日々起案

田舎で働く弁護士が、考えたことや気になったことを書いています。

司法試験の勉強:憲法1(論証集)

憲法は、最高裁判決があればその規範を示すことが絶対不可欠です。当てはめも規範あってこそ。

参考として、受験生時代に私が暗記するためにまとめた規範集を晒しておきます。カギ括弧部分は判例抜き出しです。

規範集

制度

「論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではない」ので、広範な立法裁量に委ねられる。よって、制度趣旨及び具体的な区別(侵害)が著しく不合理でない限り、合憲であると解する。

反論:制度適用の結果として生じる区別(侵害)が重大である場合には、侵害される具体的権利にも着目して慎重に審査すべきである。

在監関係と表現の自由よど号ハイジャック記事抹消事件)

「具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、そのばあいにおいても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべき」である。

政教分離(津地鎮祭事件)

「行為の目的及び効果に鑑み、そのかかわり合いが社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」場合には政教分離に反し違憲と解する。

具体的には、「目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる」かを検討し、その判断にあたっては、主催者や方式の宗教色の他、行為の場所、目的、宗教的意識、一般人への影響等から客観的に判断する。

→愛媛玉串料事件:目的・効果・関わり合いの3要件化?

わいせつ概念

描写の程度、手法、文書全体に占める比重、文書に表現された思想との関連性、文書の構成・展開、芸術性・思想性による緩和の程度から総合的に判断する

プライバシー

  1. 私生活上の事実であり又はそのように受け取られるおそれがあること
  2. 一般人を基準にして公開を欲しないであろうこと
  3. 一般人に非公知であること

表現の事前抑制

「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容され」る。

「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき」は差止可。

検閲

「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」

集会の制限(泉佐野市民会館事件)

公民館の性質と表現の自由の重要性に鑑み、「人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険」に対し「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」場合に限り不許可が許される。

明確性

「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによってこれを決定すべきである」

行政手続と35条(成田新法事件)

行政手続は「行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべき」である。

行政手続と38条(川崎民商事件)

38条1項は「実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」場合には行政手続にも及ぶ。

立法行為の国賠法上の違法

「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項」上違法となる。

国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の」違法とならない。

この要件は「極めて特殊で例外的な場合に限られるべきであることを強調しようとしたに過ぎない」

統治行為論

「高度の政治性を有する国家行為については」一次的には立法行政の判断に従い、終局的には国民の政治的批判に委ねるべきであるから、「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、司法審査権の範囲外」である。

衆議院解散については、一見明白に違憲無効かどうかすら判断しない(苫米地事件

議員免責特権

議員は絶対的免責。

発言は議員の広範な裁量に委ねられているから、国に国賠法上の責任が認められるのは、「議員がその職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、特別の事情がある」場合に限られる。

公務員の政治活動(堀越事件・世田谷事件)

政治的行為とは、「政治的中立性を損なう恐れが観念的なものにとどまらず現実的に起こり得るとして実質的に認められるものを指す」

内部自治

政党
  • 一般市民法秩序に関しない:審査対象外
  • 一般市民法秩序に関する場合でも、内部規範が公序良俗に反しない限り、その規範又は規範がない場合には条理に従って、適正手続に則ってなされたか否かで判断する。
宗教団体

一般市民法秩序に関する場合でも、内部規範又は確立された慣習がある場合にはこれに従い、規範がない場合には当該宗教団体に固有の特殊性をも考慮して条理に従い、適正手続に則ってなされたか否かで判断する。

司法試験の勉強:刑法1(論証集)

「暗記じゃない、事実と評価と当てはめだ!」とよく言われますが、筆記試験なんてものはどんな試験でも多かれ少なかれ暗記が前提です。

特に刑法は、やたらと論点が多く、圧縮して書いていかないと書きたいことが書き切れません。定義や基本論証は暗記して吐き出すのが効率的だし、評価と当てはめに配点が割かれているなら、逆にその前提部分では暗記を吐き出すだけでも良いはずです。

以下、受験生時代に私が自分なりにまとめた定義・論証集です。当てはめで使いやすいように、自分なりにアレンジしたり、時には普段と違う立場も使えるようにするのがポイントですね。

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弁護士用「やさしい日本語」マニュアルはないのか?

