盆休み
世間はお盆休みですが、残念ながら、私は暦どおりに働いています。イソ弁として夏季休暇ももらっているのですが、私は敢えて世間とずらして取得しています。
どうしてそんな休みのとり方をしているかというと、第1に、日本中が休みの時に休むより、日本中が働いている時に休んだ方が気分が良いからです。どこか出かけるにしても、平日ど真ん中の方が空いていますし。
第2に、お盆休みの方が依頼者と打ち合わせがしやすいからです。事務所の営業時間の都合上、依頼者と打ち合わせをしようと思うと、平日の日中に来てくださいと言わざるを得ません。しかし、それをするためには仕事を休まなければならない人が多く、そう簡単には来られません。ところがお盆休み中なら、平日でも仕事が休みになってたりして、事務所に来てもらいやすくなります。世間一般の休みとずらすことで、日程調整がしやすくなるのです。
その他、忙しい弁護士は、お盆を含む夏期休廷期間中は裁判期日が入らないため、ここぞとばかりに起案を消化していきます。
もちろん、世間と同じようにお盆休みを取る弁護士もたくさんいると思います。お盆休みの取り方一つ見ても、それぞれのスタイルが表れてくる、それが士業の面白いところかもしれません。
司法修習生に名刺は必要なのか
司法修習に入る前、多くの合格者は、名刺を作ります。ネットで調べるとみんな作ってるみたいだし、修習生対象の名刺業者もあったりして、作るのが当たり前、みたいな感じでした。
しかし、本当に修習生が名刺なんて持つ必要があるのでしょうか。
不要論
正直言えば、修習生に名刺なんて要らないと思います。理由は2つです。
理由1:使う場面がない
司法修習生が名刺を渡す場合として考えられるのは、ほぼ2つだけです。
- 修習生同士で交換
- 就活先の弁護士と交換
1つ目のパターンは、あるにはあるんですが、ほとんど大学の同級生みたいな関係性の相手なので、名刺である必然性は皆無です。今時は連絡先の交換もLINEが中心なので、名刺をもらっても役に立ちません。
2つ目のパターンは、一番よくあるし、一見すごく必要そうです。が、正直就活先の弁護士は修習生の名刺なんか興味ゼロです。元々履歴書に詳しく書いてあるし、採用でも不採用でも二度と見返しません。修習生が名刺を持っていないからと言って、そんなことで不採用にするとか不利に評価することもありません(多分)。相手の名刺をもらっておくだけで問題ありません。
理由2:もらった側としてはゴミ同然
修習が1年で終わる以上、司法修習生としての名刺なんてのは、どんなに長くても1年間でゴミになります。その1年の間に、「あの修習生と連絡を取りたい…。そうだ、名刺をもらっていた!」なんて状況、まずありません。
検察官や裁判官は、名刺を持っていません。2~3年で転勤して所属が変わるため、名刺を配る意味が無いからです。身分の価値がより低く、所属期間がより短い修習生が配る名刺に、一体どれほどの価値があるでしょうか。
ゴミを配るためにわざわざ大量に名刺を刷るのは、資源の無駄です。
必要論
そうは言っても、ほとんどの修習生が名刺を作っているのだから、一応必要なのではないか…?という疑問ももっともです。
その答えは結局のところ、「格好をつけておきたい」ということに尽きると思います。
名刺と言えば交換!こちらからも渡さなければ!という思い込みがあると、一方的に名刺をもらうことに居心地の悪さを感じてしまいます。名刺を渡さないことで就活が不利になることはないと書きましたが、「不利にならないとは分かっていても、何となくやっておきたい」ということはあると思います。
名刺の「交換」という儀礼を形にしたい、というのであれば、修習生の名刺は、そのための飾りとして必要なのかもしれません。
結論
結論としては、「どっちでもいい」です。
あってもなくても困らないが、あれば何となく格好がつく、というだけの代物です。いずれにしろ、そんなにたくさん配ることはないので、業者には頼まず、パソコンで自作した方が費用的にもエコ的にも良いと思います。
印鑑ホルダー「はん蔵」が便利
