日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

検察官の風呂敷文化

法曹会には世間とズレた慣習が色々とありますが、検察官の風呂敷文化もその一つではないでしょうか。

検察官は、証拠資料などを持ち運ぶのに、風呂敷を使います。その文化は根強いようで、若い検察官でも風呂敷を使っています。

一説によると、検察官は証拠を持ってきて裁判所に提出して帰るから、帰りは荷物が少ない、故に畳んで手ぶらにできる風呂敷を使う…ということのようです。理由になっているような、いないような…。

個人的には、単純に「検察官っぽくて格好良い」とか、「組織」の中での同調圧力みたいなものがあるだけなんじゃないかと思っています。実際どうかは分かりませんが。

いずれにしろ、裁判所で風呂敷を持っている人がいたら、検察官だと思ってほぼ間違いありません。

パタリーノペンケース

先日、ホームセンターの文具売り場を歩いていて、良さげなペンケースを見つけました。

www.g-mark.org

最近は「ペンスタンドになるペンケース」が主流のようですが、個人的にはペンスタンド型よりも、「平面的で一覧性が高い」タイプのペンケースが好きです。

フラットで省スペースなのでビジネスバッグに入れておくのにちょうど良く、デザインも落ち着いていて仕事で使いやすそうです。今使っているスマートフィットのペンケースは、付箋や消しゴムといった小物が入らないのが不満でしたが、パタリーノペンケースなら入りそうです。

そもそも多色ボールペン1本で事足りてしまうので、今更ペンケースを買い換える必要はないかもしれませんが、久々に心惹かれる文房具でした。

金色の弁護士バッジは若手の証拠?

弁護士バッジは、ヒマワリと天秤がモチーフとなっており、素材は純銀に金メッキです。

金メッキなので、長く使っているとメッキが落ちていき、段々と金色から銀色に変わっていきます。まさにいぶし銀です。そのため、弁護士バッジが金ピカだとまだまだ若手で、中堅やベテランならバッジは銀色、と言われています。昔は、早くこの色にするために、バッジを小銭入れなどに入れ、摩耗させるという人もいたようです。

法廷ドラマなどでは、ものすごいベテランの弁護士でも金ピカバッジを付けているので、結構違和感があります。もしもベテラン弁護士のバッジが銀色になっているドラマがあったら(ないと思いますが)、かなりリアリティにこだわったドラマだと思って良いと思います。

ただ、最近は弁護士バッジに対する考え方も多様化してきているので、「執務中は常に付ける」という事務所もあれば、セキュリティがザルな田舎では、法廷ですら付けない弁護士もいます。普段からバッジを付けない弁護士だと、メッキも落ちにくいので、ベテランになっても金ピカのままかもしれません。それと、バッジを紛失して再発行してもらうベテラン弁護士もいるようなので、その場合も金ピカです。

というわけで、弁護士バッジの色が金色なら若手、銀色なら中堅以上というのも、「今は昔」になりつつあるのかもしれません。

法テラスの資力基準

弁護士に頼みたいけどお金がない…という人に対しては、日本司法支援センター(通称「法テラス」)が費用を立替えてくれる制度があります。

お金がない人のための制度なので、収入が一定以上の人は利用できません。具体的な基準は法テラスのサイトに公開されています。基本的には、以下のような収入が基準となっています。

法テラスの資力基準(収入)

世帯人数 世帯全体の手取月収額 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額
1人 18万2000円以下 4万1000円以下
2人 25万1000円以下 5万3000円以下
3人 27万2000円以下 6万6000円以下
4人 29万9000円以下 7万1000円以下

注意点

  • 手取金額だが、賞与があればそれも月平均で合算する
  • 離婚事件などで配偶者が相手方の場合は、相手方の収入は計算しない
  • 東京などの生活保護一級地では、基準額が上がる
  • 世帯人数が4人を超える場合、超過人数1人につき3万円を手取月収基準額に加算