最近、「やさしい日本語」という技術・コンセプトが注目されているようです。

無理に英語などを使うのではなく、日本語の中で簡単な言葉・表現に置き換えることで、外国人に理解しやすくするというものです。外国語を覚えるよりも遥かに学習コストが安いうえ、日本にいる外国人、特に定住外国人は、英語圏の外の人間がかなり多いので、英語よりむしろ「やさしい日本語」の方が伝わりやすいのだそうです。

これは、主に防災と観光の分野で注目されているのですが、弁護士にも絶対必要な技術だと思います。

刑事事件の被疑者・被告人には、外国人もかなり多いのですが、その中には、「簡単な会話程度なら日本語が分かるが、英語は全く分からない」というパターンが相当あります。日弁連が各国語の権利告知書を用意してはいますが、当然それだけでは不十分です。もちろん通訳人を用意して接見に行けば良いのですが、言語によっては簡単には通訳人を用意できませんし、用意できても一定の時間がかかります。

簡単な言葉で言い換えるだけなら簡単、と思いがちですが、これが非常に難しい。日常会話程度ならまだしも、法律用語となると本当にどう言い換えれば良いのか、すぐには思いつきません。日本語なのに、「なんて言えばいいんだろう…」と頭を悩ませたことは多々あります。

もし、『接見で使える!弁護士の「やさしい日本語」』なんて書籍があったら、迷わず買います。

どこかの弁護士会で出版してくれないでしょうか?

最強の敵は依頼者

刑事でも民事でも言えることですが、案件が難しい、厄介であるということは、実はそこまで辛くありません。面倒で大変だとしても、結局はやれるだけのことをやるしかないし、とりあえずやりがいはあります。

しかし、依頼者が厄介な人だと、これはもう本当に苦痛です。依頼者対応だけで精神がどんどん削られ、にも関わらず事案の解決には全く繋がりません。手間と面倒の大きさに対して、やりがいは反比例します。

依頼者は、時に最強の敵となります。この厄介な敵をうまく「いなす」ことのできる弁護士は、とても優れた弁護士だと思います。

接見禁止はぜひとも解除

被疑者・被告人に接見禁止が付いていることはよくあります。薬物事犯や、共犯事件なんかだとかなりの確率で付いています。

この接見禁止は、ぜひとも早期に解除しておくべきです。もちろん被疑者・被告人のためというのもありますが、何より弁護人にとって非常に厄介だからです。

勾留が長引くと、日常生活に必要な処理だとか、差入れだとか、とにかく色々と「外」と連絡を取る必要が出てきます。接見禁止が付いていると、いちいち弁護人に接見要望が入り、細々とした雑用・伝言に使われます。仮にそういった頼みには応じないという態度を取ったとしても、接見要望自体は、無視すると本当に重要な要望だった場合に困るとので、応じざるを得ません。そうなると、刑事弁護そのものとは全く関係のないところで時間と手間がかかるので、かなりの負担になります。

被告人本人がやたらと家族に連絡を取りたがり、他方で家族の方は本人を半ば見捨てているケースもありますが、そういった案件は接見禁止解除がしづらいので、本当に大変です…。

抵当権者不明土地(休眠担保権の抹消登記)

登記の放置により、所有者不明の土地が増えていることが問題とされているようです。これと少し似た問題として、親から相続した土地に抵当権が設定されており、あまりに古い抵当権のために抵当権者が誰だか分からないという問題があります*1

所有者不明土地は、現在のところ対応策がないようですが、抵当権者不明土地は、既に対応するための法律が用意されています。不動産登記法70条3項第2文です。

根拠条文

登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消)
第七十条  登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法 (平成二十三年法律第五十一号)第九十九条 に規定する公示催告の申立てをすることができる。

3 第一項に規定する場合において、登記権利者先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

不動産登記法

上記下線部を簡単に言うと、以下の3要件を満たしたら、抵当権抹消していいですよ、ということです。この制度がないと、公示送達で裁判をしないといけないので、非常に面倒です。

  1. 所在不明:抵当権者がどこにいるか分からない
  2. 期間経過:弁済期から20年以上経過している
  3. 弁済供託:遅延損害金含めて全額供託する

以下、3つの要件について個別に説明します。

要件1:所在不明

まずは、不動産の登記に記載されている住所を確認します。弁護士であれば、更に住民票や戸籍から住所を辿ります。しかし、休眠担保権が問題になるような事案だと、そういった資料が存在しないか、あっても住所を辿れない状態の場合がほとんどです。

そこで、次の作業に入ります。

登記記載の住所から場所が特定できる場合

登記記載の住所から特定の住居を特定できるのであれば、そこに人が住んでいるかどうかを確認します。誰か住んでいるのであれば当然住人と連絡して調査します。

誰も住んでいないのであれば、適当な書面を配達証明郵便で送り、返送物を疎明資料とします。市町村長又は民生委員による、住所地にいないことの証明書等が手に入れば確実です。

登記記載の住所から場所が特定できない場合

古い住所表記だと、現在のどの地点を示しているのか分からない場合が多々あります。この場合は、もはや辿りようがないので、適当な書面を配達証明郵便で送り、返送物を疎明資料とする以外にありません。

この場合は、手紙を送るだけで良いのでかなり楽です。

要件2:期間経過

弁済期から20年経過という要件自体は、一見して充足が明らかな場合しか休眠担保権の問題にならないのですが、それでも疎明資料は必要になりますし、遅延損害金の計算のためにも特定が必要です。

