換
先決問題
定義
ある単位法律関係の問題(本問題)に論理的に先立って解決すべき単位法律関係の問題
解決方法
- 本問題の準拠法説:本問題の準拠実質法で先決問題の権利関係を確定する
- 渉外的法律関係である以上、実質法では解決できない
- 準拠法説:準拠法所属国の国際私法によって先決問題の準拠法を決定する
- 同じ先決問題に対して、本問題次第で準拠法が異なってしまう
- 法廷地説:法廷地の国際私法によって先決問題の準拠法を決定する
連結点
連結政策
- 単純連結
- 一つの連結点で一つの準拠法を指定(例:36条)
- 累積的連結
- 複数の連結点が定められ、指定準拠法を重畳的に適用(例:22条1項2項)
- 段階的連結
- 連結点の第1がなければ第2,第3...と段階的に指定(例:25条)
- 選択的連結
- 複数の連結点から一定の法律関係が成立しやすいように選択的に指定(例:28条1項)
- 配分的連結
- 当事者ごとに連結点を定め各自に準拠法を指定(例:24条1項)
変更主義と不変更主義
いつの時点の連結点を用いるか
→帰化・移住により準拠法を選択させることを防ぐ
法律回避
連結点を意図的に変更して有利な準拠法の適用に持ち込む
- 無効説(旧法例、仏)
- 故意の潜脱は許されない
- 最密接関連地法によるという目的が達成できない
- 有効説(通説、独、英米)
- 内国法拡張の抑制
- 連結点の客観的確定
- 通則法:旧法例から削除されている
本国法
本国=国籍国
→各国の国籍法に従って定まる
→必然的に重国籍・無国籍が生じうる
重国籍(38条1項)
- 日本国籍があれば日本法(但書)←内国国籍優先主義
- 国籍国の中で常居所を有する国の法
- それ以外なら国籍国の中での最密接関係国の法
(本国法主義の趣旨から、国籍を有しない国からは選べない)
共通本国法との違い
共通本国法:国籍国のいずれかが一致しているか判断
同一本国法:38条で一つに絞り込んだ上で同一かどうか判断
難民
本国との関係が事実上切断され、又は切断したい場合が多い
→難民条約では「住所」を使用
日本では「常居所」とし、反致を否定する説も有力
常居所
ハーグ国際私法会議で創出された人工的概念
国際的な概念の差異が生じない事実概念の導入が目的
- 単一性
- 複数の常居所はありえないという前提
- 不明の場合:居所地で補充(39条)
- 住所との関係
- 領土法説→重住所・無住所の発生を予定
- 裁判管轄の基準として訴訟便宜も判断要素に含む
不統一法国
地域的不統一法国
- 連結点が場所的に一点を示す→その地の法(直接指定主義)
- 連結点が国籍→通則法38条3項
通則法38条3項
- 「その国の規則に従い指定される法」:間接指定主義
- 「当事者に最も密接な関係がある地域の法」:直接指定主義
通説
間接指定主義
「規則」=その国の準国際私法
批判
- 自国が本国法とされた場合を想定していない
- 外国を指定した場合の処理(←「規則」がない場合とする)
→「規則」=「外国の国際私法で本国法として指定されたときの地域指定ルール」
→実際上ありえず、38条3項前段は空文
人的不統一法国
通説
地域的不統一法国と同じ処理→通則法40条1項
場所的に一点を示す場合でも決まらない→通則法40条2項
批判
- 人的不統一はただの国内人際法→本国法指定で終了していい
- 「規則がない場合」=外国法不明の場合と解する
反致
通説上は理論的・政策的根拠がないとして否認されている。
最密接関係地法の決定・適用という理念に反する誤った国際主義とされる。
定義
準拠法の消極的抵触を解決するという建前
狭義の反致
通則法41条
自国の国際私法によって指定された準拠法所属国の国際私法が、自国法を準拠法としているときには、それに従って自国法を準拠法とする
転致
準拠法国の国際私法が第3国を指定(A→B→C)
「日本法によるべきとき」にあたらず許されない(手形・小切手法は認める)
間接反致
第3国を挟んで自国が指定される(A→B→C→A)
「その国の法に従えば」にあたらず許されない
二重反致
準拠法所属国の国際私法も反致を認めている場合には、その国の法を準拠法とする
反致の過度の拡大になるから許されない
隠れた反致
裁判管轄権の指定ルールしかなく、これが適用法指定も兼ねているときは、裁判管轄権の指定により反致を認める
理論的根拠
- 総括指定説
- 連結点による指定は国際私法の指定も含む
→常に再指定、無限に循環 - 棄権説
- 自国法を適用しないという国家意思の尊重
→国際的私法秩序の安定という国際私法の目的と無関係
実際的根拠
- 内国法適用拡大説
- 自国法の適用拡大を積極評価
→内外法平等の建前に反する - 国際的判決調和説
- 一方の指定に従えば国際的判決調和が得られる
→両方反致を認めたら入れ替わるだけで判決調和は得られない - 判決承認の拡大説
- 自国の判決が外国で承認されるようになる
→判決の承認は準拠法所属国でだけ問題になるわけではない
→外国判決の承認にいかなる法が準拠法となったかは一般的に要件とされていない
公序
定義
通則法42条
準拠法の適用結果が自国法上の根本原則・基本的理念に反する場合に、その外国法の適用を否定する(一般留保条項)。
→準拠法の適用排除・内外法平等に対する例外
消極的公序
単に外国法の適用を排除する
積極的公序
内国強行法を適用する
公序の内容
自国の法秩序を維持する目的
民法90条とは異なる抵触法上の公序
適用要件
- 反公序性
具体的な適用結果(≠準拠法の内容)が自国の基本的法秩序を現実に侵害する - 内国関連性
当該事案が自国と密接な関連性を有する - 基準時
現在の法秩序を害する
準拠法排斥後の処理
適用否定→法の欠缺
- 内国法適用説(法廷地法説)
- 内国法への補充的送致があると解する(旧通説・判例)
- 欠缺否認説
- 外国法の適用を排除した内国公序が存在する=規範の欠缺は生じない
→批判:排除後の解決方法が1つに限られない場合もある - 補助連結説
- 改めて準拠法選択規則を適用し次順位の法を適用する
- 条理説
- 外国実質法欠缺の場合に準じて条理で処理する