家賃以外の控除

医療費、教育費、職業上の必要不可欠な支出については、更に控除してもらえる可能性があります。

たとえば、夫婦+子2人の世帯で、家賃8万円の家に住んでいる場合。

  • 手取月収額基準:29万9000円
  • 家賃加算:7万1000円

以上から、夫婦で平均手取月収が37万円以下なら、基準クリアです。

更に、持病で定期的に通院している場合はその費用が医療費として、子供が保育園に入っている場合にはその費用が教育費として控除されるので、それらの金額を37万円に加えた金額まで収入があっても大丈夫となります。

根拠資料

法テラスに立替えの援助を申し込む場合は、以上の資力基準を充たすことを示すため、根拠資料を集める必要があります。

  • 世帯人数→住民票(「世帯全員」と記載されているもの)
  • 収入→直近2か月分の給与明細、無職なら非課税証明書等
  • 医療費、教育費等→金額が小さければ具体的な内容の説明だけで通るが、金額が大きい場合には領収証が必要

基本的に、直近2か月分の給与額で判断するので、月ごとの収入変動が大きい職業の場合、実際の平均額より高く評価されてしまい、そのせいで資力基準を上回ってしまう場合もあります。その場合は、他の月の給与明細や、源泉徴収票等で年収を示すなど、一手間必要です。

樹氷に落書きで逮捕

雪に所有権があるわけでもなく、春に解ければ消えてしまうものだから器物損壊罪は難しそうだが、何の罪に当たるのか?と思ったのですが、威力業務妨害罪での逮捕でした。

「落書き」という字面から、雪の一部を削って名前を刻んだ程度を想定したのですが、映像を見たら、想像以上に酷い有様でした。確かに、これだけ派手な落書きなら、十分業務妨害罪になりそうです。業務妨害罪は抽象的危険犯なので、この落書きのせいで実際に客足が落ちたかどうかは関係ありません。

ちなみに、「威力」の定義は「人の意思を制圧するに足りる勢力」と言われていますが、ざっくり言うと、「目に見える形での妨害=威力業務妨害」、「目に見えない形での妨害=偽計業務妨害」とされています。

震災法律援助がもうすぐ終了

法テラスでは、平成24年(2012年)4月から、「震災法律援助」というものを実施しています。

この制度を利用すると、東日本大震災発生時(平成24年3月11日)に対象の被災地域に住んでいた人は、3回まで法律相談が無料で受けられます。当時の住所が対象地域(市町村単位)にあればよく、相談内容が震災に関連している必要もありません。

しかし、この制度も今年度(平成30年3月31日)で終了します。

法テラスと契約していない事務所なんかだと使えませんが、法テラスに行けば契約している事務所を紹介してくれると思います。

弁護士に相談するほどではないかな?というような問題がある方は、年度内に利用しておくと良いと思います。

「何が悪いのか」を理解させる難しさ

自白事件では、まず被告人から反省を引き出す必要があります。そして、テンプレ的には、反省するためには、自分のしたことの何が悪いのかを理解していなければなりません。「何について謝っているの?」ってことです。

しかし、これが意外と難しい。

たとえば、窃盗や傷害などの分かりやすい「被害」がある犯罪は、その被害者に迷惑をかけた、と言えるので簡単です。ところが、同じ個人を被害者とする犯罪でも、住居侵入のように具体的な金額や傷で被害が可視化されない犯罪だと、うまく答えられなくなってきます。

更に、薬物使用や飲酒運転のように直接の被害者がいない犯罪だと、「法律で禁止されているから」以上の答えが返ってこない人が多くなります。「なぜ法律で禁止されていると思うか?」と問い直しても、ピンときてもらえません。

よくある事件の中で最も難しいのは、不法残留外国人の在留カード偽造事件です。ただでさえ、外国人在留制度の在り方だの信用性といった分かりにくいものへの罪だというのに、通訳を介するので、掘り下げて考えてもらうことすらなかなか難しくなります。なので、そういう事件では敢えて深く聞かず、「悪かったと思う」くらいのところで止めてしまいます。それ以上聞こうとすると泥沼にはまるだけなので。

罪名ごとの保護法益というものを勉強している法曹関係者と違い、一般の人は「それをやることの何が悪いのか」をよく理解していないことが多いようです。そして、それを理解してもらうことは、意外なほどに難しいのです。