日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問29~32)

29

  1. 誤)一部事項を除いて,変更登記は2週間以内にしなければならない(会社法915条1項)。罰則(過料,会社法976条1号)あり。善意の第三者に対抗できない可能性がある点は正しい。
  2. 正)12年以上(株式会社の場合)登記に動きがないと,官報公告後2か月で解散したものとみなされる(会社法472条1項)。この場合の解散登記は,登記官が職権でしなければならない(商登72条)。
  3. 正)解散登記後,清算結了登記をした時点で閉鎖される(商登規80条2項,1項5号)。
  4. 正)むしろ,日本で継続取引をするためには,日本での代表者を定めて登記しなければならない(会社法817条,933条~)。

30

  • 供託時の必要書類(供規14条)
    • ①供託用紙
    • ②資格証明書(原則提示,未登記法人,非法人は添付)
    • ③代理権限証書(提示)
    • ④封筒・切手
    • ⑤供託物
  • 払渡請求時の必要書類
    • ①払渡請求書
    • ②印鑑証明書(添付,供規26条1項)
    • ③資格証明書(原則提示)
    • ④代理権限証書(添付,実印)
    • ⑤払渡しを受ける権利の証書(添付,供規24条1項1号,25条1項)
    • ⑥供託書正本/供託通知書(原則添付,供規24条1項,25条1項)

登記で確認できない法人・団体等は「添付」になる。

委任状で扱いが違うのは,払渡しとなると厳格さが求められるから。預かるだけなら,最悪間違いがあっても返せばいいが,間違いで払い渡したら取り返しがつかない。

31

  1. 正)家手256条1項。「手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるとき」は例外的に通知のみ行う。
  2. 誤)家事審判に対する不服申立ては,即時抗告による(家手85条1項,2週間以内)。控訴は一審判決に対する不服申立て。決定・命令・家事審判に対しては抗告。高裁に移る点は正しい。
  3. 正)家事審判事件には別表第1と別表第2がある(家手39条)。別表第1は,紛争というより公益事項で裁判所の関与が不可欠な事件。別表第2は紛争性が高く,当事者同士の話し合いが可能な事件。別表第1事件に調停はない(話し合いの余地がないから)。
  4. 正)

家事調停の種類

①別表2調停

別表第2事件。話し合いによる解決が望ましいが,未解決放置は望ましくない事件。そのため,調停不成立により審判に自動移行する(家手272条4項)。

具体的には,後見関係や財産管理,親権停止等。

②特殊調停

本来人事訴訟で解決すべき事件のうち,離婚・離縁を除いた事件。話し合いによる解決が望ましいため,調停前置主義がとられる(家手257条1項,244条)。調停不成立の場合は訴訟提起をする必要があり,合意成立時は合意に相当する審判がなされる(家手277条1項)。

具体的には,嫡出否認,認知,親子関係不存在等(人訴2条)。

③一般調停

上記以外の事件。基本的には訴訟事項だが,単なる感情的な話し合いも可。

具体的には,離婚,夫婦関係の円満調整等。

32

  • 別表第1事件の審判:800円(民訴費用3条1項,別表第1の15号)
  • 別表第2事件の審判・調停全般:1200円(同項,別表第1の15号の2)
  • 審判に移行した場合:調停申立時の納付額分を収めたものとみなす(同法5条1項)

離婚調停の場合,親権,面会交流,養育費,財産分与,慰謝料,年金分割の6項目は付随申立となり,手数料不要。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問25~28)

25

  1. 正)戸籍は夫婦+子の2代まで。娘とその子の戸籍は別に作る必要がある。なお,旧戸籍は戸主+親族で何世代も含まれていた。
  2. 正)戸籍法の改正等で戸籍の形式が変更になる場合,それまでの戸籍を新しい形式に移し,古いものは閉鎖する。この古い形式の戸籍を改製原戸籍という。主に,旧戸籍法から現戸籍法に改正された時と,コンピュータ化された時の2つがある。なお,原戸籍は「げんこせき」だが,現戸籍と間違わないよう,「はらこせき」と読む。
  3. 正)夫婦の氏は,婚姻の際に「夫又は妻の氏を称する」(民750条)のでどちらでも良いが,戸籍は「筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する」(同法9条)。
  4. 誤)婚姻の際に他方の戸籍に入った側が,元の戸籍に戻るか新たな戸籍を作る(民767条1項)。