印鑑をセットすると、内蔵の朱肉が自動的に印面に付き、スタンプ印のように印鑑を押せるという優れものです。印鑑ケースからの出し入れや、朱肉を付けるといった動作が不要になるので、非常に便利です。水平軸が安定するのでまっすぐ綺麗に押しやすくなるメリットもあります。ロック機構が付いているため、鞄の内側が朱肉で汚れる心配もありません。同じような商品にシャチハタの「ハンコ・ベンリ」というのもあります。
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セットできる印鑑は9~12mmの丸印だけなので、当然職印なんかには使えません。じゃあどこで使うのか?というと、留置施設での差入れと宅下げです。
外国人の当番弁護で権利告知書の翻訳文を差入れたり、国選の被疑者・被告人から反省文を宅下げする時などは、書類に押印が必要です。ですが、ここでの押印は適当な認印で良いので、わざわざ職印使ったりはしません。時間の無駄を省くためにも、「はん蔵」にセットした三文判を使います。
ちなみに、私は司法修習生時代に買いました。司法研修所では毎朝登庁簿に押印して出席を取りますし、それ以外にも修習生は書面に押印する機会が多いので、とても役に立ちました。司法試験合格者は、修習に向けて買っておいて損はないと思います。
時効援用くらいは自分でできそうだが…
法律相談を受けていると、「これくらいは自分でやればいいのに」と思うことがあります。その最たる例は、消滅時効の援用です。
ある日突然債務返済の請求書が来た。確かに金を借りたことがあるが、もう相当昔の話で、少なくとも5年以上、取引もないし請求もされていない。どう対応したら良いか。
こんな相談は結構多いのですが、回答はこうなってきます。
時効が完成している可能性があります。取引明細を取得して確認し、時効援用の内容証明を送りましょう。1円でも返したりせず、返すつもりがあるような発言もしないように気を付けてください。
この回答で示した対応というのは、分解すると以下の3つの作業になります。
これを弁護士に依頼する方も当然たくさんいますが、実際には、こんなもの誰にでもできることです。
取引明細の取得は、請求書の連絡先に電話し、「請求の根拠を確認したいから根拠資料を送ってくれ」と言うだけで済みます。時効援用の書面は、さすがにいきなり書けと言われて書ける人はいないでしょうが、「消滅時効 例文」なんかでネット検索すれば、いくらでも文案の紹介サイトがヒットします。そして、内容証明郵便の利用方法は、ネットで調べるなり郵便局に行って教えてもらうなりすればいいだけです。
資料請求は電話一本。書面の検索と書き換えは30分。内容証明郵便の利用方法を調べるのに30分。合計1時間あれば、自分でできてしまうことです。
私が相談を受ける場合、「その気になれば全部自分でできますが、どうしますか」と聞いてしまいます。しかし、大抵の方は、全部まとめてお願いします、と言ってきます。確かに、やろうと思えば自分でできることですが、弁護士に頼んだ方が確実だろうし、面倒だから頼んでしまいたい、つまり、手間や質をお金で買いたい、ということなのだと思います。
こういう案件で、弁護士業がサービス業であるということを実感します。
借金苦から逃れる4つの方法
4つの選択肢
債務整理、すなわち借金をどうにかしたいという相談に対しては、多くの場合、次の4つの選択肢のどれかを提示します。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
- 踏み倒し
結論から言うと、返せないなら自己破産がベストなので、基本的には破産を勧めます。住宅ローンがあれば個人再生、何か特に事情があれば任意整理、返済不能かつ債務整理に何のメリットもないような場合には、踏み倒しを勧めることもあります。
以下、それぞれの手続について、メリットとデメリットをまとめてみました。
自己破産
借金をチャラにする方法です。ただし、「今ある財産だけで勘弁してやる」という制度なので、基本的にはプラスの財産もゼロになります。価値の高くない財産*1は取られたりしないので、身一つで投げ出されるとかではありません。
