司法試験の勉強:憲法
憲法は、最高裁判決があればその規範を示すことが絶対不可欠です。当てはめも規範あってこそ。
参考として、受験生時代に私が暗記するためにまとめた規範集を晒しておきます。カギ括弧部分は判例抜き出しです。
- 制度上の区別(差別)
- 在監関係と表現の自由(よど号ハイジャック記事抹消事件)
- 政教分離(津地鎮祭事件)
- わいせつ概念
- プライバシー
- 表現の事前抑制
- 検閲
- 集会の制限(泉佐野市民会館事件)
- 明確性
- 行政手続と35条(成田新法事件)
- 行政手続と38条(川崎民商事件)
- 立法行為の国賠法上の違法
- 統治行為論
- 議員免責特権
- 公務員の政治活動(堀越事件・世田谷事件)
- 内部自治
制度上の区別(差別)
「論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではない」ので、広範な立法裁量に委ねられる。よって、制度趣旨及び具体的な区別(侵害)が著しく不合理でない限り、合憲であると解する。
反論:制度適用の結果として生じる区別(侵害)が重大である場合には、侵害される具体的権利にも着目して慎重に審査すべきである。
在監関係と表現の自由(よど号ハイジャック記事抹消事件)
「具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、そのばあいにおいても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべき」である。
政教分離(津地鎮祭事件)
「行為の目的及び効果に鑑み、そのかかわり合いが社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」場合には政教分離に反し違憲と解する。
具体的には、「目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる」かを検討し、その判断にあたっては、主催者や方式の宗教色の他、行為の場所、目的、宗教的意識、一般人への影響等から客観的に判断する。
→愛媛玉串料事件:目的・効果・関わり合いの3要件化?
わいせつ概念
描写の程度、手法、文書全体に占める比重、文書に表現された思想との関連性、文書の構成・展開、芸術性・思想性による緩和の程度から総合的に判断する
プライバシー
- 私生活上の事実であり又はそのように受け取られるおそれがあること
- 一般人を基準にして公開を欲しないであろうこと
- 一般人に非公知であること
表現の事前抑制
「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容され」る。
「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき」は差止可。
検閲
「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」
集会の制限(泉佐野市民会館事件)
公民館の性質と表現の自由の重要性に鑑み、「人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険」に対し「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」場合に限り不許可が許される。
明確性
「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによってこれを決定すべきである」
行政手続と35条(成田新法事件)
行政手続は「行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべき」である。
行政手続と38条(川崎民商事件)
38条1項は「実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」場合には行政手続にも及ぶ。
立法行為の国賠法上の違法
「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項」上違法となる。
「国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の」違法とならない。
この要件は「極めて特殊で例外的な場合に限られるべきであることを強調しようとしたに過ぎない」
統治行為論
「高度の政治性を有する国家行為については」一次的には立法行政の判断に従い、終局的には国民の政治的批判に委ねるべきであるから、「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、司法審査権の範囲外」である。
議員免責特権
議員は絶対的免責。
発言は議員の広範な裁量に委ねられているから、国に国賠法上の責任が認められるのは、「議員がその職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、特別の事情がある」場合に限られる。
公務員の政治活動(堀越事件・世田谷事件)
政治的行為とは、「政治的中立性を損なう恐れが観念的なものにとどまらず現実的に起こり得るとして実質的に認められるものを指す」