日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問13~16)

13

不動産の仮差押,不動産の処分禁止の仮処分は,登記による。登記さえしておけば,その後に出てきた第三者の権利に優先することができる。
→1,3は正しい
※ただし,不動産の仮差押は「強制管理」というものもある。

動産の仮差押,動産・不動産の占有移転禁止の仮処分は,執行官が預かる方法による。動産には登記制度がなく,占有の移転という事実行為は登記では防げないから。
→2は正しい

債権の仮差押は,第三債務者から債務者への弁済を禁止することによる。したがって,仮差押決定正本は第三債務者に送達される必要がある。
→4は誤り

14

民事保全法4条1項

  1. 方法
    1. 供託
    2. 銀行等との支払保証委託契約(民事保全規則2条)
  2. 場所
    1. 立担保命令をした裁判所
    2. 執行裁判所がある地の供託所
      ※②にすぐ供託するのが困難な場合は,裁判所の許可を得て,債権者の住所地等,裁判所が相当と認める地の供託所も可(民事保全法14条2項)。
  3. 供託物
    1. 金銭
    2. 立担保命令をした裁判所が相当と認める有価証券
  1. 誤)上記のとおり。知らなくても,債務者への手続保障を考えれば,債権者の都合で決めて良いわけないと推測できる。
  2. 正)上記のとおり。
  3. 正)第三者が供託できるのは,①弁済供託における利害関係人(民法474条),②裁判上の保証供託で裁判所が許可した場合(昭和35年決議)の2つだけ。
  4. 正)上記のとおり。

15

担保取消が認められるのは3パターン(民保4条2項で民訴法準用)。

  1. 担保提供者が担保事由の消滅を証明した場合(民訴79条1項)
  2. 担保提供者が担保権利者の同意を証明した場合(同条2項)
  3. 権利行使催告により担保権利者の同意が擬制される場合(同条3項)

権利行使催告:本案敗訴確定,執行取消などの場合に,担保権の行使を催告すること。催告しても相手が何もしないと,担保取消について同意があったものとみなされる。通常は担保取消決定申立も同時に行う。

  1. 正)②の場合。なお,民事の手続においては,相手の同意があれば大抵のことは許される。
  2. 正)①の場合に該当するかの問題,担保事由の消滅とは,担保権利者の損害賠償請求権の不存在が確定することをいう。勝訴判決があっても,それが確定しない限りは担保事由が消滅したとは言えない。
  3. 誤)執行取消だけでは,①~③のどれにも該当しない。
  4. 正)③の場合。8割勝訴ということは2割敗訴。敗訴が確定しているので,③の要件を充たす。債務者に損害が生じる余地がほぼないと言える場合には①もあり得る。

16

  • 保全異議:保全命令に対する不服申立て(民保26条)
  • 保全取消:保全命令自体は認められる前提で,特別な場合にする取消(民保37条)
    • 取消事由:①本案訴訟不提起(民保37条),②事情変更(民保38条),③特別事情(民保39条)
  • 保全の執行停止:取消事情が明らか又は補填できない損害のおそれがある場合に,暫定的に執行を止め,既にした執行処分を取り消すこと(民保27条)
  1. 正)保全異議や保全取消の申立てだけでは執行は止まらない。だから執行停止の制度がある。
  2. 正)仮差押命令では,必ず執行の停止・取消に必要な「解放金」の額を定める(民保22条1項)。
  3. 誤)取消事由①のために,本案の訴え提起を求める起訴命令の申立てができる。それでも訴訟提起がなければ,保全の取消しを求めることができる。訴訟提起しても,それを証する書面の提出(民保37条3項)がないか,その後に訴えの取下げ・却下がなされた場合(同条4項)には保全の取消し申立てが可能。
  4. 正)取消事由②の場合。