一定のデメリットもありますが、最も人生をやり直しやすい方法であり、基本的に借金を返せなくなったら破産することをおすすめします。
メリット
- 借金が完全に消える*2
デメリット
- 時間と手間がかかる
- 大きい財産はすべて失う
自己破産を選んだ方が良い場合
- 自力で完済する見込みがない
- 不動産などの手放したくない財産を持っていない
個人再生
借金を減額し、3~5年以内に返済する方法です。手間も時間も自己破産と同じかもっと大変ですが、住宅ローンだけを通常通り返済し続けることが許されます。つまり、自宅を手放さなくて済みます。
基本的に、自宅を残したい場合以外は使いません。自宅を手放して良いなら、あえて個人再生を選ぶ理由はなく、自己破産をすべきです。
メリット
- 住宅ローンをそのまま返済し続け、抵当権の実行を阻止できる
デメリット
- 時間と手間がかかる
- 減額されるとはいえ借金が残る
個人再生を選んだ方が良い場合
- どうしても自宅を手放したくない
- 住宅ローン以外の借金はそれほど大きくない
任意整理
債権者と個別に交渉し、任意で借金を減額したり分割払いにしてもらう方法です。任意なので、どんな交渉も可能です。
もっとも、通常は、「利息と遅延損害金を止める代わりに、3年(36か月)以内に全部返す」という限度でしか承知してもらえません。
メリット
- 自由に交渉でき、一律の処理を回避できる
デメリット
- 交渉に応じてもらえる保証はない
- 元本が減ることはほぼない
任意整理を選んだ方が良い場合
- 債権者の数が少ない
- 親戚・友人など、ちゃんと返したい相手からも借りている
踏み倒し
文字通り、借金を返さず、踏み倒す方法です。今は強引な取り立て行為が禁止されているので、請求に疲れ果てるということもあまりないと思います。
最終的には差押えされたりもしますが、差押えられて困るのはせいぜい給料くらいです。債権者に職場が知られていなければ、その心配もありません。
メリット
- 何もしなくて良い(手間も金もかからない)
デメリット
- 滞納状態が続くので、新たな借金ができない
- 大きな財産があったり、職場がバレていると、差押えを食らう
- 放っておくと、自分が死んだ後遺族に迷惑がかかるおそれがある
踏み倒しを選んだ方が良い場合
- 今後借入れを必要とするような予定が一切ない
- 職場が債権者に知られていないor現金支給
- 法定相続人に話が通っている
連絡手段の使い分け
弁護士業務は、定型作業として、各所に多くの連絡をしていきます。依頼者、裁判所、検察庁、相手方代理人、保険会社などなど。
そこで、基本的な連絡手段と特徴をまとめてみました。
電話
当然ですが、非常によく使います。
即時性が高い一方で、録音していない限り証拠に残りません*1。
厳密に証拠を残す必要のないやり取りに使います。特別緊急性がなくとも、「電話の方が早い」「確実に回答が欲しい」ときは電話を使います。電話連絡ができないと仕事になりません。
FAX
書面や資料を送付する場合、原本の必要性がないならFAXを使います。送受信の記録が機械の方に残るので、一応の証拠も残ります。
法曹界はFAX文化が完全に定着していて、なくなる気配が全くありません。裁判所や検察庁、弁護士同士のやり取りは、FAXが基本です。ただし、送信枚数が大量になる場合は、相手に迷惑なので使いません(その場合は郵送)。
電子メールでの代替は、技術的には可能なのでしょうが、おそらく裁判所が対応しない限り弁護士も対応しません。そして裁判所は、セキュリティや保存性の問題があることから、対応しないでしょう。
郵送
原本を送る必要がある場合、確実に記録を残したい場合などに使います。
郵送の種類については、郵便の種類というエントリにまとめています。
FAXを持っていない依頼者への報告書なども、普通郵便で送ります。
電子メール
記録も残るし安くて簡単。だけど相手が限られる連絡手段です。
正直、私の場合は、通常業務ではあまり使いません。弁護士会の関係や、弁護士同士の業務連絡に使うことが多く、たまに依頼者との連絡でも使うという程度です。