26

  1. 正)単位はどれも㎡だが,宅地・鉱泉地・10㎡以下の土地は小数点2位まで,それ以外は小数点以下切捨て(不登34条,不登規100条)。
  2. 誤)建物の場合は区別がない。
  3. 誤)表題部は,一番上の大枠。所有者の記載がある。実物を見ておくと良い。
  4. 誤)建物の番地は,土地の地番に合わせて付けられるが,建築後に敷地が分筆・合筆されて地番が変更されると,建物の番地とずれることがある。

27

  1. 正)「何人も」交付を請求できる(不登119条1項)。権利関係を公示して取引の安全・円滑を図る制度だから。
  2. 正)地図等以外は「利害関係を有する部分」のみ閲覧可(不登121条2項)。
  3. 正)「何人も」交付を請求できる(不登120条1項)。
  4. 誤)コンピュータ化による閉鎖登記簿は,言わなくても分かっているので閉鎖年月日不要。合筆・滅失による場合は,こちらで特定しないと分からないので必要。【根拠確認未了】

28

  1. 正)同一所在地・同一商号は不可(商登27条)。会社法改正で本店所在地以外なら同一商号の登記可になった。
  2. 正)「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の施行日から当然に株式会社(特例有限会社)となる(整備法2条1項)。商号は定款変更&登記しない限り「有限会社」を用いなければならず,通常の「株式会社」などは使用できない(同条2項)。
  3. 正)会社は,設立登記によって成立する(会社法49条)。よって,登記日=設立日。
  4. 誤)履歴事項証明書は,請求日の3年前の1月1日までしか遡らない(商登規30条1項2号)。それより前の事項は閉鎖登記に移され(商登規44条1項),閉鎖事項証明書を取得しないといけない。
  • 登記事項証明書の種類(商登規30条1項各号)

事務職員能力認定試験 第11回解説(問21~24)

21

  • 配当を受ける債権者
    • ①差押債権者(民執89条1項1号)
    • ②配当要求・交付要求をした債権者(同項2号)
    • ③差押えの登記前に登記をした仮差押債権者(同項3号)
    • ④差押えの登記前に登記をした担保権者(同項4号)
  • 配当要求できる債権者(上記②)
    • ア)執行力のある債務名義の正本を有する債権者
    • イ)差押えの登記後に登記をした仮差押債権者
    • ウ)一般の先取特権を有することを証明した債権者
  1. 正)②ウ
  2. 正)②ア
  3. 誤)③→差押えの登記前なら自動的に配当対象。
  4. 正)【根拠確認未了】

22

  1. 誤)原則1か月の引渡期間を定めて明渡しの催告をするまでは正しい(民執168条の2第1項,2項)。債務者不在でも,玄関などに催告書を貼られて催告が実行される。留守にしてれば回避できるなら強制執行の意味がない。
  2. 誤)現金も,標準世帯の2か月分の生活費(現在66万円)は差押禁止財産(民執131条3号)。
  3. 正)「債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り」執行できる(民執168条3項)。明渡しの執行は,債権者に占有を取得させる手続きであるため。
  4. 誤)土地と建物は別個の不動産であるため,土地の明渡しと建物の収去両方(建物収去土地明渡)の債務名義が必要。執行方法も,代替執行による。具体的には,裁判所の授権決定を得て,債権者が自分で建物を収去する。

23

創設的届出
届出をして初めて身分関係が形成される
報告的届出
法的な身分関係は形成されており,戸籍の反映などのためにする

どこで効力が発生しているかの問題

  1. 婚姻は届出により効力を生じる(民739条1項)。
  2. 協議離婚は,婚姻の規定を準用(民764条,民739条1項)。
  3. 認知は届出により効力を生じる(民781条1項)。
  4. 裁判上の離婚は,判決の確定により離婚が成立する。なお,調停離婚は調停成立時。

24

職務上請求は,職務遂行に必要な場合にのみすることができ,次の事項を記載する(戸籍法10条の2第3項)。

  • ①自己(依頼者)の権利行使・義務履行に必要な場合
    →権利義務の発生原因・内容・戸籍を確認する必要性(同条1項1号)
  • ②国・地方公共団体への提出に必要な場合
    →提出先・提出の必要性(同条1項2号)
  • ③その他戸籍を利用する正当な理由がある場合
    →戸籍利用の目的・方法・必要性(同条1項3号)
  1. 〇)①の場合。法定代理人である親権者探知のためには戸籍が必要。
  2. ×)戸籍を調べること自体が目的となる場合は使えない。利用の方法も不当。
  3. 〇)②の場合。判決文の記載と氏名が違うので,執行文の付与のための証拠資料として裁判所に提出する。
  4. 〇)③の場合。適切な相続処理を行うため,戸籍から相続人の範囲を確認することが必要。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問17~20)

