日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

赤本青本緑本

交通事故案件では、弁護士が必ずと言って良いほど参照する資料があります。「赤い本」「青本」「別冊判タ38」の3冊です。

簡単に言うと、それぞれ、損害賠償額算定の基準、その詳細や例外の解説、過失割合の基準をまとめたものです。

赤い本

  • 正式名称『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』
  • 毎年改訂版を発行
  • 通称「赤い本」「赤本」(「い」を入れるのが公式らしい)

東京地裁の実務に基いて、交通事故の賠償額算定基準がまとめられたものです。上下巻セットで、上巻は賠償額算定基準、下巻は講演録となっています。上巻は最新のものだけあれば良いのですが、下巻はそうもいかず、それでいて古い赤い本は入手困難なため、昔の下巻はレアだったりします。

元々は関東限定の基準だったようですが、現在は全国で使われています。赤い本(の上巻)を読めば、交通事故の損害賠償額の算定方法は大体書いてあるので、実務上悩んだら必ず最初にこれを読みます。

なお、一般の書店では売っていません。「実務用の専門書はまともに売れない」のが理由なのでしょうが、「算定基準が一般に知られては弁護士と保険会社が困る」という理由もあるのでは…と勘ぐってしまいます。

青本

  • 正式名称『交通事故損害額算定基準』
  • 各年で改訂版を発行
  • 通称「青本」「青い本」(こちらは逆に、「い」を入れないのが公式らしい)

内容的には、赤い本とほぼ同じです。元々は、赤い本が関東版、青本が全国版として区別していたところ、赤い本が全国で使われるようになったので、青本は解説を充実させることで赤い本との差別化を図るようになったそうです。

こちらも一般の書店では売っていません。

別冊判タ38

  • 正式名称『別冊 判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)』
  • 通称「緑の本」「緑本」(そんな通称使わない!という先生もいらっしゃるが、私は使う)

交通事故の態様ごとに、過失割合を分かりやすくまとめたものです。交渉や訴訟でも、普通に「別冊判タ38☓☓ページの図」などと参照されて、基準にされます。

ズバリの事故態様が載っていなくても、基本類型と過失割合増減に関する考え方が説明されているので、ざっくりとした過失割合は導けます。

これは普通にAmazonでも売っています。法律家以外の方も、一度読んでみると面白いんじゃないかと思います。実際には2:8くらいなのに、「自分は過失ゼロ!」と主張する依頼者も結構いらっしゃるので。