これは地域・分野の差があるかもしれませんが、少なくとも地方では、電子メールを利用したがる依頼者は少なく、あまり使う機会がありません。また、相談や打合せの日程調整などでは、圧倒的に電話の方が早くて楽(電話なら1回で済むが、電子メールだと数回のやり取りが必要)なので、全てを電子メールに切り替えるというのは、それはそれで不便です。
*1:ただし、通話内容をメモや報告書として残すことも多々あります。十分とは言えませんが、証拠化という意味では重要です。
自動車保険には弁特を付けた方が良い
自動車を買ったら、大抵の人が任意保険に入ります。てか入ってください、保険入れないなら車買わないでください。マジでお願いします。
弁特を付けるべき理由
弁特(弁護士費用特約)は、簡単に言うと、年間1500円~2000円程度で、事故時の弁護士費用を保険から出してもらえるという特約です。上限額もありますが、弁特の上限額を超えるような交通事故というのは、ほとんど考えられません。
「訴訟までしたくないし、保険会社がやってくれるから弁護士要らなくない?」と思うかもしれませんが、そんなことは全くありません。現状(2017年現在)では、むしろ付けない理由がないと言ってもいいくらいの特約です。
以下、弁特を付けるべき理由(=弁護士を利用した方が良い理由)をいくつか挙げてみます。
理由1:賠償金額が上がる
はっきり言ってしまえば、弁護士が交渉すると金額が上がります。あまり変わらないケースもありますが、大半のケースでは数十万円単位で変わってきます。
保険会社は普通、「裁判したらこれくらい」という金額よりかなり低い金額で示談を提示してきます。ここに弁護士が間に入ると、この金額をある程度裁判基準に近づけることができます。裁判基準の金額など知らずに、相手方保険会社の言うままに示談に応じてしまう被害者は多いように思います。弁護士が入ることで増額される分だけでも、弁特にかかる保険料を遥かに上回ります。
理由2:自分で交渉しなくて良い
自分にも過失がある場合は、自分の保険会社が交渉を代行してくれますが、自分が無過失だとやってもらえません。怪我で痛い思いをしている中、更に相手方保険会社との交渉までするのは大変です。そういう場合でも弁特は使えるので、弁護士に交渉を任せることができます。
また、自分の保険会社が交渉してくれる場合でも、必ずしも担当が対応の良い人とは限りません。弁護士は自分で自由に選べるので、どうしても対応に不満があれば、いつでも別の弁護士に変えることができます。
理由3:事故後対応で間違えなくて済む
病院の選び方、通い方、治療の仕方、医師への対応、その他諸々、事故後の処理対応が間違っている人は非常に多いです。というか、適切な対応ができている人なんてほとんどいません。
どういう対応が適切なのかについては、また別のエントリで書くことにしますが、とにかくそういう間違った対応をして受け取れる保険金を減らさないためにも、できるだけ早いうちに弁護士を付けるべきです。
弁特を付けなくて良い人
弁特を付けないで良いのは、以下の条件に当てはまる人です。
- 大きな事故には絶対に遭わない
- 遭ったとしても、自力で適切な損害計算と交渉ができる
- 怪我でそれどころじゃなかったら、適正額の半分くらいもらえば満足
事故ったらすぐ使うべし
弁特を付けていても、実際には利用しなかったり、利用するにしても事故から半年とか1年経過して初めて相談に行くという人が多いように思います。はっきり言って損です。
事故直後から弁護士に相談していれば、解決までの期間や見通しが分かるので精神的に楽になります。また、交渉や裁判で不利にならないように、治療等について気をつけるべき点を説明してもらえます。治療や通院の仕方がまずいために適正な金額を受け取れなくなることも多く、そうなるとよくあるムチウチでも100~200万円くらい損することになります。
交通事故に遭ったら、できるだけ早いうちに弁特を使うことがおすすめです。早ければ早いほど、損をするリスクが減ると言って過言ではないと思います。