日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

時効援用くらいは自分でできそうだが…

法律相談を受けていると、「これくらいは自分でやればいいのに」と思うことがあります。その最たる例は、消滅時効の援用です。

ある日突然債務返済の請求書が来た。確かに金を借りたことがあるが、もう相当昔の話で、少なくとも5年以上、取引もないし請求もされていない。どう対応したら良いか。

こんな相談は結構多いのですが、回答はこうなってきます。

時効が完成している可能性があります。取引明細を取得して確認し、時効援用の内容証明を送りましょう。1円でも返したりせず、返すつもりがあるような発言もしないように気を付けてください。

この回答で示した対応というのは、分解すると以下の3つの作業になります。

  1. 取引明細を取得する
  2. 消滅時効を援用する書面を書く
  3. それを内容証明郵便で送る

これを弁護士に依頼する方も当然たくさんいますが、実際には、こんなもの誰にでもできることです。

取引明細の取得は、請求書の連絡先に電話し、「請求の根拠を確認したいから根拠資料を送ってくれ」と言うだけで済みます。時効援用の書面は、さすがにいきなり書けと言われて書ける人はいないでしょうが、「消滅時効 例文」なんかでネット検索すれば、いくらでも文案の紹介サイトがヒットします。そして、内容証明郵便の利用方法は、ネットで調べるなり郵便局に行って教えてもらうなりすればいいだけです。

資料請求は電話一本。書面の検索と書き換えは30分。内容証明郵便の利用方法を調べるのに30分。合計1時間あれば、自分でできてしまうことです。

私が相談を受ける場合、「その気になれば全部自分でできますが、どうしますか」と聞いてしまいます。しかし、大抵の方は、全部まとめてお願いします、と言ってきます。確かに、やろうと思えば自分でできることですが、弁護士に頼んだ方が確実だろうし、面倒だから頼んでしまいたい、つまり、手間や質をお金で買いたい、ということなのだと思います。

こういう案件で、弁護士業がサービス業であるということを実感します。