17

強制執行の種類
1は図の「非金銭執行>意思表示の擬制」に該当する。

18

  • 執行文の種類(便宜上の分け方)
    • ①単純執行文:単純な給付を求める内容で,証明が必要な条件・期限がない場合
    • ②条件成就執行文:一定の条件・期限の到来が必要な場合
    • ③承継執行文:債務名義(判決等)に記載のない相手に執行する場合
    • ④意思表示擬制のための執行文:登記請求で,例外的に債務者の意思表示を必要とする場合
  1. ①の一種。設問のような条項(過怠約款)は,遅滞を停止条件として期限の利益を喪失させる(遅滞がない間は待ってやる)ものであり,債務者側に義務履行の立証責任がある。よって債権者は証明不要。
  2. 甲の死亡を条件とした②の一種。甲の死亡を証明する書類が必要。
  3. 原告の支払を条件とした②の一種。支払完了を証明する書類が必要。
  4. 相続人は債務名義の対象ではない。③の一種。被告の死亡と相続人との親子関係を証明する書類が必要。

19

  1. 正)金銭執行の場合,確定金額又は金額を確定できる計算式を特定しなければならない。債権執行の場合,具体的な執行完了がいつになるか分からないので,遅延損害金も申立日までで確定しなければならない。
  2. 正)議論のあるところだが,実務上は取扱支店を特定するのが通常。
  3. 正)民執155条1項
  4. 誤)転付命令は金銭債権に対してしかできず,差し押さえれば何でもできるわけではない。なお転付命令とは,債権そのものの帰属を移転すること。転付債権の券面額の範囲で弁済されたことになる(民執160条)。

20

  1. 誤)複数債権者から差押えを受けた場合,第三債務者は一人に弁済することはできず,供託をしなければ債務を免れることができない(義務供託,民執156条2項)。
  2. 正)供託した場合は,「その事情を執行裁判所に届け出なければならない」(同条3項)。
  3. 誤)支払義務はあるので,支払わないと債務不履行となる。
  4. 誤)支払っても債務を免れない。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問13~16)

13

不動産の仮差押,不動産の処分禁止の仮処分は,登記による。登記さえしておけば,その後に出てきた第三者の権利に優先することができる。
→1,3は正しい
※ただし,不動産の仮差押は「強制管理」というものもある。

動産の仮差押,動産・不動産の占有移転禁止の仮処分は,執行官が預かる方法による。動産には登記制度がなく,占有の移転という事実行為は登記では防げないから。
→2は正しい

債権の仮差押は,第三債務者から債務者への弁済を禁止することによる。したがって,仮差押決定正本は第三債務者に送達される必要がある。
→4は誤り

14

民事保全法4条1項

  1. 方法
    1. 供託
    2. 銀行等との支払保証委託契約(民事保全規則2条)
  2. 場所
    1. 立担保命令をした裁判所
    2. 執行裁判所がある地の供託所
      ※②にすぐ供託するのが困難な場合は,裁判所の許可を得て,債権者の住所地等,裁判所が相当と認める地の供託所も可(民事保全法14条2項)。
  3. 供託物
    1. 金銭
    2. 立担保命令をした裁判所が相当と認める有価証券
  1. 誤)上記のとおり。知らなくても,債務者への手続保障を考えれば,債権者の都合で決めて良いわけないと推測できる。
  2. 正)上記のとおり。
  3. 正)第三者が供託できるのは,①弁済供託における利害関係人(民法474条),②裁判上の保証供託で裁判所が許可した場合(昭和35年決議)の2つだけ。
  4. 正)上記のとおり。

15

担保取消が認められるのは3パターン(民保4条2項で民訴法準用)。

  1. 担保提供者が担保事由の消滅を証明した場合(民訴79条1項)
  2. 担保提供者が担保権利者の同意を証明した場合(同条2項)
  3. 権利行使催告により担保権利者の同意が擬制される場合(同条3項)

権利行使催告:本案敗訴確定,執行取消などの場合に,担保権の行使を催告すること。催告しても相手が何もしないと,担保取消について同意があったものとみなされる。通常は担保取消決定申立も同時に行う。

