日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

司法試験の勉強:憲法の構成

対立軸の特定

憲法の論述は、簡単に言えば合憲論と違憲論を並べてから自分の意見を書くという形式です*1。この時の思考法として大切なのが、「対立軸を意識する」ということです。

対立軸の特定とは、単に問題となる権利を特定することではなく、具体的にどう争うかを特定することです。「論点」というより「争点」の方が意味的に近いと思います。

たとえば、ある権利を侵害する法律があるとすれば、その法律自体の違憲性を争うのか、法律自体は合憲だが解釈適用上違憲だと争うのか、その両方を争うのか。そもそも、その法律は権利を侵害しているのか、単なる制度設計の問題であって権利侵害は存在しないのか。制度設計の問題だとすれば、立法裁量の範囲内なのか範囲外なのか。

対立軸を意識しないと、論理が一貫しなくなるほか、論述にメリハリがなくなり、重視すべき事情が的確に拾えなくなるので、問題を読み終えたら、まずはどこに対立軸があるのかをしっかり検討する必要があります。

配点を明記したり、設問自体で法令違憲を前提にしたりと、出題形式を少しずつ変えているのは、いずれも対立軸の特定ができていない受験生へのメッセージなのではないかと思っています。

参考判例の想起

対立軸の特定と絡めて、参考判例を想起していくことも重要になります。

憲法の事例問題は、作問の背景に、参考としている判例が存在する場合が多いと言えます。それは取りも直さず、解答にあたって参考とすべき判例でもあります。

もちろん、判例をそのまま引用してどうにかなる問題はほとんどないわけですが、対立軸や、違憲審査の構造など、参考判例を意識するだけで一気に分かりやすくなります。答案を読む人間にもそれは伝わるので、適切な判例を想起できれば、確実に印象が良くなると考えられます。

毎日の勉強方法

対立軸の特定と参考判例の想起は、毎日の練習が不可欠です。

憲法の問題を読んで5分で対立軸と参考判例を考えてみる、という練習を、毎日1回行うことをおすすめします。もちろん、判例百選を潰していくのは前提となります。

憲法は、最初の構成が命です。一度方針を決めたら、書き直しはできません。だからこそ、最初に的確に方針を決定することは、非常に大切なことなのです。

*1:平成30年の問題は、これまでの出題形式と表現が変わっていますが、基本構造は何も変わっていません。