日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

樹氷に落書きで逮捕

雪に所有権があるわけでもなく、春に解ければ消えてしまうものだから器物損壊罪は難しそうだが、何の罪に当たるのか?と思ったのですが、威力業務妨害罪での逮捕でした。

「落書き」という字面から、雪の一部を削って名前を刻んだ程度を想定したのですが、映像を見たら、想像以上に酷い有様でした。確かに、これだけ派手な落書きなら、十分業務妨害罪になりそうです。業務妨害罪は抽象的危険犯なので、この落書きのせいで実際に客足が落ちたかどうかは関係ありません。

ちなみに、「威力」の定義は「人の意思を制圧するに足りる勢力」と言われていますが、ざっくり言うと、「目に見える形での妨害=威力業務妨害」、「目に見えない形での妨害=偽計業務妨害」とされています。

震災法律援助がもうすぐ終了

法テラスでは、平成24年(2012年)4月から、「震災法律援助」というものを実施しています。

この制度を利用すると、東日本大震災発生時(平成24年3月11日)に対象の被災地域に住んでいた人は、3回まで法律相談が無料で受けられます。当時の住所が対象地域(市町村単位)にあればよく、相談内容が震災に関連している必要もありません。

しかし、この制度も今年度(平成30年3月31日)で終了します。

法テラスと契約していない事務所なんかだと使えませんが、法テラスに行けば契約している事務所を紹介してくれると思います。

弁護士に相談するほどではないかな?というような問題がある方は、年度内に利用しておくと良いと思います。

「何が悪いのか」を理解させる難しさ

自白事件では、まず被告人から反省を引き出す必要があります。そして、テンプレ的には、反省するためには、自分のしたことの何が悪いのかを理解していなければなりません。「何について謝っているの?」ってことです。

しかし、これが意外と難しい。

たとえば、窃盗や傷害などの分かりやすい「被害」がある犯罪は、その被害者に迷惑をかけた、と言えるので簡単です。ところが、同じ個人を被害者とする犯罪でも、住居侵入のように具体的な金額や傷で被害が可視化されない犯罪だと、うまく答えられなくなってきます。

更に、薬物使用や飲酒運転のように直接の被害者がいない犯罪だと、「法律で禁止されているから」以上の答えが返ってこない人が多くなります。「なぜ法律で禁止されていると思うか?」と問い直しても、ピンときてもらえません。

よくある事件の中で最も難しいのは、不法残留外国人の在留カード偽造事件です。ただでさえ、外国人在留制度の在り方だの信用性といった分かりにくいものへの罪だというのに、通訳を介するので、掘り下げて考えてもらうことすらなかなか難しくなります。なので、そういう事件では敢えて深く聞かず、「悪かったと思う」くらいのところで止めてしまいます。それ以上聞こうとすると泥沼にはまるだけなので。

罪名ごとの保護法益というものを勉強している法曹関係者と違い、一般の人は「それをやることの何が悪いのか」をよく理解していないことが多いようです。そして、それを理解してもらうことは、意外なほどに難しいのです。

ゴミのような弁論を書くつらさ

国選事件をしていると、どう考えても有罪なのに否認(無罪主張)してくる被告人がいます。客観証拠だけでも証明十分、弁解はそれ自体明らかに不合理、おまけに内容がコロコロ変わる、というような感じです。

当然ながら、弁解を裏付ける証拠など一つもなく、無罪主張なので情状弁護もできず、被告人質問も弁解の不合理な点を突かれてフォローしきれず。そういう被告人の無罪主張を弁論で書くとなると、その不合理で裏付け証拠もない弁解をそのままなぞるだけになってしまいます。はっきり言ってゴミのような弁論です。

弁護士としても、そういう弁論は書きたくありません。書きたくはないのですが、書かざるを得ません。それが結構つらい。

明らかに有罪なのであれば、初期段階でしっかり被告人から真実を引き出さなければなりません。明らかに有罪なのに無罪主張をさせるのは、被告人にとっても不利益なわけで、被告人が主張するからと言って無罪主張をそのまま受け入れるのは弁護活動としては良くありません。しかし、そうは言っても否認している被告人を自白させるのは難しいものです。「証拠見る限り間違いなく有罪になるよ」と言っても否認を維持してきたりします。重々承知の上で敢えて無罪主張をしている場合もあります。ある程度誘導・説得しても全く主張が変わらなければ、(時間の問題もあるので)弁解を信じて受け入れるしかなくなります。

ゴミ弁論を書いていると、そんなゴミが人に見られ、記録に残ってしまう恥ずかしさと、被告人をきちんと説得できなかった自分の未熟さが痛感され、かなりストレスが溜まります。

正直、無罪を勝ち取れる弁護士よりも、適切に自白を引き出せる弁護士の方が、すごいなぁと思えます。

ドライブレコーダーを購入

交通事故案件をやっていると、ドライブレコーダーがいかに大切かということがよく分かります。

私も、自動車は仕事でそこそこの距離を乗るので、万が一のときのため、ドライブレコーダーを購入しました。

Amazonで一番良く売れている商品を購入。バックミラーの裏に来るように設置したので、視界は設置前と何も変わりません。

事故が起きない限りドライブレコーダーが役に立つことはない…と思っていましたが、そうでもありませんでした。しっかり記録に残っていると思うと、信号が際どいタイミングで黄色になったときなど、以前より抑制的に運転するようになりました。また、一定の衝撃を受けると、それを検知して「イベント録画を開始しました」と言い出すので、そう言われないように、段差がある場所などでやんわりと運転するようになりました。

もしもの時のためのドライブレコーダー。任意保険と同じくらい必須です。

司法試験の勉強:民事訴訟法

民事訴訟法は、ひたすら判例百選の暗記でした。手続法は静的安全が命であり、それは試験でも実務でも同じです。

私は、時間のあるうちは、とにかく判例百選を読み込み、簡単なまとめを作って復習していました。出題範囲的にも、民訴で百選の外の論点が出てくるということは考えにくいので、それだけで基本的には必要十分といえるはずです。

以下、私が百選をまとめたメモです。見出しの番号は百選内の番号と一致し、文中で「A**」と書いてあるのは、巻末のAppendixの数字です。私が受験した時から、改版があったようなので、現在の百選とは数字が異なっていると思いますが、参考にはなると思います。

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司法試験の勉強:商法

商法と言っても、純粋な商法問題はほぼ出ないので、実質会社法

会社法は、論点が幅広い上、理論と判例の両方を踏まえつつ、事実の抽出・評価もしっかりする必要があるので、これといった対策ができない科目という印象があります。

なので私の場合は、コテコテの典型論点は箇条書きの形でまとめて暗記してしまい、「最低限の部分はきっちり拾う」というスタンスで勉強しました。一度まとめてしまえば復習は省力化できるので、余った時間は最新重要判例の勉強に費やしていました。

以下、私が復習用につくったまとめ箇条書きです。

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