  1. 正)②の場合。なお,民事の手続においては,相手の同意があれば大抵のことは許される。
  2. 正)①の場合に該当するかの問題,担保事由の消滅とは,担保権利者の損害賠償請求権の不存在が確定することをいう。勝訴判決があっても,それが確定しない限りは担保事由が消滅したとは言えない。
  3. 誤)執行取消だけでは,①~③のどれにも該当しない。
  4. 正)③の場合。8割勝訴ということは2割敗訴。敗訴が確定しているので,③の要件を充たす。債務者に損害が生じる余地がほぼないと言える場合には①もあり得る。

16

  • 保全異議:保全命令に対する不服申立て(民保26条)
  • 保全取消:保全命令自体は認められる前提で,特別な場合にする取消(民保37条)
    • 取消事由:①本案訴訟不提起(民保37条),②事情変更(民保38条),③特別事情(民保39条)
  • 保全の執行停止:取消事情が明らか又は補填できない損害のおそれがある場合に,暫定的に執行を止め,既にした執行処分を取り消すこと(民保27条)
  1. 正)保全異議や保全取消の申立てだけでは執行は止まらない。だから執行停止の制度がある。
  2. 正)仮差押命令では,必ず執行の停止・取消に必要な「解放金」の額を定める(民保22条1項)。
  3. 誤)取消事由①のために,本案の訴え提起を求める起訴命令の申立てができる。それでも訴訟提起がなければ,保全の取消しを求めることができる。訴訟提起しても,それを証する書面の提出(民保37条3項)がないか,その後に訴えの取下げ・却下がなされた場合(同条4項)には保全の取消し申立てが可能。
  4. 正)取消事由②の場合。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問9~12)

問9

  1. 正)「支払督促の申立ては,…簡易裁判所の書記官に対してする」(民訴383条1項)。そして,「裁判所書記官は,債権者の申立てにより,支払督促を発することができる」(民訴382条)。
  2. 正)「適法な督促異議の申立てがあったときは,…訴えの提起があったものとみなす」(民訴395条)。
  3. 正)民訴391条1項。仮執行宣言の申立てがなされると,宣言前に督促異議がなされない限り,裁判所は仮執行宣言をしなければならない。
  4. 誤)仮執行宣言は,送達時に効力を生じる(民訴391条5項,388条2項)。そして,仮執行宣言の効力は,その宣言又は本案判決を変更する判決によって失われる(391条5項,260条1項)。よって,通常訴訟に移行しただけでは効力は失われない(控訴の場合と同じ)。

問10

公示催告とは,官報に掲載して権利を争う者に申し出るよう促す手続。最低2か月,東京では4か月半の期間を取る。

手形・小切手等の盗取・紛失・滅失時は,公示催告の申立てをして,申し出がなければ除権決定(有価証券を無効にする決定)を得ることができる(非訟事件手続法114条1項)。

  1. 警察への紛失届は,公示催告の申立てのために必要だが,それだけでは無効化できない。
  2. 上記のとおり。
  3. 手形・小切手訴訟は,権利行使するための手続。普通の訴訟より簡易・迅速。
  4. 意思表示の公示送達とは,相手方が所在不明の場合に,解除や時効援用の意思表示を行うための手続。意思表示だけでは有価証券は無効にできない。

問11

民事保全は,訴訟や執行の手続をしている間に処分されるおそれがある場合に,処分できないように仮差押等の命令を出してもらう手続。

相手方に察知されないように,簡易迅速性・密行性が求められる。

  1. 〇)申立てには,保全すべき権利と保全の必要性を「疎明」しなければならない(民事保全法12条6項)。「疎明」とは,「一応根拠がある」程度の認識を持たせること。「証明」と違い,確信までさせる必要はない。口頭弁論や審尋をすることもあるが,基本的にはしない。
  2. 〇)「民事保全の手続に関する裁判は,口頭弁論を経ないですることができる」(同法3条)。つまり,口頭弁論を経てすることもできる。また,仮の地位を定める仮処分の場合は,原則として債務者審尋が必要となる(同法23条4項,2項)。
  3. ×)本案訴訟を前提とする仮の手続であることは正しい。しかし,「本案の訴えを提起することができるとき」(同法12条1項)であれば良く,本案訴訟提起後でも問題ない。むしろ,本案訴訟提起後の方が処分の危険は大きいので,保全の必要性が高い。
  4. 〇)同法14条1項。担保を立てさせるか,相当期間内に立てることを条件とするか,又は立てさせないで保全命令を発することができる。ほとんどの場合は担保を立てさせる。不当解雇や交通事故事案など,生活のために必要な場合は担保なしとなることがある。