担保権設定が昭和39年以前

昭和39年以前は、弁済期も登記事項だったので、弁済期は登記に書いてあります。

登記に記載がない場合、それは弁済期の定めがない契約です。その場合は、更に「債権の成立日」の記載の有無を確認し、記載があればその日、記載がなければ担保権の設定日を弁済期とみなすとされています。

担保権設定が昭和39年以後

弁済期が登記事項でなくなった後に設定された抵当権については、判断のしようがないので(契約書があれば別ですが)、その旨報告書にして、合理的な時期を弁済期とみなすしかありません。

要件3:弁済供託

この制度は、現在まで全く返済していない計算で債務総額を算出し、弁済供託する形式になっています。なので、元本+弁済期までの利息+弁済期から供託時までの遅延損害金の全額を供託する必要があります。ちなみに、供託先は、抵当権者の最終住所地の管轄法務局です。

と言っても、明治から昭和初期の抵当権なので、被担保債権は数十円とか数百円です。仮に被担保債権が1000円だったとすると、利息は100年で5000円です。合計6000円の供託で足ります(実際の事案ではもっと少ない)。

また、共同抵当に入っている不動産がある場合、供託の際には申請書類に全ての不動産を記載しておく必要があります。これを忘れると、記載し忘れた不動産については、改めて供託し直さねばならず、二重払いとなってしまいます。

なお、供託時には、供託理由を記載するだけで、何の根拠資料も必要ありません。だからこそ逆に、理由欄は間違いや不足の無いようにしっかり書かないと、無駄足・無駄金になってしまいます。

まとめ

まとめると、以下のような手順になります。

  1. 不動産の登記から抵当権者を確認
  2. 住所を調べたり手紙を送って所在不明の疎明資料を収集
  3. 債務総額を計算して供託
  4. 以下の疎明資料を持って抹消登記手続
    • 不動産の登記簿
    • 所在不明の資料(返送郵便物+配達証明書など)
    • 弁済期の資料(不動産の閉鎖登記簿など)
    • 供託の資料(供託書正本)

この制度を利用した抵当権の抹消は、代理人として交渉する必要が無いため、司法書士の方が多くこなしているようです。

所有者不明土地についても、いずれはこういった立法上の解決がなされるのかもしれません。

*1:ほぼ間違いなく本人は死んでいるので、正確には相続人がどこの誰か分からないという問題です。

交通事故被害者がやってはいけない対応

交通事故に遭ったとき、対応を間違えると適切な損害賠償を受けられない可能性が高まります。

以下、被害者がやってしまいがちな間違いを挙げていきます。

警察に物損事故で届け出る

加害者側に頼み込まれ、人損なのに物損で届け出てしまうパターン。物損だと自賠責は使えないので、後遺障害の認定もしてもらえません。

後から人損に切り替えたり、人損事故証明書入手不能理由書というものを作成して対応することは可能ですが、面倒が増えるうえ、「事故直後は身体に異常を感じなかった」と推認され、大した怪我ではないという方向の根拠にされるおそれもあります。

ムチウチは後になってから痛みが出てくることもあるので、安易に物損で届けるのはやめましょう。

病院に行かない

仕事が忙しい、接骨院に通っているなどの理由で、病院に行く回数が少なかったり不定期となっているパターン。

法的な意味での「治療行為」は、医師にしかできません。病院に行かないのは、治療をしていないのと同じです。必要な治療を行っていると判断されるためには、2週に1回は整形外科医の診断を受けるべきです。ちなみに、本当は週2回の通院が理想なのですが、実際にそれだけの頻度で通院できる人はまずいません。

ちなみに、接骨院に行くのも問題ありませんが、できれば医師から接骨院に通うことの指示や了解があるとベターです。

診察時に遠慮する

大げさになることを嫌って、しっかりした検査をしなかったり、自覚症状について余計な限定を付けて説明してしまうパターン。

交通事故で、痛みやしびれが生じているなら、何はともあれMRI検査を受けておくことが望ましいと言えます。ムチウチで神経症状が残っている場合、MRIでないと客観的な原因が見えてきません。ムチウチについて、MRI画像よりも確かな根拠資料はないと言っても過言ではないでしょう。

また、医師には、痛いなら痛いと端的に伝えましょう。「動けないほどじゃないんだけど…」とか「かなり痛みは取れてきたんだけど…」とか「雨の日は特に…」といった表現をすると、医師の方で、「動ける」「痛みは取れた」「雨の日以外は痛くない」などと、異なるニュアンスでカルテに書き込んでしまうおそれがあります。

加害者側保険会社の提示額そのままで免責証書にサイン(示談)する

何もしなくて良いという楽さから、保険会社に任せてしまうパターン。

保険会社の初期提示額は、当然ながら裁判で認められる金額より低い金額です。自分の保健に弁護士費用保険特約(弁特)が付いているなら、最後の金額交渉だけでも弁護士にやらせた方が、確実に金額が上がります。