問12

保全命令の申立ては,その趣旨(①保全の趣旨)並びに保全すべき権利又は権利関係(②被保全権利)及び③保全の必要性を明らかにして」しなければならない(民事保全法13条1項)。

申立書には,申立ての趣旨として①,申立ての理由として②③を記載する(民事保全規則13条1項2号)。


保全の趣旨は,裁判所に発してほしい命令の内容。保全の種類と保全の対象はこれに含まれる(何をどうするか)。

請求の趣旨は通常の訴訟で訴状に記載するもの。

事務職員能力認定試験 第11回解説(問5~8)

問5

  1. 〇)送達場所は,原則として当事者の「住所,居所,営業所又は事業所」(民訴法103条1項)。法人の場合は,代表者が送達を受けるべき者になり(民訴法37条,102条1項),営業所と代表者の住居所のいずれも送達場所となる。
  2. 〇)住居所等が不明か,送達に支障がある場合は,本人の就業場所が送達場所となる(民訴法103条2項前段)。
  3. 〇)転居先が判明しているので,住所不明に当たらない。改めて転居先に送達をしなければならない。
  4. ×)書留郵便に付する送達(付郵便送達)の要件

①不在による不送達(転居先不明やあて所尋ねあたらずは含まない∵そこに住んでないなら郵便送っても意味ない)

②就業場所が不存在,不明,又は就業場所への送達が不能

→設問では①②とも該当しない。

問6

  1. 正)文書の標目,作成者及び立証趣旨を記載した証拠説明書を提出しなければならない(民訴規則137条1項)。原告が甲号証,被告が乙号証とすることになっている。ただ甲乙の区別については法律上の定めが見当たらず,慣例と思われる(当職調べ)。当事者が多い訴訟では,甲乙丙丁…としたり,甲A,甲Bとしたりもする。
  2. 正)証拠一般について,「証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示してしなければなら」ず(民訴規則99条1項),証拠申出書を提出して行う。人証では,尋問事項書を提出しなければならない(同107条1項)。
  3. 誤)「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは,申立てにより,…証拠調べをすることができる」(民訴234条)。
  4. 正)準備書面は,「直送をしなければならない」(民訴規則83条1項)。書証・証拠説明書は,「直送することができる」(同137条2項)。

なお,準備書面の直送を受けた側は,受領書を直送しなければならない(同83条2項)。

問7

  1. 誤)死亡を含め,当事者が訴訟の資格を失ったときは,訴訟が中断し,法定の者が引き継がなければならない(民訴124条1項)。ただし,訴訟代理人がいる間は中断しない(同条2項)。
  2. 正)民訴143条1項。ただし,訴訟を遅滞させる場合は不可(同項ただし書き)。「請求の基礎」が同じかどうかは,①社会的に見て同じ事実に基づいた請求か,②それまでの訴訟資料を流用できるかなどから判断する。
  3. 正)民訴146条1項。ただし,訴訟を遅滞させる場合は不可(同項ただし書き)。反訴とは,被告の方から原告に訴えを起こすこと。元々の訴訟を本訴という。関連する請求を一緒に審理してもらえるが,基本的には別個の訴えなので,反訴であっても各種手続は普通の訴訟提起と同じ(民訴146条4項)。
  4. 正)民訴152条1項。口頭弁論の併合とは,主張立証の手続を一緒にすること。逆に分離することもある。

問8

  1. 正)仮執行宣言は,申立て又は職権(裁判官の裁量判断)で行う(民訴259条1項)。訴状に記載しなくても裁判官が必要と思えば仮執行宣言を付する。でも普通は原告が求めもしないのに付するようなことはしない。優しい裁判官なら要らないんですかって聞いてくれる。本人訴訟で「意味わからんやろなぁ」と思ったら職権で付するのかも?
  2. 誤)仮執行宣言は,「宣言することができる」のであり,宣言しないという裁判もあり得る。金銭請求でも同じ(手形・小切手の場合は別)。
  3. 正)「担保を立てて,又は立てないで」仮執行できることを宣言できる(民訴259条1項)。手形・小切手の場合は,原則担保は立てさせない。
  4. 正)仮執行宣言は,「その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより」効力を失う(民訴259条6項)。つまり控訴しても判決までは執行可能。

なお,手形・小切手による金銭請求の場合は,「職権で,担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない」(民訴259条2項)ので,必ず仮執行宣言が付く。